これで良かったんだ!『グリーフケア』の基礎編

訪問看護師のまおつんです。

相談者
亡くなられた患者さんのご家族にはどのような対応が必要でしょうか?

 

自分の家族や大切な人が亡くなった時のことを考えたことは誰しも一度はあると思います。

看護師という職業柄、いろいろな人の人生の最期を共にする機会があります。

 

残された家族、恋人、友人、ペットなど、様々な人たちのお別れを見て思うことは、『自分は看護師として最善を尽くせたか』という後悔です。

今回は、看護師がこのような場面に行うべき「グリーフケア」について解説し、残されたご遺族の方にどのような言葉を掛けるべきかについても紹介します。

 

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グリーフケアとは

グリーフケアとは、「Grief(悲しみ)」「Care(ケア)」を合わせた言葉のことで、大切な人、時には物などを失った人が大きな悲しみを抱えている時に、心のケアをすることをいいます。

訪問看護師は、患者さんが亡くなる直前や突然の急逝の時に駆けつけて『エンゼルケア』を行いますが、残されたご遺族に対して行うのが『グリーフケア』です。

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ご遺族に対しては、繊細の注意を払って心のケアを行います。

ご遺族に気持ちの整理をつけてもらうために、看護師が寄り添いながら話を聞いたりするのが基本的な方法です。

 

悲しみにおける4つのプロセス

患者さんが亡くなったとき、一般的にご遺族は4つのプロセスを辿ることになります。

『ショック期』は、大切な人が亡くなったことで頭が真っ白な状態になる期間のことです。

この期間には起こった事実を受け止められずに、亡くなったことを認めたくないといった行動をする場合があります。

 

喪失期』は、故人が亡くなった事実を認識する期間です。

亡くなった原因や不当感にたいして怒りや誰かに対して敵意を表すこともあります。

また、故人がまだ生きているかのような行動をする場合もあります。

 

『閉じこもり期』は、感情が塞ぎこみ誰とも会いたくなくなる期間です。

この時のご遺族は「もっと○○をしてあげれば良かった」などの後悔にどっぷりと浸るようになります。

また、葬儀などが落ち着いた頃には孤独感が一気に押し寄せることになり、何もかもがどうでも良くなるような気持ちを抱きやすいです。

 

『癒し・再生期』は、故人が亡くなったことを受容し、現実と向き合い始める期間です。

ようやく自然に笑顔も増えるようになり、普通に人と話したりすることもできるようになります。

 

これらのプロセスには人によって期間がまちまちで、一概に○週間、○ヵ月といえません。

時には、それぞれのプロセスを行ったり来たりして通常よりも期間を要するケースもあります。

 

グリーフケアは誰でもできる

グリーフケアの専門の資格として、「グリーフケア・アドバイザー」や「グリーフ・カウンセラー」などがあります。

しかし、グリーフケアについて個人的な意見としては、資格や専門知識は必要ないと思っています。

当たり前ですが大事な家族が亡くなって悲しむのは当然のことです。

その悲しみにどうやって向き合っていくかを一緒に考えてあげることができれば、誰でもグリーフケアをすることができます。

まおつん
ちなみに「グリーフケア・アドバイザー」に興味がある方は、下記のリンクから詳細を確認できます。
『日本グリーフケア協会』

 

グリーフケアでおさえておくべきポイント

グリーフケアを行う場合において、必ずおさえておいて欲しいポイントについて紹介します。
【グリーフケアを行う時におさえておきたいポイント】
1、基本は寄り添うスタンスで大丈夫
2、すべて語ってもらい想いを吐き出してもらう
3、感情的になってもいい
4、必要に応じて専門家にも相談する
これらの項目について、ひとつずつ解説していきます。

 

基本は寄り添うスタンスで大丈夫

患者さんなど身近な人の死は、周りに大きなショックを与え、深い悲しみ、喪失感、時には怒りなどの感情を巻き起こします。
そんな中で看護師ができることは、とにかくご遺族に寄り添うことです。
何かをしてあげたり、手伝ってあげたりしたくなる気持ちは分かりますが、静かに寄り添う気持ちこそがグリーフケアの基本であるということを忘れないようにしてください。

 

すべて語ってもらい想いを吐き出してもらう

ご家族が亡くなってからは、ご遺族は様々な想いを巡らせています。
その想いをすべて語ってもらい、すべて吐き出させることが重要です。

 

誰かに話を聞いてもらうだけで心の整理ができたという経験は誰にでもあると思いますが、それをご遺族にしてあげる事がグリーフケアにおいて重要なステップです。
故人と行った旅行の想い出やエピソードなどをじっくりと聞いてあげましょう。

 

感情的になってもいい

大切な人が突然亡くなった後、ご遺族はとても感情的になりやすい状態です。
悲しみや怒りなど本人も意識せずとも感情が大きく動きますが、こういう時にはご遺族が感情的になってもいいと心構えておきましょう。

 

ご遺族が感情的になるのは当たり前の事です。
この感情を抑えさせずに、思いっきり表現できるような環境を作ってあげることが看護師の重要な役割です。

 

必要に応じて専門家にも相談する

患者さんが亡くなって悲しみの中にいるご遺族は、立ち直るのに時間が掛かる方もいます。
悲しみのプロセスの中を行ったり来たりするため、グリーフケアをする私たちとしては焦ることもあります。

 

もちろん、こういった場合において焦りは禁物ですが、うまくケアできる自信がない方はグリーフケアの専門家に相談することも検討しましょう。
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グリーフケアで伝えたい言葉

グリーフケアを行うことについては、「これだ!」という正解がないため、とっても難しいケアのひとつだといわれています。

そのため、いくらテキストなどで勉強したとしても、実践での経験がないとなかなか難しいかも知れません。

ここではより具体的にイメージを持ってもらうために、実際のグリーフケアでご遺族に伝えてほしい言葉をいくつか紹介します。

 

ここまで良く頑張りましたね

長期間にわたり病気だった患者さんが亡くなって、葬儀などもひと段落したあとは、ご遺族に対して「ここまで良く頑張りましたね」とこれまでの労をねぎらう言葉を掛けてください。

このご遺族は患者さんの介護をずっとしていたかも知れないし、大変な病気の末に大切な家族を亡くしているかも知れません。

これまでその方と人生を共に過ごして頑張ってきたことに対して敬意を表す言葉です。

 

○○さんが選んだならどれを選んでもそれが正解です

例えば、高齢のため体に負担の大きい手術をして少しでも長生きしてもらうか、手術はせずに薬などで痛みを和らげて安楽に最期まで過ごしてもらうかという場合には、ご家族は究極の選択を迫られます。
こういった場合、本人の意思を聞ければ良いですが、認知症などが併発しているととっても判断が難しくなります。

 

どちらを選択したとしても患者さんが亡くなった後、ご家族には強い後悔が残ります。
そんな時には、ご遺族に対して「○○さんが考えて決めたらなどれも正解ですよ」という言葉を掛けてあげてください。

 

どの選択肢であっても故人を想ってのことである事には変わりありません。
そのような難しい選択は誰にでもできることではありません。
ご遺族に「わたしは間違っていなかった」と思ってもらうように、こういった優しい言葉を掛けることもグリーフケアでは大切です。

 

最期までありがとうございました

訪問看護師がグリーフケアを行う場合は、担当していた患者さんが亡くなったあとご遺族に対して行う事が多いと思います。

そのため、生前から関わらせてもらったことに対してご遺族に感謝を伝えるようにします。

 

看護師にとっては大勢いる患者さんのひとりかも知れませんが、ご遺族からしたらこの世にたったひとりのご家族です。

その人の最期を看取る時に自分を選んでくれたことに感謝しましょう。

 

人の生死に関わる仕事だからこそ患者さんが亡くなった時に、自分がどう向き合えるのかが看護師として初心を取り戻す非常に良い機会にもなります。

まおつん
人の一生に関わる仕事だからこそ、ご遺族と気持ちを共有してグリーフケアを行いましょう。

 

グリーフケアでやってはいけないこと

ここでは、グリーフケアを行う時にやってはいけないことをいくつか取り上げて解説します。
【グリーフケアでやってはいけないこと】
1、無理に楽しい話題を話すこと
2、手を出しすぎてしまうこと
3、話を否定してしまうこと

 

無理に楽しい話題を話すこと

ショックや悲しみの渦中にいるご遺族に対して、無理に楽しい話題をすることは避けましょう。
グリーフケアの基本は『寄り添う』ことなので、悲しい時には思いっきり悲しんでもらうくらいの配慮が必要です。
ご遺族の感情の変化に合わせて、言葉を掛けたり話を聞くようにしましょう。

 

手を出しすぎてしまうこと

ご遺族はショックを受けているため何もしたくなくなる時があります。
でも、そういう時でも看護師が何でもかんでも手を出してしまわないようにしましょう。

 

特に遺品の整理などは、ご遺族が気持ちの整理をするために自分の手で行うことが重要です。
「患者さんがなかなか手を付けないから」と言って、看護師が手伝ってしまうとご遺族はあまり良い気がしません。

 

看護師としての立場をわきまえた行動を心がけることが大切です。

 

話を否定してしまうこと

ご遺族がされる想い出やエピソードには様々なものがあります。
時には生前に患者さんが言っていた事と、ご遺族の話が食い違うこともあります。
そのような場合でも、ご遺族の話は否定せず受け入れましょう。

 

話を否定して事実を伝えたところでご遺族の気持ちの整理がつくわけではありません。
むしろ逆効果になることもあり、後悔の気持ちを持たせてしまったり、取り返しがつかなくなるケースもあります。
まおつん
話を否定せず、とにかく「そうですね。」「分かりますよ。」と共感を示すことが重要です。

 

まとめ

今回はグリーフケアについて解説してきました。

はっきり言って、グリーフケアはそこそこ経験を積まない難しいとされるケアです。

また、人によって向き不向きもあります。

 

もし、自分では難しいと感じたら管理者に相談し、専門職に依頼することも検討しましょう。

ご遺族の心のケアは取り返しのつかなくなるケースもあるので、慎重に行う必要があります。

 

ただ、基本のスタンスは『寄り添うこと』なので、しっかりと勉強すれば誰にでもできるケアです。

また、グリーフケア専門の資格などもあるので、より詳しく知りたい方は書籍などを買って勉強してみると良いでしょう。

 

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