【訪問看護】バイタルサインを測定する目的と具体的な方法

訪問看護師のまおつんです。

新人看護師
訪問看護の現場で役に立つバイタルサインを測定する方法について詳しく教えてください。

「バイタルサイン」は英語で「Vital Signs」と書き、日本語では「生命の兆候」と訳します。

つまり人間が「生きている」という生命反応について、客観的に判断するために体の各部を測定し、これらの情報を数値化したものです。

今回はバイタルサインの測定などを深堀して解説していき、訪問看護の現場でも役に立つ具体的な方法も紹介していきます。

 

バイタルサインは、フィジカルアセスメントと非常に関連が深いのでフィジカルアセスメントについての関連記事も合わせて確認してください。

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バイタルサインの測定

バイタルサインを測定する目的は、患者さんの状態が正常かどうかを客観的に判断することです。

さらに、前回測定した時とどのように変化したかを把握するのも、バイタルサインを測定する大きな意義です。

これらの項目を総合的に判断することで、患者さんの異常を早期発見することができます。

 

バイタルサインの測定項目

実際に測定する内容としては、以下の項目があります。

1、脈拍
2、呼吸
3、血圧
4、体温
5、SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)
6、尿量

これらの項目については、基礎をしっかり理解して確実に実施できるようにしておきましょう。

 

バイタルサインの測定で生命の危機があるときの各基準値

バイタルサインの測定各項目について、生命の危機がある基準値などを理解しておきましょう。

生命が危機に瀕している時の各項目の基準値(成人の場合)

これらの数値はあくまでも目安なので、測定した数値だけで判断するのではなく、普段と比較してどれだけ違っているかなど総合的に判断するようにします。

これらの測定値が基準値から外れている場合はすぐにお医者さんへ報告する必要があることを覚えておいてください。

 

脈拍

脈拍を測定する位置は、手首にある橈骨動脈(とうこつどうみゃく)で測定するのが一般的ですが、極端に血圧が低い場合は頸動脈やわきの下で測定する場合もあります。

また、訪問看護では「パルスオキシメーター」を使って簡易的に脈拍を測定する場面が多くあります。

これひとつで脈拍の測定と同時にSpO2なども測定が出来るのと、コンパクトで荷物にならないのでひとつ持っておくと非常に便利です。


ただし、パルスオキシメーターは測定した結果の正確性を指摘している専門家の方もいるので、正確な脈拍を測定したい場合は手首や首筋から測定しましょう。

 

呼吸

呼吸数を測定する時は、患者さんに測っている事を意識させずにリラックスした状態で測ることが重要なので、測定している事を悟られないように、脈拍と同じタイミングで測定するようにしましょう。

測定する方法は「息を吸って吐く」というサイクルを1回と数え、胸やお腹の動きをみながら1分間測定します。

成人の場合、1分間の呼吸数は12~20回が正常の範囲です。

 

血圧

患者さんが動いた直後は血圧は高くなってしまうので、5分くらい落ち着いて後に測定するようにしましょう。

また、測定する時は座ってもらうか、寝たままの状態で安静にしてもらい、上腕部で測定します。

体勢によって血圧は若干変動するので、前回の測定とできるだけ同じ条件で変化が分かるように、同じ体勢や同じ部位で測定するようにするのが有効です。

ちなみに日本医師会の報告書によると、2021年1月1日以降は水銀血圧計と水銀体温計の製造や輸出入が禁止されています。

いま使っている物は継続して使用できますが、廃棄する時の方法が多少面倒になるので、血圧計の購入を検討している方は、一般的な電子血圧計を購入するようにしましょう。

体温

体温の測定は「深部体温」つまり、わきの下の一番深いところの体温を測定するのが理想です。

ただし、訪問看護では簡易的に測定するためにパルスオキシメーターを使う場合や、非接触体温計で測定する場合もあります。

血圧などの測定と同様に、いつも同じ条件で測定することで、変化の様子が分かるようになるので、患者さんの負担が少ない方法で実施するようにしましょう。

 

SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)

SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)とは、簡単にいうと血液中のヘモグロビンが酸素と結びついている割合のことをいいます。

正常な場合は、約96~99%のヘモグロビンが酸素と結びついているといわれています。

一般的にSpO2の測定方法はパルスオキシメーターを使って簡易的に行います。

パルスオキシメーターはネットでも購入でき、6,000~30,000円が一般的な価格帯です。

尿量

尿量とは、1時間あたり、または1日あたりの尿の量です。

正常な人の尿の量は、1200~1500ml/日といわれており、あまりにも尿量が多すぎる場合は脱水になる可能性があるので、あまりにも多い場合には注視するようにしましょう。

 

まおつん
学生さんは実習などで勉強することばかりですね。しっかりおさらいしておきましょう。

 

バイタルサインの測定で必ず押さえるポイント

バイタルサインを測定する時には以下のポイントをしっかり把握しておきましょう。

【バイタルサイン測定時に必ず押さえるポイント】
1、測定の前には患者さんの表情などを確認しておく
2、「脈圧」と「脈の緊張」の違いを理解しておく
3、「飽和酸素度」について理解しておく

 

1、測定の前には患者さんの表情などを確認しておく

バイタルサインを測定する前には、患者さんの表情などを確認しておきましょう。

バイタルサインは患者さんの状態を測定データなどから客観的な判断をすることが目的ですが、フィジカルアセスメントについては看護師のあなたが感じた雰囲気や違和感などの情報も非常に重要な情報となります。

 

2、「脈圧」と「脈の緊張」の違いを理解しておく

バイタルサインの測定において、「脈圧」と「脈の緊張」の違いを理解しておきましょう。

 

脈圧とは、『収縮期血圧値』から『拡張期血圧』を引いたものです。

この脈圧から血管の硬さや柔軟性をある程度把握する事ができます。

 

脈の緊張とは、脈そのものの強さの事をいいます。

脈を計ったときの強さにより、おおよその血圧を知ることができます。

脈の緊張を判断するには、ある程度の経験が必要ですが、普段と比較して「普通」「強い」「弱い」などと把握できるようにしておきましょう。

 

3、「飽和酸素度」について理解しておく

「飽和酸素度」について正しく理解しておきましょう。

飽和酸素度は、酸素と結合したヘモグロビンの割合のことをいいます。

 

動脈血で測定した場合には「SaO2」と表し、パルスオキシメーターで測定した場合は「SpO2」と表します。

この数値は正常な場合は95~99%程度といわれていますが、そもそもヘモグロビンの数値が低い場合は、飽和酸素度が高くても十分な酸素量があるとはいえないので注意しましょう。

 

合わせて覚えておきたい

バイタルサインを測定する時に合わせて押さえておきたい状態の用語について解説します。

バイタルの逆転
デルタ脈拍数20ルール
「脈拍数」と「心拍数」の違い
バイタルサインについて勉強する時に関連して覚えておくべき用語は「バイタルの逆転」「デルタ脈拍数20ルール」の2つです。

ひとつずつ解説をしていきます。

 

バイタルの逆転

「バイタルの逆転」とは、脈拍数(心拍数)が収縮血圧を超えた状態のことをいいます。

この状態を「プレショック状態」とも呼び、ショックが発生する兆候でです。

これが起こる原因は敗血症、脱水、出血などが考えられますが、いずれにしてもお医者さんへ連絡をして指示を仰ぐ必要があります。

 

デルタ脈拍数(心拍数)20ルール

「デルタ脈拍数20ルール」は、体温が1℃上昇するごとに脈拍数(心拍数)が20回/分上昇するというルールの事です。

もし、細菌感染症が疑われる場合には、体温1℃上昇に対して20回/分以上の脈拍数の上昇する状態が確認できます。

例えば、普段の脈拍数が65回/分、体温が36.5℃の患者さんがいたとして、この人の体温が1℃上昇したとき、脈拍数が135回/分に上昇した時は細菌感染症を疑います。

いずれにしてもこの状態を発見した時は、すぐにお医者さんへ連絡しましょう。

 

「脈拍数」と「心拍数」の違い

「脈拍数」は、からだ中にある血管が1分間に拍動する回数のことをいいます。

その一方で「心拍数」は、心臓が1分間に動く回数のことです。

基礎的なことですが、この違いをしっかり理解しておきましょう。

不整脈がない正常な人の場合、心臓が1回動くと、からだの血管に脈拍として伝わるので、心拍数と脈拍数が同じになります。

 

 

バイタルサインの測定時によくある事例と対処法

訪問看護でバイタルサインを測定するとき、「あれ、この場合はどうするんだっけ?」という状況になることがあります。

以下のケースがよくあるパターンです。

【バイタルサインの測定時によくある事例】
1、すぐにバイタルサインを確認したとき
2、橈骨動脈(とうこつどうみゃく)で脈が触れにくいとき
3、上肢での血圧測定が出来ないとき
4、呼吸性不整脈があるとき
5、SpO2が測定できないとき
6、体温計が挟めないとき
7、体調が良いのに体温が高いとき

これらの状況になった時に焦らないようにするために、各パターンとその対処法について解説していきます。

まおつん
訪問看護の現場ではいろんな事を臨機応変に対応しなければなりません。

 

1、すぐにバイタルサインを確認したとき

訪問看護の現場では、すぐにバイタルサインを確認したいケースに遭遇します。

その時には手首(橈骨動脈)と首筋(頸動脈)を使って収縮期血圧を予測することができます。

具体的には手首で測定したときに、脈の感覚を感じることができれば、収縮期血圧が80mmHg程度はあると判断できます。

 

また、首筋で測定したときに、脈を感じる事ができれば60mmHg程度はあると考えても良いでしょう。

この時に一緒に発熱の有無なども確認しましょう。

 

2、橈骨動脈(とうこつどうみゃく)で脈が触れにくいとき

患者さんによっては手首(橈骨動脈)で脈を触知することが難しい場合があります。

この時には頸動脈で測定するようにしましょう。

 

また、脈に不整がある場合、聴診器で心音(心尖部の第Ⅰ音)を聞きながら数えると正確な脈拍を測定することができます。

【心尖部の第Ⅰ音とは?】
心房が収縮して血液が心室を満たし、房室弁(僧帽弁と三尖弁)が閉じ、それに伴って心室が収縮を始める時の音。
第Ⅰ音は拍動と一致しているので、橈骨動脈などの脈に不整がある場合の測定に適している。

 

3、上肢での血圧測定が出来ないとき

上半身で血圧を測定する時に、むくみや傷がある場合や、患者さんが痛みを訴えている場合には、下肢で測定する方法があります。

下肢で血圧を測定する時には、マンシェットの幅が狭すぎると血圧値が高く測定されてしまうので、太めのマンシェットを使うようにしましょう。

 

4、呼吸性不整脈があるとき

「呼吸性不整脈」とは、息を吸ったときに脈拍が増え、息を吐いた時に脈が減る状態のことをいいます。

この場合は、患者さんに一時的に息を止めてもらって測定します。

一般的に10%未満の呼吸性不整脈では異常とはみなされません。

 

まおつん
息を止めてもらう時は患者さんの負担にならないように配慮しましょうね。

 

5、SpO2が測定できないとき

パルスオキシメーターでSpO2を測定するときに、結果がなかなか表示されない時は他の指で測定してみましょう。

これは指によって血管の通りが違っているために起こるもので、違う指で測定する正しく測定できる場合があります。

それ以外でどうしてもSpO2が測定できない以下の場合には、次の方法を試してみましょう。

 

6、体温計が挟めないとき

痩せている患者さんなどは、腋の下に体温計が挟めななかったり腋窩(えきか)に密着しない場合があります。

この時はお腹のしわに挟んで測定する方法があります。

しっかりと挟まないと正しく測定できない場合があるので、できるだけ肌に密着させながら行います。

 

7、体調が良いのに体温が高いとき

患者さんの体調は良さそうなのに体温が高い場合は、うつ熱の可能性があります。

特に高齢の患者さんは温度の感覚が鈍くなっている場合があり、極端に着込んだり、空調を高めに設定することがあり、体温の発散が出来ていない事があります。

室温や服装などを調整してから測定するようにしましょう。

 

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まとめ

今回はバイタルサインの測定について詳しく解説しました。

今回の内容は、どの項目も訪問看護においては基本的な業務ですし、知っておいた方が役に立つ知識ばかりです。

 

まおつん
今回の内容は何度もおさらいして、実践できるようにしましょう。

 

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