訪問看護で正しい「問診」出来ていますか?

訪問看護師のまおつんです。

新人看護師
問診を正確に行うコツって何かありますか?

 

看護師が患者さんに対面した時に一番最初に行うのが「問診」であり、患者さんの状態や訴えを正しく把握するための最初の重要な仕事です。

正しく問診を行うにはそれなりの知識や経験が必要で、間違った問診により正しい処置ができない可能性もあります。

今回は訪問看護の現場で使える「問診」のコツと正しいやり方について、現役の訪問看護師の私がポイントを押さえながらじっくり解説していきます。

問診を行う時のポイント

訪問看護の場合、初めて患者さんと対面する時や、症状などを訴えた時に問診を行います。

フィジカルアセスメントの記事でも解説したように、問診は患者さんの負担が少ない作業ですので最初のほうに行うのが正解です。

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問診の時に絶対に押さえておくべきポイントは以下の通りです。

1、患者さんのペースに合わせる
2、適切な声量を心がける
3、適切な言葉づかいをする
4、患者さんの負担を少なくする
5、無理に聞き出そうとしない

これらのポイントはどれも大切な事なので、ひとつずつ解説していきます。

 

患者さんのペースに合わせる

問診をする時に早口になってしまったり、患者さんの話を遮ってしまわないように注意しましょう。

患者さんの話すペースに合わせて、ゆっくりと話したり話しやすい雰囲気を作ってあげる事が大切です。

問診を続ける時には、患者さんが全て話を終えてから質問をするようにしましょう。

 

また、問診をする時には患者さんとの目線を合わせて質問するようにします。

患者さんは大抵寝ているか座っているかのどちらかですので、立ったまま問診をすると威圧感を与えてしまうので、この場合は自分の座って問診を行うのが基本中の基本です。

 

適切な声量を心がける

患者さんによっては難聴で耳が遠い方もいらっしゃいます。

聞こえるために大きな声で話しをしなければならない場合もありますが、だからといって患者さんの耳元で大声で話すことはかえって失礼になることもあります。

問診を行う時には適切な声量を心がけて、一定の距離も保つようにしましょう。

 

適切な言葉づかいをする

多くの患者さんは看護師よりも高齢の場合が多いため、適切な言葉づかいをしましょう。

丁寧すぎる言葉づかいだと構えてしまう患者さんや、逆に砕けた言葉づかいを嫌う患者さんもいます。

この言葉づかいの判断をするのは難しく、患者さんやご家族の様子を見て適切に判断することが大切です。

また、患者さんの呼び方は「○○さん」と名字で呼ぶ場合が多いと思いますが、「お父さん」や「お母さん」と呼ぶこともあります。

この場合も相手に配慮した呼び方をする必要があるので、必要であればご家族に確認を取っておくと良いと思います。

 

患者さんの負担を少なくする

正しい問診をするためには、患者さんの「苦しい」「痛い」などの訴えを聴き取る事が必要ですが、一生懸命に聴き出そうとするあまり患者さんの負担にならないように最大限に注意を払いましょう。

患者さんの負担を最大限に低くしてあげるのが訪問看護師の務めです。

声が出なくて返答が難しい場合は筆談も可能ですが、優先度の高いことから聴き取るようにしましょう。

 

無理に聞き出そうとしない

患者さんは看護師に全ての事を話してくれるとは限りません。

訪問看護の現場では、家族や家の事情など立ち入ったことを尋ねなければならない場合もあります。

患者さんやご家族が答えにくいと思う質問には無理に聞き出そうとしないように配慮しましょう。

どうしても確認しておかなければならない場合は、その理由を説明をして納得してもらうか、上司などから聞いてもらうようにしましょう。

 

問診のコツ

問診はただやみくもに患者さんに対して質問するのではなく、正しく行うためのコツがあります。

効率的に問診を行うために以下のコツをおさえておきましょう。

【問診のコツ】
1、初回の問診時は質問内容を決めておく
2、出来る限り患者さんの状況を整理しておく
3、会話がしやすい環境を整えておく
4、可能な限りご家族に同席してもらう

これらのポイントを押さえておけば、当日になって慌てたり緊張する事も少なくなります。

 

初回の問診時は質問内容を決めておく

はじめて患者さんと顔を合わせる時はベテランの看護師でも緊張するものです。

そのため、出来るだけ効率的に問診を行うために、あらかじめ質問内容を決めておくようにしましょう。

あれもこれも聞きたくなる気持ちはありますが、患者さんの状態から優先度の高い情報を判断して聞き出すようにすると良いでしょう。

多くの場合、その患者さんへは1週間に1度程度は訪問することになるので、優先度の低い問診については後日にしても大丈夫です。

 

出来る限り患者さんの状況を整理しておく

訪問看護を行う時にはお医者さんが「訪問看護指示書」を発行します。

この指示書に基づいて訪問看護を行う事になりますが、ここには患者さんの情報なども記載されている事がほとんどです。

実際に問診を行う時は患者さんの状態などをできる限り把握しておくために、指示書にしっかり目を通したり、必要に応じて事前にケアマネージャーの話を聞いておくようにしましょう。

むやみやたらに問診をするのではなく、「○○かどうかを確認するために、◇◇を質問する」などのように、ひとつひとつの質問に対して意図を考えると効率的な問診を行う事ができます。

事前に患者さんの状態を少しでも把握しておく事が大切です。

 

会話がしやすい環境を整えておく

問診は患者さんと看護師のコミュニケーションで成り立つものなので、患者さんが難聴のため聞こえにくかったり、目が見えなかったりすると、まともな問診が出来ません。

十分なコミュニケーションを行うためには補聴器や眼鏡をつけてもらい、問診が行える環境を整えるようにしましょう。

 

可能な限りご家族に同席してもらう

問診は患者さんのご家族から聞き出せる情報も貴重になります。

そのため、問診を行う時には患者さんはもちろん、可能であればご家族にも同席してもらうようにしましょう。

患者さんとしてもご家族がいることでリラックスして質問に答えてくれる場合もあります。

 

まおつん
問診は患者さんの負担を最小限にしながら、必要な情報だけを聞き出す高度なスキルが求められます。

 

お医者さんやケアマネージャーなどに報告・共有すべき情報

問診によって患者さんの状態が把握できますが、時には様々な情報を得る事が出来ます。

知ることが出来た情報によっては、お医者さん、ケアマネージャーに伝えておく必要があるので、どんな情報を誰に報告・共有しておくべきかを解説します。

また、患者さんのご家族に対しては問診の際にお願いをしておく事もあるので、この点もまとめて解説します。

お医者さんに報告するべき情報

問診によって患者さんが普段から服用してるお薬や、サプリメントが分かった場合には必ず訪問看護ステーションのお医者さんに伝えましょう。

また、訪問看護以外の時に普段通っている病院や、どんな治療をしているのかなどの情報も、お医者さんによっては非常に重要なので確実に報告するようにします。

過去に患った既往症なども分かればお医者さんに伝えておくようにしましょう。

 

ケアマネージャーに報告すべき情報

患者さんの事について、ご家族から「最近、食事の量が減っている」や「起き上がるのがしんどそう」などの患者さんの変化に気付いた時は、ケアマネージャーに伝えておく必要があります。

通常の生活において不便を感じている時や少しでも大変な思いをした時には、看護師に教えてもらうようにしましょう。

患者さんは、看護師には○○を伝えて、ケアマネージャーには□□を伝えてなど、誰に何を伝えたかはいちいち覚えていません。

基本的に私たち看護師には遠慮せずに何でも教えてもらうように患者さんとの関係づくりをしておくことが大切です。

 

ご家族にお願いすること

繰り返しになりますが、問診は患者さんの状態を知ることが目的です。

そのため、基本的には患者さん本人の口から今の状態などを聴き出す事が重要です。

時には患者さんが話しているのを同席しているご家族の方が遮って代わりに話してしまう場合もありますが、理想をいえば患者さん本人から聞き出したいものです。

本人の口から話してもらう事でご家族も把握できていない状態を知ることが出来るためです。

ご家族にはこれらの問診の趣旨を理解していただくと共に、ご家族の説明は補足情報として捉えるように理解していただくようにしましょう。

 

問診時、こんな時はどうしたらいい?

訪問看護は患者さんの家に訪問してケアをするお仕事なので、問診の時も当然同じ環境で行う事になります。

そのため、訪問看護ならではの「問診時、こんな時はどうしたら良いの?」という状況になることもあります。

具体的な例は以下の6パターンです。

【問診時、こんな時はどうしたら良い?】
1、座るスペースがない時
2、患者さんが難聴の時
3、具体的な数値などを聞きたい時
4、認知症のレベルを把握したい時
5、患者さんの気持ちなどを知りたい時
6、直ちに問題などを把握したい時

これらのケースは実際の訪問看護の現場で良く起こりますので、事前に対処法を知っておけば役に立つ事なのでしっかり覚えて実践できるようにしておきましょう。

座るスペースがない時

問診は患者さんと同じ目線に合わせて行うので、基本は座って行うことになります。

しかし家の環境によっては座るスペースがない場合もあるので、その時は患者さんに許可を貰ってからベッドに座るようにしましょう。

許可もなくベッドに座ってしまうと失礼になるので、必ず患者さんかご家族の了承を得るようにします。

 

患者さんが難聴の時

患者さんが難聴の場合、聞こえる耳の方から話かけるようにしましょう。

患者さんがよく聞こえていないくても相槌を打つ場合もあるので、理解しているかどうかを確認しながら確認しながら問診を行うようにします。

患者さんが聞こえていなと正しく問診が出来ないので、補聴器をつけてもらうか、場合によっては筆談をお願いするようにします。

ただし、患者さんの負担にならないように努める必要があるので、その場合はご家族の力を借りるようにすると良いです。

 

具体的な数値などを聞きたい時

患者さんが摂った食事や水分について聞きたい時は、「野菜を何グラム食べましたか?」や「水を何cc飲みましたか?」と質問したくなります。

しかし、具体的な食事や水分の量を把握している患者さんはほとんどいません。

普通の人であっても今日飲んだ水の量を正確に把握している人はいないはずです。

こんな時には質問の仕方を少し変えて、「どのコップを使って飲みましたか?」や「どの食器を使って食べましたか?」など、実際に使っているものを見せてもらうようにすると良いです。

質問のポイントを変えるだけで、正確ではなくともある程度の情報は把握できるようになります。

 

認知症のレベルを把握したい時

患者さんの認知レベルを把握するために、あえて物や人の名前を答えてもらう質問をしましょう。

例えば「今日は何を食べましたか?」や「今日は何日ですか?」などの質問をして、きちんと答えられるかなどを把握します。

簡単なゲームをして認知レベルを把握する方法もありますが、聡明な患者さんの場合は相手に不快感を与える可能性もあるので、何気ない質問の答え方などから認知度を判断して行うようにします。

 

患者さんの気持ちなどを知りたい時

緊急性がない通常の訪問時などは、「オープンクエスチョン」で問診を行うようにします。

オープンクエスチョンとは、「調子はどうですか?」や「今日は何を食べましたか?」などのように、相手が答えを自由に答えられる質問をする質問手法です。

患者さんのいまの気持ちや状態を知りたい時に使える質問方法であり、この質問によって患者さんの求めていることや伝えたい事が分かるようになります。

 

直ちに問題などを把握したい時

オープンクエスチョンの反対に、「クローズドクエスチョン」があります。

これは「痛いですか?」「苦しいですか?」「咳はしていますか?」などのように、「はい」か「いいえ」だけで答える事が出来る質問手法です。

緊急時などの場合には、すぐにでも患者さんの状態を把握して処置をしなければならないので、この場合はクローズドクエスチョンを活用する事で速やかに患者さんの状態を知ることが出来ます。

 

まおつん
「はい」か「いいえ」で答えられるのが「クローズドクエスチョン」で、自由に答える事ができるのが「オープンクエスチョン」です。

 

まとめ

今回は訪問看護の問診に焦点を当てて詳しく解説してきましたが、問診は看護師のスキルを試される仕事です。

問診において一番大切にしなければいけないことは、患者さんの負担を軽減させてあげることです。

いくら看護師とはいえ、赤の他人が自分の家にやってきてあれこれ質問をしている事を想像すると、誰でも緊張はするものです。

そのため訪問看護師はいかに患者さんにリラックスしてもらいながら、効率的に問診が出来るかが重要になってきます。

 

今回解説した問診のコツなどをしっかり理解して、ぜひ現場で活かしてもらえればと思います。

まおつん
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