訪問看護師は日常の「なぜなぜ分析」で仕事の解像度を高める

訪問看護師のまおつんです。

相談者
最近、仕事がうまくいかずに、先輩から「なぜなぜ分析」をしてみたら?と言われました。
何かいいコツなどありますか?

今回は「なぜなぜ分析」について解説していきます。

訪問看護師をやっていると、患者さんのケアでのトラブルや、職場の人間関係など、様々な壁に当たります。

このような時にはなぜなぜ分析を行うことで、頭の整理が出来て真の原因と解決方法を見つけられるようになります。

この方法は一般企業などでは広く使われており、解決しなければならない本当の課題やその原因を分析するために役立っています。

なぜなぜ分析を日頃から活用して仕事をすることで、他の訪問看護師と少しでも差を付けられるようになるので、しっかり学んで現場で活かしましょう。

まおつん
なぜなぜ分析はコツさえ掴んでしまえば難しくありません。
誰にでも簡単にできる方法を分かりやすく解説していきますね。

 

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訪問看護師に「なぜなぜ分析」が必要なワケ

冒頭でも紹介したように、なぜなぜ分析を行う事で得られる効果は、真の課題と原因を突き止める事にあります。

例えば、患者さんが「アイスクリームが食べたい」と言った時には、「(室温が)暑いと感じているかな?」、または「お腹が空いているのかあ?」などと私たちは想像します。

「アイスクリームが食べたい」という言葉の裏には、そう考える理由を患者さんが持っているはずで、その理由を突き止めるのがなぜなぜ分析の本質です。

 

訪問看護師はバイタルサインを見て患者さんの状態を正しく判断するのが仕事ですが、この時になぜなぜ分析が非常に役に立つのです。

非常に有効な方法であるにもかかわらず、経験が浅い訪問看護師はこのなぜなぜ分析が苦手な方も多いのが現状です。

まおつん
起こった事実にたいして「なぜ?」と理由を探すのがポイントですよ。
なぜなぜ分析は「RCA(Root Cause Analysis)分析」と呼ばれることもあります。

「なぜなぜ分析」は「なぜ?」を5回繰り返すだけ

なぜなぜ分析を簡単な方法としては「なぜ?」を5回繰り返すだけです。

この方法を分かりやすく解説するために、簡単な例をひとつ紹介します。

例えば、英語の勉強が続かないという悩みを抱えている人がいるとします。

この人が勉強が続かない本当の課題と対策を見つけるために、なぜなぜ分析の会話の例を以下に紹介します。

A:「なぜ勉強が続かないのですか?」

B:「勉強のやる気が起きない」

A:「なぜやる気が起きないのですか?」

B:「机に向かうと別の事が気になって集中できない」

A:「なぜ(どんな)別の事が気になるのですか?」

B:「家の中が散らかっていて集中できない」

A:「なぜ部屋を片付けないのですか?」

B:「部屋を片付けるのが面倒だから」

A:「なぜ部屋を片付けるのが面倒なのですか?」

B:「必要なモノと不要なモノが整理できていないから」

ここまでで「なぜ?」を5回繰り返しました。

すると、「英語の勉強が続かない」という問題の真の原因は「部屋の片づけが面倒で整理が出ていない」ということのようです。

従ってこの人が英語の勉強を続けるために必要な解決方法は、まずは部屋を片付けるということですが、そもそも片付けるのが面倒ということなので、誰かに手伝ってもらって部屋を片付けるか、またはお金を掛けてでも廃品回収業者に依頼することが適切です。

このように、勉強が続かないという問題をなぜなぜ分析によってさらに深堀りをしていくと、意外な解決方法に繋がる場合があります。

もし、なぜなぜ分析をしないで問題の解決方法を考えようとすると、「勉強する参考書を変える」や「英語スクールに通う」などという誤った解決方法に行きついてしまいます。

「なぜ?」を5回繰り返すだけで、真の課題と解決方法の糸口が掴めました。

もちろん、人によって英語の勉強が続かないという問題に対して回答は千差万別に異なるので、なぜなぜ分析の結果も大きく異なります。

「なぜなぜ分析」の具体的なケーススタディ

なぜなぜ分析を行うためにもっと具体的な例をいくつか紹介します。

なぜなぜ分析はインシデントなどが発生した時に行われる事がありますが、今回紹介するのは比較的軽い失敗例などからなぜなぜ分析のケーススタディを見ていきます。

 

ケーススタディ1「同姓同名の別の患者さんへ間違えて請求書を送ってしまった」

同姓同名の別の患者さんに間違えて違う金額が書かれた請求書を送ってしまった場合です。

名字と氏名が全く同じという患者さんの例は非常に珍しいですが、普段の仕事では「○○さん」と名字だけで呼ぶことも多いので、このようなケースに遭遇する可能性は十分あります。

 

このケースでなぜなぜ分析をすると以下のようになります。

なぜ1:「なぜ同姓同名の患者さんへ別の請求書を送ってしまったのか?」

回答1:「まさか同姓同名の患者さんが存在するとは思わず、出来上がった請求書を宛名が印刷された封筒に入れて郵送した。」

なぜ2:「なぜ請求書の宛名と患者さんの住所が間違ってしまった?」

回答2:「請求書を郵送する時には、封筒の宛名と患者さんの名前だけを確認して封をしている。」

なぜ3:「なぜ封筒の宛名と名前だけを確認して封をしているのか?」

回答3:「この方法で間違えた事は今までで一度もなかったため。」

なぜ4:「同姓同名の患者さんが存在している事はなぜ分からなかったのか?」

回答4:「パソコンに登録してある患者さんのデータには名字だけで検索ができるシステムがあるが、同じシステムで作成する請求書には患者さんの住所は記載されていないため。」

なぜ5:「なぜ請求書には患者さんの住所が記載されていないのか?」

回答5:「システム上、そのような仕様になっており住所が記載するスペースが無いため」

 

このケースは、請求書に患者さんの住所が記載されておらず、封筒の宛名と名前が一致していたために間違えて封をして請求書を郵送してしまった例です。

真の原因は請求書に住所が記載されていないことなので、請求書を作るシステムを変更して住所を記載できるようにする事で対策ができます。

請求書の住所と封筒の宛先を確認してから郵送出来ればこのようなミスは無くなります。

 

ケーススタディ2「ケア中に患者さんを転倒させてしまった」

入浴などのケア中に患者さんを転倒させてしまった例です。

 

このケースでなぜなぜ分析をすると以下のようになります。

なぜ1:「なぜ患者さんが転倒してしまったのか?」

回答1:「浴槽が濡れていたのに気付かずに患者さんを浴槽に移動させた。」

なぜ2:「なぜ浴槽が濡れている事に気付かなかった?」

回答2:「脱衣所が暗くて分かりにくかったのと、私自身の不注意もあった。」

なぜ3:「なぜ脱衣所が暗かった?」

回答3:「外からの明かりが入りにくい構造になっているため。」

なぜ4:「なぜ外からの明かりが入りにくい構造になっている?」

回答4:「脱衣所に窓はあるが、棚と荷物で隠れてしまっているため。」

なぜ5:「なぜ棚に荷物が入っている?」

回答5:「ご家族や患者さんの清潔ケア用品などが置かれているため。利便性を考えるとこの荷物を片付けることは難しい。」

 

このケースで社浴槽や脱衣所が暗いため、浴槽の床が濡れている事に気付かずに患者さんが滑って転倒してしまったという例です。

棚を整理して日光を入れる事も可能ですが、患者さん自身のケア用品もあるため、この方法は現実的ではなく別の方法としては照明器具などの設置をして浴室内を明るくする方法が効果的といえそうです。

もちろん入浴ケアの前には浴槽が濡れて滑りやすくなっていないか確認する事も必要ですが、看護師の不注意によって起きてしまうミスを防ぐよりもそもそもそのような問題が起こらないようにする方法が必要です。

なぜなぜ分析ではヒューマンエラーに焦点を当てるのではなく、起こった事実に焦点を当てて考える事がポイントです。

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ケーススタディ3「患者さんについての申し送りを忘れていた」

このケースは患者さんの状態やケアの内容を別の看護師に申し送り忘れていた例です。

 

このケースでなぜなぜ分析をすると以下のようになります。

なぜ1:「なぜ申し送りを忘れてしまったのか?」

回答1:「次に訪問する患者さんのことを考えていて、報告書に記載するのを忘れてしまった。」

なぜ2:「なぜ次に訪問する患者さんの事を考えていた?」

回答2:「次の患者さんは薬を飲んでいないことが多いので、どのように患者さんに伝えようかアイデアを考えていた。」

なぜ3:「なぜ患者さんは薬を飲まないのか?」

回答3:「たんに忘れてしまうことが多いようす。」

なぜ4:「なぜ患者さんは忘れてしまうのか?」

回答4:「若干の認知症があることと、ご家族のサポートが足りていないことがあるため」

なぜ5:「なぜご家族のサポートが足りていない?」

回答5:「ご家族自身も服薬の重要性が理解していただいていないため」

 

この例では申し送りを忘れてしまう理由は、他の患者さんに気を取られ過ぎていたために起きた例です。

実際の訪問看護の現場では、患者さんによってケアの大変度や難しさが違うので、良くあることだと思います。

しかし、どんな患者さんであっても一人ひとりの患者さんは平等に扱う必要があるので、申し送りを忘れても良いということでは決してありません。

なぜなぜ分析を行って分かった有効な対策としては、服役管理の重要性をご家族に説明して患者さんにしっかり薬を服用してもらうことだといえます。

 

このようになぜなぜ分析では思いもよらない結果になる事が多く、また、有効な対策もひとつではないことも多いです。

「なぜそうなったのか?」「何が原因なのか?」と日頃から何度も考える訓練をしておく事で、なぜなぜ分析がもっと効率的に出来るようになります。

まおつん
なぜなぜ分析が活用できると、カンファレンスでも理論的な説明ができるようになりますよ。

 

「なぜなぜ分析」でやってはいけないこと

なぜなぜ分析では「なぜ?」を5回繰り返すだけなので、誰でも簡単に実践ができてて、しかもすぐに効果が分かるという優れた方法です。

しかし、なぜなぜ分析を行う時にはやってはいけないことがあり、これをやってしまうと本当の原因にたどり着けなかったり、職場の人間関係を著しく悪化させてしまうことになります。

なぜなぜ分析でやってはいけないことは以下のとおりです。

・「なぜ?」と聞き過ぎる
・ミスした人を問い詰めてしまう
・「なぜ?」の回数にこだわり過ぎる
・愚痴を聞くだけで終わってしまう

これらのやってはいけないことについて一つずつ解説していきます。

新人の訪問看護師がやりがちなミスについて関連記事にて詳しく解説しています。

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「なぜ?」と聞き過ぎる

「なぜなぜ分析をするのに『なぜ』と聞いてはいけないの?」と思うかも知れませんが、なぜと聞き過ぎることは止めたほうがいいかも知れません。

その理由は、なぜと聞くだけなら誰でも出来るので、思考停止に繋がりやすく自分の頭で考えなくなるからです。

「○○というミスが起きた」ということに対して、「なぜ○○が起きたのですか?」と聞くのは、なぜなぜ分析の基本中の基本です。

 

しかし、「○○というミスが起きた」という事実に対して、「それは□□という原因があったからですか?それとも別のことが原因ですか?」と時には質問の種類を変えて聞く事も重要だからです。

単に「なぜ?」とだけ聞いて率直な意見を言ってもらうのは誰にでもできる簡単な方法なのですが、失敗した人からするとなぜなぜと聞かれても正直に話したくないものです。

相手を気遣うためにも時には質問の方法を変えるなどして工夫をしましょう。

 

ミスした人を問い詰めてしまう

自分のミスなどを自分でなぜなぜ分析をする時には問題ないのですが、上肢や先輩などが後輩の失敗例についてなぜなぜ分析をしてしまうと、相手を責めるような形になる事が多くあります。

そうならないようになぜなぜ分析を行う際には十分注意しましょう。

悪い例は「なぜここで確認をしなかったの?」「なぜこのような失敗をしたの?」と怒り口調で問い詰めてしまうことです。

自分が先輩や上司からこのような質問をされた時には責められていると感じてしまうのは当然のことだと分かりますね。

 

ポイントはミスをした人を責めるのではなく、起こってしまった事実について責めることです。

上司が部下のミスについてなぜなぜ分析をする時には「あなたを責めているのではい」ということや「なぜなぜ分析をして今後の参考にしたい」ということを十分に説明して納得してもらうなどの配慮が必要です。

 

「なぜ?」の回数にこだわり過ぎる

なぜなぜ分析は5回の「なぜ?」を繰り返すと解説しましたが、回数にこだわる必要はありません。

5回というのはあくまでも「なぜ?」の目安の回数であり、場合によっては2回で真の原因にたどり着くこともあれば、複雑な事例の場合は10回以上質問を繰り返すケースもあります。

なぜなぜ分析の目的は真の原因と対策案を考えることです。

目的が達成出来れば回数は気にしなくても大丈夫です。

 

愚痴を聞くだけで終わってしまう

なぜなぜ分析を行う時の注意点は「愚痴を聞くだけで終わってしまうこと」です。

起きてしまったミスや職場の問題点で「なぜ?」と質問したとき、「○○さんが□□だから~」とか「職場が不便な場所にあるから~」などと言いがちですが、なぜなぜ分析を行って真の原因を発見するのと、ただ愚痴を言うだけなのは明らかに違います。

なぜなぜ分析の最終目的は「解決策を出すこと」なので、ただ文句や愚痴を言うだけ言って終わりにしないようにしましょう。

まおつん
愚痴を言ってストレス発散することは個人的にはおすすめですが。笑

 

まとめ

今回はなぜなぜ分析についてやり方と具体例などを解説しました。

「なぜ?」を5回繰り返すだけなので、誰でも簡単にできて真の原因や解決方法も導き出せるとても有効な方法です。

その一方で注意して活用しないと、誰かを責める事になってしまったり、ただの愚痴の言い合いにもなってしまうこともあります。

日頃の生活においても「なぜ?」を取り入れて解像度を高めることで、仕事の質がぐんと上がりますのでぜひ試してみてください。

まおつん
私の最近の「なぜ?」は、”校長先生の話はなぜいつも長いのか”です。泣

 

このブログでは訪問看護で役に立つ情報やリアルな体験談を話しているので、気になる方は他の記事もご確認ください。

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