訪問看護師のまおつんです。
訪問看護で患者さんの状態を把握するための基礎的な仕事として、問診・視診・聴診・触診・打診があります。
今回は「触診」と「打診」について、現役の訪問看護師である私が詳しく解説していきます。
触診と打診は機器を使用せずに、患者さんの体の中を知る事が出来る有効な方法です。
フィジカルアセスメントを行う上でも聴診は重要な位置づけとなるので、この回で正しいやり方やコツをしっかり習得しておきましょう。
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触診・打診を行う時のポイント
触診・打診は患者さんの体に触れたり押したりする方法であり、フィジカルアセスメントを行う上でも重要な作業ですが、患者さんの体にとってみれば意外に負担が大きいものです。
そのため、これらの作業を行う時には十分な配慮をする必要があります。
触診・打診を行う時のポイントについて一つずつ解説していきます。
2、手を温めてから行う
3、普段から手のケアを怠らない
4、「鼓音」「共鳴音(清音)」「濁音」を正しく表現する
清潔な手で触診する
衛生管理は看護師の基本中の基本ですが、触診・打診を行う時は手に汚れや汗が付着していないか改めて確認するようにしましょう。
訪問看護師は患者さんの家に行くために車を運転したりすることが多いので、意外と手指が汚れている事が多いです。
患者さんの中でも看護師の清潔感を気にしている人が多いので、患者さんの体に触れる時には消毒用アルコールティッシュなどで除菌をしてから行うようにします。
手を温めてから行う
触診・打診を行う時には自分の手をしっかり温めてから行いましょう。
冷たい手で触れてしまうと患者さんがビックリしてしまうので、カイロなどで温めて行うか、手をこすり合わせるのが良い方法です。
普段から手のケアを怠らない
看護師は普段の手のケアも重要です。
手がガサガサに荒れた状態で触診・打診を行うと、患者さんにとっても不快な思いをさせてしまいますし、何より細菌などの感染リスクなどもあります。
手指はハンドクリームなどでケアをし、爪も短く切りそろえておくようにしましょう。
「鼓音」「共鳴音(清音)」「濁音」を正しく区別する
打診をして聴こえる音には主に「鼓音」「共鳴音(清音)」「濁音」があります。
鼓音は太鼓を叩いたときの音、共鳴音(清音)は空のペットボトルを叩いた時の音、濁音は水が入ったペットボトルを叩いた時の音とイメージしてもらえば良いです。
これらの音を正しく区別できるようにしておきましょう。
打診については、共鳴音が発生する部位から始め、徐々に濁音が発生すると思われる部位に近づけながら、濁音がする範囲(濁音界)の輪郭を明確にするように行います。
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こんな時はお医者さんに報告して
触診や打診によって得られた結果によっては訪問看護ステーションのお医者さんに報告するべきケースがあります。
1、腹部に「筋性防御」や「反跳痛」が見られるとき
2、今までなかった「しこり」を発見したとき
3、打診で腹水や胸水が溜っていると考えられるとき
4、患者さんが触診・打診によって痛がるとき
腹部に「筋性防御」や「反跳痛」が見られるとき
患者さんの腹部に触った時に「筋性防御」や「「反跳痛」が見られるときは、臓器や腹膜に炎症が生じるような消化器官の問題が疑われるため、お医者さんへ報告しましょう。
筋性防御とは、腹壁お押したときに反射的な緊張によって腹壁が張って硬くなる症状です。
また、反跳痛は、腹壁を押して離したときに強い痛みを伴う症状です。
いずれにしてもお医者さんへ報告して指示を仰ぎましょう。
今までなかった「しこり」を発見したとき
触診によって痛みを訴えている個所やしこりがある場合もお医者さんへの報告が必要です。
また、胸部への握雪感(あくせつかん)に気付いた時は、皮下腫の可能性が疑われるので報告するようにしましょう。
握雪感は、雪を握った時の「ググググ」や「ギシギシ」と似たような感覚の事をいいます。
打診で腹水や胸水が溜っていると考えられるとき
腹部の打診によって濁音があったとき、腹水や胸水の疑いが高いのでお医者さんへ報告しましょう。
腹水があるかどうかを確認するには、患者さんをどちらか横に寝かせた状態で打診をします。
この時に胸部から腹部にかけて鼓音と濁音がする場合、反対向きにして再び打診を行い、濁音がする位置が逆転していれば体内を移動している水がある事が分かるので、腹水が溜っていると考えられます。
下のイメージ図を参考にしてください。
患者さんが触診・打診によって痛がるとき
打診や職人によって患者さんが痛みを訴えいる場合や、苦しそうにしている場合は、炎症が疑われるのでお医者さんへ報告しましょう。
また背中の肝臓部分の打診によって痛みがある場合は、腎盂腎炎(じんうじんえん)や尿路結石(にょうろけっせき)が疑われます。
1、おなか周りが急に大きくなったとき
2、胸に手を当てた時に振動があるとき(痰がたまっている)
3、いつものマッサージなどを急に痛がりだしたとき
触診・打診の方法
ここからは触診と打診の具体的な方法について解説します。
1、打診の基本的な方法
2、腹部の触診の方法
3、胸郭の動きの触診の方法
4、浮腫(ふしゅ)の確認
5、感覚障害の確認
現場で活用できるように、時間がある時には先輩と一緒にやり方を確認してもらうようにしましょう。
打診の基本的な方法
打診の基本的なやり方として以下の方法で行います。(利き手が右手の場合)
① 左の手のひらを皮膚に密着させる
② 右手の中指を直角にし、手首のスナップを利かせて左手の中指を叩く
③ 叩いた後はすぐに右手を離す
この時に「鼓音」「共鳴音(清音)」「濁音」のどの音がするのかを確認します。
打診を行うのは箇所は主に胸部・腹部・背部ですが、以下の順番に従って行うのが一般的です。
様々な部位を打診することにより、肺から出る共鳴音や、ガスが溜っている腸から鼓音などの判断が出来るようになります。
胸部の触診の方法
腹部の触診を行う時は、患者さんの負担や腹壁の緊張を低減させるために、ひざを立ててもらって行います。
体の深い位置を触診する場合には、片方の手を肌に密着させて、もう片方の手で押すようにします。
この方法により手の力が分散され、体の一か所に強い力が加わるのを抑える事ができます。
浅い部分の触診については、片方の手のひらで1~2cmを目安に押すようにします。
胸郭の動きの触診の方法
肺気腫を患っている患者さんは、胸郭の拡張性が悪く胸水が溜っていることが考えられ、この場合は左右の胸郭の動きに左右差が生まれます。
確認方法としては、胸郭全体を両手で包み込み呼吸によってどのように動くかを確認します。
この時、呼吸の妨げになるような強い力で押さないようにしましょう。
正常の胸郭は動きに左右差はなく4cmほどの拡張が見られますが、異常がある場合は左右差が出ることがあります。
浮腫(ふしゅ)の確認
浮腫の一般的な呼び方は「むくみ」ですが、医学的には「ふしゅ」と呼びます。
皮膚のすぐ下に水が溜まる事で起こりますが、確認する方法としては、親指で10~15秒ほど少し強めに押して確認します。
感覚障害の確認
感覚障害があるかどうかを確認する有効な方法としては、つまようじの片方で足の裏を軽く刺激して、先の尖っている方かそうでない方かを患者さんに当ててもらう方法があります。
通常であれば、尖っているかどうかを足の裏で感じることが出来ます。
訪問看護の現場では非常に良く使う方法です。
まとめ
今回は触診と打診について必ず押さえておきたいポイントや具体的な方法について解説しました。
触診と打診は器具などを使わずにほとんど手だけで行う事が出来るので、訪問看護においては非常に有効なフィジカルアセスメントを行う方法として活用できます。
その一方で、これらの方法は看護師の感覚と経験がモノをいう手段なので、慣れていなければ先輩などに実演してもらいながら覚えていく必要があります。
このブログでは訪問看護のリアルな仕事について情報を発信しています。もし興味があれば関連記事もご覧ください。