いまさら聞けない「訪問看護」のお仕事とは?

訪問看護師のまおつんです。

 
相談者
いまさら聞きにくいのですが、訪問看護ってどんな仕事ですか?

 

「訪問看護」について聞いた事があるけど、具体的な仕事の内容までを知っている看護師は少ないかも知れません。

その理由は、日本看護協会のデータによると、日本全国にいる看護師120万人の中でも訪問看護に従事する人口はわずか5万人のみで、全体からみると約4%程度しかいないためです。

それだけ訪問看護をしている人が少ない事が分かりますね。

 

実際に働いている人からどんな仕事内容なのかやリアルな現状を聞く機会は少ないと思うので、今回は私の1日のスケジュールや大変な事などを解説します。

 

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「訪問看護」の仕事内容

訪問看護は文字の通り患者さんの家に訪問してケアする仕事です。

担当の看護師が契約している患者さんの自宅へ車で向かい、30分~90分のケアを行います。

まおつん
私の勤める訪問看護ステーションでは、患者さんによって、30分、60分、90分の3つのコースが選択できるようになっています。

 

訪問看護の主な仕事の内容は、以下のものがあります。

1、問診
2、バイタルチェック
3、食事管理
4、排泄サポート
5、口腔ケア・喀痰吸引
6、点滴やインスリン注射
7、リハビリ
8、家族へのアドバイス

仕事の内容自体は病院の勤務と変わりませんがこれらを1人で行い、しかも訪問の時にはひとりで運転して向かうのが一般的です。

問診

問診は看護師の基本業務の一つです。

患者さんの状態を正しく把握するために

「調子はいかがですか?」

「お薬は飲めましたか?」

などと質問をしながら、フィジカルアセスメントを実施していきます。

問診によって患者さんの重要な情報を得られたり、看護師に求めていることが分かります。

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バイタルチェック

バイタルチェックは、患者さんの状態を数値化して判断することです。

患者さんの訴える主観的な情報と、バイタルチェックによって得られた客観的なデータを総合して患者さんの状態を正確に把握します。

具体的には、体温測定、血圧測定、脈拍測定、呼吸の測定などを行います。

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食事管理

食事は健康を支えるための重要な基盤ですので、患者さんがしっかり食事を摂れているかを管理・サポートをします。

また患者さんだけではなく、食事を用意するご家族に対しても食事に関してのアドバイスをするため、訪問看護師に求められているスキルは幅広いといえます。

 

排泄サポート

排泄が自分で出来ない患者さんについては、看護師のサポートのもと排泄の手助けをします。

また、患者さんの状態に合わせた排泄方法などのアドバイスや提案も訪問看護師のお仕事です。

排泄行為は生理現象ですが、慎重に行わなければ患者さんの自尊心を傷つける事になるので、特に注意を払って行う仕事でもあります。

 

口腔ケア・喀痰吸引

患者さんの歯磨きをしたり口腔内の点検をします。

歯磨きのお手伝いだけでなく、口腔内を観察する事によって起こっている疾患の有無の確認、ご家族へのアドバイスも行います。

場合によっては歯科への受診を提案することもあります。

 

点滴やインスリン注射

点滴やインスリン注射を行っている患者さんは、これらのサポートをします。

訪問時には点滴バッグの交換作業がメインですが、ご家族や患者さん本人が行う事もあります。

そのため点滴バッグ交換の練習をしてもらったり、注意点についても説明をすることも仕事です。

 

また、訪問看護師は点滴の挿入を行う場面にも時々遭遇します。

訪問看護師であれは点滴の挿入は慣れておくと周りにも迷惑がかからず重宝されるスキルといえます。

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リハビリ

患者さんのリハビリについては、基本的にリハビリ専門の職員が行う事になりますが、看護師もそのお手伝いをする事もあります。

訪問看護とリハビリは切っても切れない関係にあり、リハビリ専門のスタッフと連携して患者さんの生活をサポートします。

訪問看護ステーションにはリハビリ専門職の人が多く占めているケースもあり、訪問リハビリを専門に事業を展開しているところも多くあります。

 

家族へのアドバイス

患者さんが健康的な生活を送るためには、ご家族の協力が必須なので、アドバイスをすることも大事な仕事のうちです。

ご家族に対しては、食事やお薬の時間などを管理してもらい、訪問時にはきちんと約束が守られているかなどを確認します。

また、ご家族には患者さんを日々観察してもらい、いつもと違うおかしな様子があった時にはすぐにステーションに連絡をしてもらうように伝えておくことも大切な業務です。

 

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訪問看護師の1日のスケジュール

訪問看護師の実際のスケジュールを解説します。

訪問看護のメインの業務は患者さん宅へ訪問してケアする事ですが、これ以外にも業務報告やスケジュール管理などの雑務が割とあります。

勤務時間は8:45~17:30なので一般的な会社員と大きな違いはなく、パート勤務の私は基本的に残業はありません。

 

朝礼

私の場合は、業務開始前の5分前である8:40くらいには職場に着くようにしており、簡単な着替えをしてからすぐに朝礼が始まります。

朝礼の内容は、主に1日のスケジュール管理と引き継ぎ報告などです。

 

誰がどこの患者さんへ訪問するか、何時頃に戻るかなどを共有し、引継ぎ事項があれば全員で共有します。

訪問看護といえども、ひとりの患者さんを複数の看護師でローテーションしながら見る事も多いので、看護師同士の情報共有は欠かせません。

その他の連絡事項があれば訪問看護ステーション常駐のお医者さんや管理者から共有されます。

 

ちなみに看護師同士の連携を高めるために訪問看護師はひとり一台スマホを貸与されており、グループラインでいつでも連絡を取れるようになっています。

また、看護師のスケジュールはエクセルなどのスプレッドシートなどでも同様に管理されているため、誰がどこにいるのかが一目で分かるようになっています。

 

訪問看護(午前)

朝礼が終わったらさっそく患者さんの家に訪問をしますが、事務所が所有している車を運転して目的地へ向かいます。

私の場合は午前中に2~3件、多い時には午前中だけで6件回る事もあるので、かなりハードな忙しいスケジュールになっています。

 

患者さんによってケアの内容は違いますが、基本的には主治医が作成した「訪問看護指示書」を元に行います。

最初は軽く雑談をしながら問診するところから始め、バイタルチェックなどを一通り行っていきます。

 

上でも書いた通りですが、あとは食事や排泄のサポートをしたり、お風呂に入れてあげたりします。

また、帰り際に患者さんの家族へアドバイスをする事もあります。

1件こなすだけでも汗びっしょりになるくらい大変な場合がほとんどですが、バイタルチェックと服薬管理をするだけで終わる患者さんもいます。

 

お昼休み

お昼休みの時間は一応1時間と決まっていますが、出先にいることも多いので厳密に管理はされていません。

前の患者さんが長引いた場合は、コンビニでサンドイッチやおにぎりを買って秒速の早さで食事を済ませてからすぐに次の訪問先へ向かう事もあります。

まおつん
私のお昼休みは、ほぼ毎日コンビニのサンドイッチをお茶で流し込むスタイルです。笑

 

たまに時間に余裕がある時はゆっくりと家に帰って食べる事も出来ます。

人一倍健康に気を使っているイメージがある看護師という職業人でも、意外と食事に執着が少ない人も多く健康状態も良いとは言えない人が増加中です。

 

休憩中に家に帰るのはルール的にはグレーですが、私のクリニックではあまりうるさく言われないのでこの辺りは非常に助かっています。

この辺のルールは訪問看護ステーションによってかなり違うので確認が必要ですね。

 

訪問看護(午後)

秒速で食事をとり終えてから、午後も午前中と同様に患者さん宅へ訪問します。

 

仕事内容は午前中と基本的に同じですが、訪問先の患者さんによって必要なケアは大きく違う事もあります。

この辺りは臨機応変さが求められるので、訪問看護の楽しいところでもあり難しいところでもあります。

私の場合、午後も2~3件程度回る日が多いので、1日が終わった時にはいつもへとへとになっています。

 

事務所へ戻り業務報告

一日の訪問予定を全てこなした後は一度事務所へ戻り、業務報告や申し送りなどを行います。

報告や申し送りが徹底している様子は病院勤務の時とほとんど変わりません。

私が休みの日には他の看護師が患者さんのところに訪問するので、申し送りが引き継ぎが正しく出来ていないと患者さんにも迷惑を掛ける事にもなります。

 

その他(人間関係、職場環境など)

訪問看護の一番良いところは、患者さんの家では一人で仕事をすため、先輩や後輩などの人間関係に悩む時間が少なくなるところです。

看護のお仕事自体は体力的にはどこも大変な事には変わりありませんが、それよりも職場の人間関係に悩んで看護師を退職してしまう人も多いのが現実です。

その点、病院から訪問看護に入職してきた人の話を聞くと、精神的にかなり楽になったという意見も多く聞きます。

ただ、事務所での朝の朝礼や申し送り時にはどうしても先輩や後輩、それからお医者さんや管理者と最低限の会話はする必要があり、人の好き嫌いによっては人間関係がギスギスしてしまう事もあります。

 

私の訪問看護ステーションで一番揉める事が多いのはシフトを決める時です。

私はパート勤務として働いていますが、中には社員さんもいますので、当然パートと社員では仕事の責任の重さや働く時間が違います。

「あの人は社員なのに休んでばかりいる。」「子供がいないのに残業しないで定時で帰る。」などの愚痴が本人のいない所で聞こえてくる事が、人によってはストレスに感じる人もいるでしょう。

不平不満を言うとキリがありませんが、訪問看護の職場といえど、多少の人間関係の軋轢はどうしても生じるのは仕方がないと割り切るしかありません。

まおつん
訪問看護は病院よりも人間関係の干渉が少ないと思いきや、報告や申し送りで同僚と会話する機会は多いです。

 

まとめ

訪問看護の仕事の内容は病院の勤務の時と大きくは変わりません。

ただ、患者さんの家に1人で訪問してケアをするところが大きく違い、その場の臨機応変に対応できる知識と経験、コミュニケーション能力が問われる仕事です。

しかも、病院のようにすぐに先輩に助けを求めたりアドバイスを仰ぐことも出来ず、その場で判断をしなければいけない事もあります。

 

そんな大変さもありますが、お勤めになる訪問看護ステーションによっては勤務時間やシフトの融通を利かしてくれる場合も多いので、個人的には病院勤務よりもかなり働きやすい職場だと感じています。

このブログを通して患者さんに寄り添う看護師が1人でも増えてくれると嬉しいです。