訪問看護師のまおつんです。
患者さんの排泄介助は、訪問看護師にとって非常に頻度の高い業務といえます。
そのため、多くの看護師は基本的なことから応用まで知りたいという要望がかなり多いのではないでしょうか。
今回は訪問看護師の排泄介助について、一から十までをすべて解説します。
このブログでは訪問看護のリアルな仕事について情報を発信しています。もし興味があれば関連記事もご覧ください。
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排泄介助でおさえてほしいポイント
排泄行為は人間の生理現象です。
健常者であれば自分でおこなうことができますが、自分で行うことができない患者さんは誰かのサポートが必要になります。
訪問看護師としては排泄介助を行うだけでなく、その患者さんに合わせた排泄方法の選択やケアが必要となります。
排泄介助で必ずおさえてほしいポイント
排泄介助を行ううえで必ずおさえておいて欲しいポイントは以下の通りです。
1、患者さんの自尊心を最優先に
2、排泄能力をアセスメントする
3、患者さんに合わせた排泄方法を決める
4、排泄方法に合わせた下着を選択する
5、感染予防は念入りに
1、患者さんの自尊心を最優先に
2、排泄能力をアセスメントする
排泄介助のためには患者さんの排泄能力をアセスメントしておく必要があります。
具体的に確認しておくことは以下のようなものがあります。
次で解説する排泄方法を決めるために重要な情報であり、一般的にはじめて患者さんを訪問するときなどに確認します。
3、患者さんに合わせた排泄方法を決める
排泄方法は、排泄能力に合わせて選択します。
下の図は、排泄能力が高い順に『トイレ』『ポータブルトイレ』『尿便器』『パッド』『おむつ』と並べています。
患者さんに合わせた排泄方法を決めるには正しくアセスメントが行われていることが重要です。
排泄方法の選択については後でポイントを解説します。
4、排泄方法に合わせた下着を選択する
排泄方法が決まったら、次に下着を選択します。
排泄能力の高い順から『布パンツ』『軽失禁用下着』『パッド』『紙パンツ』『テープ式おむつ』と検討していきます。
患者さんが普段から使い慣れているものなどがあればそれを優先して使用しても問題ありません。
あきらかに排泄能力に見合っていない下着を使用している時はご家族に相談しながら決めるようにしましょう。
5、感染予防は念入りに
排泄介助をおこなうときは、どうしても感染症のリスクが高まります。
そのため、基本的な感染予防対策を必ず実施し、手指や器材の取扱いには注意するのはもちろん、場合によっては防護具の使用も検討しましょう。
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排泄方法を選択する
排泄方法を選択するためには、患者さんの排泄能力をアセスメントすることが大切です。
実際に排泄方法を選択するための目安となる状態については以下の表を確認してください。
患者さんの状態に合わせた排泄方法をご家族や患者さん本人とよく相談して決めるようにしましょう。
排泄方法を選択するときのポイント
排泄方法を選択する時にはいくつかポイントがあります。
1、おむつやパッドに頼らずできるだけトイレを使用する
2、尿便意がない場合は、時間を決めてトイレに行く
3、水分補給を忘れないように
1、おむつやパッドに頼らずできるだけトイレを使用する
おむつやパッドをしている患者さんであっても、できるだけトイレで排泄をするように促しましょう。
その理由は、おむつやパッドに頼り過ぎてしまうと、それが習慣化して尿便意や畜尿便の機能が低下してしまう恐れがあるためです。
もちろん、身体機能や環境、ご家族や親族の介護力を考慮して決めたい事ですが、おむつなどに頼り過ぎには注意が必要です。
2、尿便意がない場合は、時間を決めてトイレに行く
尿便意がない患者さんに関しては、時間を決めてトイレに行くように促します。
場合によっては患者さんが自ら尿便意を訴えることができないケースもあるので、時間を決めてトイレに行くように週間づけておくようにすると良いでしょう。
『起床した時』
『食事のあと』
『入浴の前』
など分かりやすい時間をあらかじめ決めておけば、忘れる心配もなくなります。
3、水分補給を忘れないように
年齢を重ねると筋肉量が減るため、体に水分を蓄えておく機能も低下します。
そのため、日頃から十分な水分を摂っておかないと脱水や便秘になる可能性があります。
患者さん本人やご家族には十分な水分を摂るようにアドバイスしておきましょう。
排泄介助でこんなときはどうする?
排泄介助をする時には「こんな時はどうすれば良いの?」という場面があります。
1、トイレを認識できない場合
2、自力でトイレまでいけない場合
3、自力でトイレまで行けなく、家族に介護力がない場合
4、頻尿を訴えている場合
5、自力でトイレまで行けるが、行こうとしない場合
6、少量の失禁がある場合
7、終末期やターミナルケアをしている場合
1、トイレを認識できない場合
患者さんによってはトイレを認識できない場合もあります。
そういった場合には、ドアに大きく『トイレ』や『便所』と書くなどして、患者さんに認識しやすいように工夫しましょう。
患者さんの年齢よっては、縦書きや右から読めるように書いた方が認識しやすい場合もあります。
また、トイレを認識してもらうために、ドアを開けて便座も開けておくという方法もあります。
2、自力でトイレいけない場合
尿便意はあるものの、身体能力に課題があり自力でトイレまでいけない場合、まずはリハビリによって身体能力を回復することが優先です。
また、トイレに行きやすいように手すりの設置やベッドの位置を変更するのも有効です。
患者さんの周りの環境を整備することは排泄介助だけでなく、様々な生活の場面においても利便性が向上します。
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3、自力でトイレまで行けなく、家族に介護力がない場合
患者さん本人の力でトイレまで行けず、さらにご家族にも頼れない場合には、訪問看護だけでは限界があります。
こういう時は介護保険をつかって定期巡回サービスや訪問介護を利用しましょう。
ケアマネージャーに相談し、これらのサービスを利用できるかを検討しましょう。
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4、頻尿を訴えている場合
患者さんの入院中に尿道カテーテルやおむつを使用していた場合、膀胱が小さくなることで頻尿を訴えるケースがあります。
この場合にはお医者さんに相談して、内服治療を検討するようにしましょう。
また、トイレを我慢してもらって少しずつ膀胱の容量を増やしていく改善方法もあります。
ご家族の協力を得られれば、排尿・排便日誌を付けると頻度などを把握できます。
・排泄の量
・排泄の時間帯
・内服の時間帯
・食事の時間や量
・水分補給の時間や量
これらの情報が少なくても3日以上あると、アセスメントにも非常に役立ちます。
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5、自力でトイレまで行けるが、行こうとしない場合
患者さん本人がトイレに行く能力はあるのに、なかなかトイレに行かない場合には何か別の理由があります。
「自力で行けるけど、行くのが面倒」
「家族や看護師に迷惑を掛けたくない」
「自力で行けるけど、うまくできない」
など様々な気持ちを持っていたとしても、それをうまく伝えられないケースもあります。
こういった場合には、トイレだけにこだわらず、おむつやパッドを使ってみることをさりげなく提案してみましょう。
患者さん本人の心の底にある悩みや不都合を察することができれば、正しい対処法を一緒に考えることができます。
6、少量の失禁がある場合
失禁がある場合には、失禁用の下着の使用を検討しましょう。
咳やくしゃみをしたとき、トイレに行く前などに少し出る程度の失禁であれば軽度の失禁用の下着もあります。
いきなり大きなパッドを使用するのは患者さんにも抵抗があるので、軽失禁用の布タイプか紙タイプのどちらかを選択すれば良いでしょう。
腹圧性尿失禁がある場合は、骨盤底筋体操によって改善することもあるので一緒に取り組んでみるのも良いと思います。
7、終末期やターミナルケアをしている場合
患者さんの終末期においては、トイレへの移動が困難になり床上排泄がメインとなります。
排泄のアセスメントをしながらご家族とも相談のうえで排泄方法を検討しましょう。
次で解説する床上排泄のコツについてもご確認ください。
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床上排泄
床上排泄とは、ベッド上で尿器や便器を使って排泄することです。
トイレまでの移動が困難な場合や、座ることが難しい 患者さんにおいては床上排泄を検討する必要がります。
ここでは床上排泄のポイントについて解説します。
床上排泄の基本的なポイント
床上排泄においての基本的なポイントは以下のとおりです。
1、患者さん自身でどこまでできるかを確認する
2、患者さんとご家族が使いやすい排泄器具を選択する
3、排泄時のプライバシーに考慮する
4、患者さん自身でできることは任せる
1、患者さん自身でどこまでできるかを確認する
患者さん自身が排泄のためにズボンやパンツを脱げるかどうかをまず確認しましょう。
また、排泄物を処理できるかどうかも重要なポイントです。
ご家族の介助があれば上記ができるなどが分かれば、これも判断材料となります。
2、患者さんとご家族が使いやすい排泄器具を選択する
床上排泄器具は使用する患者さん本人や介助を行うご家族が使いやすいものを選びましょう。
患者さん本人やご家族がどのくらい腰を持ち上げることができるのか、または、患者さんの体格に合わせて選択するのが基本です。
3、排泄時のプライバシーに考慮する
患者さんが排泄をするときや、介助をする時にはプライバシーに十分配慮しましょう。
患者さんが自分でできる場合には、タオルやカーテンなどで隠すのはもちろんのことです。
介助をする場合でも羞恥心を傷つけることないような配慮が必要です。
4、患者さん自身でできることは任せる
患者さん自身が自分で腰を持ち上げたり、ズボンやパンツを脱ぐことができる場合には、本人に任せることも必要です。
排泄行為はプライバシー行為なので、一連の動作をすべて介助することだけが看護師の役目ではありません。
「自分でできる」
「恥ずかしい」
「負担をかけたくない」
といった気持ちを患者さんが持つのは当然なので、患者さん本人でできることは任せてしまっても大丈夫です。
床上排泄のコツ
床上排泄の具体的なコツについて解説します。
1、女性は尿がこぼれないように注意する
2、尿の処理のしかたに注意する
3、排便時は30~45°ギャッチアップする
1、女性は尿がこぼれないように注意する
女性の床上排泄介助で尿器を使用するときは、尿がこぼれてしまわないように注意が必要です。
尿器をベッドに押し当てて受け口の先端を会陰下部にあてて密着させ、かつ、トイレットペーパーなどで尿が飛散するのを防ぎます。
2、尿の処理のしかたに注意する
排泄したあとの尿の処理方法については、トイレに流すのが一般的です。
ただし、患者さん本人で行う場合は負担が大きいので、尿器を持ち運ぶ時には尿がこぼれてしまう可能性もあります。
そのため、尿器に逆流防止弁が付いているものが有効です。
また、尿を中で固めてくれるポリマーなどもあります。
ポリマーや凝固剤で固めて処分する場合は、トイレに廃棄することができないので、各自治体のルールに従い可燃物として処理しましょう。
3、排便時は30~45°ギャッチアップする
排便時には腹圧がかけやすいように30~45°ギャッチアップすると良いでしょう。
床上排泄でこんなときはどうする?
床上排泄の介助をするときに「こんなときはどうする?」と出くわしがちな場面とその対処法について解説します。
1、頻繁に尿を廃棄するのが難しい場合
2、男性で尿意が曖昧な場合
3、医者や家族に伝えるべき場合
1、頻繁に尿を廃棄するのが難しい場合
通常の尿器では容量が小さく頻繁に尿を廃棄しなければいけませんが、1,500mL程度までためておくことができる容器もあります。
これを利用することでご家族の負担もかなり軽減されます。
また、大容量の容器を使う場合には、自動採尿器を使うのもおすすめです。
これは、患者さん自身がレシーバにあてるだけで寝たままでも排尿ができるもので、さらに床上排泄の介助の負担が軽くなります。
2、男性で尿意が曖昧な場合
男性の患者さんで尿意が曖昧な場合はいつ介助をすべきかの判断が難しいケースもあります。
そんな時には、装着式尿器を使用することを検討しましょう。
男性の陰茎にレシーバを付けたままできるので、排尿の介助の負担が軽くなります。
ただし、長時間つけ過ぎると陰茎が圧迫されて皮膚障害をおこす場合もあるので、状態をよく観察しながら使用することを検討しましょう。
装着式の尿器は高額ですので、患者さんの体に合うか合わないかは事前にメーカーに問い合わせし、できれば実際にお試しで使ってみてから判断するようにしましょう。
3、医者や家族に伝えるべき場合
床上の排泄器具を使用していて皮膚障害を起こした場合には、かかりつけのお医者さんに必ず報告しましょう。
ご家族に対しては、排泄器具などの使用方法はきちんと説明しておくようにしましょう。
また、排泄器具は衛生面から毎日洗浄することが望ましいので、尿器に尿が入ったまま放置しないように注意するように呼び掛けてください。
排泄器具で周りの目が気になる場には、大きめな布などを用意してもらい隠せるようにしておくなどの心遣いがあると良いでしょう。
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トイレ排泄
トイレでの排泄は、もっとも衛生的に排泄物を処理できる理想的な方法といえます。
そのため、可能な限りはトイレでの排泄を検討する必要があります。
ここではトイレ排泄においてのポイントを解説します。
トイレ排泄の基本的なポイント
トイレ排泄でおさえてほしい基本的なポイントは以下の通りです。
1、尿便意があってもトイレまで移動できる場合はトイレ排泄を検討する
2、トイレまでの安全な移動を環境整備する
3、場合によってはポータブルトイレの使用を検討する
1、尿便意があってもトイレまで移動できる場合はトイレ排泄を検討する
この章の冒頭にあったように、トイレ排泄はもっとも衛生的かつ基本的な排泄方法なので、患者さんが可能であれば一番に検討をしたい方法です。
排泄介助に頼り切った状態を続けると、尿便意のコントロールができなくなるケースもあるので、できる限りはトイレで排泄することが望ましいです。
2、トイレまでの安全な移動を環境整備する
トイレ排泄が可能であれば、トイレまで移動するための環境を整備しましょう。
具体的には手すりを設置したり、段差をなくすなどの工夫が必要です。
訪問看護師のまおつんです。相談者訪問看護で患者さんの環境を整えたいと思いますが、コツとかってありますか?今回は、患者さんをより快適に過ごしてもらうための環境整備について詳しく解説していきます。ちょっとした[…]
トイレまでの環境整備においては、実際に自分でも歩いてみて確認するようにしましょう。
3、場合によってはポータブルトイレの使用を検討する
患者さんの身体能力やご家族の介護力によっては、患者さんがトイレまで行くのが困難な場合もあります。
このようなときにはポータブルトイレの使用を検討しましょう。
ポータブルトイレを選ぶ場合に以下のポイントに注意して選ぶと良いでしょう。
注意しなければならないのは、介護保険を適用して購入またはレンタルをする場合には、保険の適用になるようなものを選択することです。
トイレ排泄において検討が必要なこと
トイレ排泄するときには、患者さんの状況に合わせて以下の点を検討しましょう。
1、トイレの扉が内開きの場合は、引き戸の改修を検討する
2、和式トイレの使用が難しいときは洋式トイレへの改修を検討する
3、姿勢保持や起立の補助のための手すり設置を検討する
1、トイレの扉が内開きの場合は、引き戸の改修を検討する
トイレで排泄介助を行う場合において、トイレの扉が内開きだと転倒した場合、外から開けることができなくなるリスクが高くなります。
そのため、トイレの扉は外開きか引き戸にしておくことが理想的です。
場合によっては扉そのものを外して、アコーディオンカーテンにする場合もあります。
2、和式トイレの使用が難しいときは洋式トイレへの改修を検討する
まだまだ古い家庭などに多い和式トイレですが、排泄介助においては患者さんの体への負担が大きいため、洋式トイレへ改修することを検討しましょう。
アロン化成株式会社が提供している『サニタリーエースHG据置式』などは、工事いらずで和式トイレから様式トイレへ早変わりできる製品があります。
和式トイレに被せて使用するだけで簡単に設置できるので、お手軽に変更ができるのがメリットです。
3、姿勢保持や起立の補助のための手すり設置を検討する
患者さんの身体能力によってはL型の手すりの設置が必要です。
座ったり立ち上がったリする動作のサポートをすることができます。
手すりを設置するためには基本的に工事が必要ですが、工事が不要な製品もあります。
株式会社シコクの『SA手すり』が代表的な製品です。
トイレ排泄でこんなときはどうする?
トイレで排泄介助を行う場合で「こんなときはどうする?」について解説します。
1、トイレまでの移動が難しい場合
2、ポータブルトイレのにおいが気になる場合
3、洋式トイレの高さが合わない場合
1、トイレまでの移動が難しい場合
トイレまでの移動が難しい場合においては、ベッドの位置をできるだけトイレに近づけておくことが前提です。
また、トイレとベッド間の動線には手すりの設置が必要です。
寝たきり状態を防ぐためにもリハビリテーションによって筋力をつけるなどの方法も検討しましょう。
2、ポータブルトイレのにおいが気になる場合
ポータブルトイレは便利ですが、そのぶん清掃の手間が増えたり、においが気になることもあります。
ポータブルトイレを使用する時のコツとしては、
・中に少量の水を入れておく
・排便前にティッシュを敷いておく
・消臭液を入れておく
などで対策ができるので検討してみてください。
3、洋式トイレの高さが合わない場合
洋式トイレの座面の高さが患者さんにとって低すぎるために身体への負担になっていることが時々あります。
このような場合には、電動で座面の高さが変わるトイレへの改修が理想的ですが、費用面ではかなりの負担になります。
そういうときは、補高便座を取り入れることを検討してみましょう。
簡単に設置ができるので、他のご家族やお子さんが使用する場合には取り外すこともできます。
おむつ交換
おむつ交換の基本的なポイント
おむつ交換においておさえて欲しい基本的なポイントは以下の通りです。
1、大人用おむつはインナーとアウターを組み合わせて使うのが基本
2、身体機能や介護状況からおむつを選択する
3、おむつ交換時はビニールや敷パッドを敷く
4、新しいおむつを装着するときは新しい手袋に交換する
1、大人用おむつはインナーとアウターを組み合わせて使うのが基本
一般的な大人用のおむつは、外側の「アウター」と尿取りをする「インナー」に分かれます。
アウターは尿取りパッドを固定する重要な役割があることを理解しておきましょう。
2、身体機能や介護状況からおむつを選択する
おむつは、各メーカーや製品によって、吸収スピードやサイズ、値段などが異なるので患者さんの身体機能に合わせたものを選ぶと良いでしょう。
おむつの選び方は、Kao(花王株式会社)が分かりやすく解説しているページがあるので参考にしてみてください。
3、おむつ交換時はビニールや敷パッドを敷く
寝たきりの患者さんのおむつを交換するときは、シーツを汚さないようにビニールや敷パッドを使用しましょう。
おむつ交換は患者さんの身体的な負担も大きいので、患者さんの姿勢を気にするあまり、シーツに汚れが付着するのを防ぐのがおざなりになる場合があります。
それを防ぐためにはおむつを交換する前にはシーツの上にビニールシートを敷くことがおすすめです。
4、新しいおむつを装着するときは新しい手袋に交換する
おむつを交換するときには2セットの手袋が必要と覚えておきましょう。
汚れたおむつを取るときは手袋を使用しますが、新しいおむつを患者さんに装着するときには古い手袋を捨てて新しい手袋を装着します。
おむつ交換のコツ
おむつを交換するときの具体的なコツについて解説します。
1、換気や消臭を行う
2、インナーパッドは1枚を基本とする
3、アウターの装着方法を覚える
4、 テープ式おむつの装着方法を覚える
5、皮膚の洗浄は1日1回を基本とする
1、換気や消臭を行う
おむつ交換のときのにおいを防ぐために、窓を開けるなどして換気をしましょう。
また、おむつ交換後は市販されている消臭スプレーなどを使用すると、患者さんやご家族への不快感が軽減できます。
排泄物の処理方法は、便をトイレに流して、汚れたおむつは袋で密閉してから処分すると良いです。
2、インナーパッドは1枚を基本とする
尿漏れを防ぐために複数枚のインナーを使用されているケースが見られますが、かえってそれが尿漏れを起こしている場合もあります。
基本的にメーカーが指定した使用方法に従って、インナーの使用は1枚を基本としましょう。
それでも尿漏れなどがある場合には、インナーが患者さんの体に合っていないか、正しい使い方が出来ていない場合があるので、別の製品に変えるなどを検討しましょう。
3、アウターの装着方法を覚える
アウターは立体ギャザーを潰さないようにしっかり立てておくことが重要です。
尿取りパッドを入れるときにも、この立体ギャザーを潰さないように注意しましょう。
患者さんの体に装着するときは、ギャザー部分を体にしっかりと沿わせるように意識するとうまくいきます。
花王『大人用おむつ(介護おむつ)の漏れない当て方と交換方法』
4、 テープ式おむつの装着方法を覚える
テープ式のおむつの場合は、しわをよく伸ばして装着するようにしましょう。
おむつの中心部分を背骨に合わせるように装着し、テープは左右とも同じ位置に合わせて止めます。
左右のテープがクロスしてしまう場合はおむつのサイズが合っていない場合があるので、適切なサイズのものを使用するようにしましょう。
5、皮膚の洗浄は1日1回を基本とする
おむつを長期間使用していると皮膚障害のリスクが高くなります。
そのため、皮膚の洗浄をこまめに行いたくなりますが、洗浄のやり過ぎは逆に皮膚のバリア機能も損なう可能性があるので、1日1回の洗浄が丁度いい頻度です。
何ごともやり過ぎには注意し、ほどほどを心がけるようにしましょう。
ご家族がおむつ交換をする場合も多いとおもうので、上記のことをしっかり理解してもらうように説明しましょう。
おむつ交換でこんなときはどうする?
おむつ交換において「こんなときはどうする?」という場合の対処方法について解説します。
1、介護力が低くおむつ交換頻度が少ない場合
2、尿の勢いが強い場合や尿量が多い場合
3、軟便が多い場合
4、皮膚障害のリスクが高く、おむつ交換の頻度が低い場合
1、介護力が低くおむつ交換頻度が少ない場合
介護力によっておむつ交換の頻度が低い場合は、吸収量の多いパッドを選択するようにしましょう。
現在では各メーカーから様々なおむつが販売されており、50~1,800mLまで吸収できるタイプがあります。
吸収量の目安として「約〇回分」などと書かれている製品もありますが、1回あたりの吸収量は150mLとして計算しています。
つまり、「2回分」と書かれていれば300mLまで吸収できるという意味です。
2、尿の勢いが強い場合や尿量が多い場合
尿の勢いが強かったり、尿量が多い場合はパッドの吸収が間に合わずに漏れ出す場合があります。
このような場合は、尿道口のまわりにスキマを作って装着することである程度防ぐことができます。
吸収が早いパッドもあるので、使用を検討しましょう。
3、軟便が多い場合
軟便が大量に出る場合は、パッドは使用せずテープ式おむつを1枚使用して吸収面積を増やすと良いでしょう。
パッドは軟便の吸収には適しておらず、漏れが発生する可能性が高くなります。
テープ式おむつを使用する場合は、軟便が溜まるスペースを空けて装着するようにしましょう。
4、皮膚障害のリスクが高く、おむつ交換の頻度が低い場合
皮膚障害がある場合や、おむつ交換までの時間が長くなる場合は、撥水効果のあるクリームを使用することで排泄物で汚れるのを防ぐことができます。
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まとめ
今回は排泄介助の基本からおむつ交換まで解説しました。
排泄は頻度が高いケアのひとつになるので、しっかり覚えて実践で活かしましょう。
訪問看護が気になる方は関連記事もご覧ください。
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