訪問看護師のまおつんです。
基礎から勉強して現場で活かしたいです。
訪問看護師をやっていると必ず経験するのがエンゼルケアです。
エンゼルケアは患者さんがお亡くなりになられた後に行う処置の事で、病院で勤務していても経験する事は多いですが、訪問看護においては病院とは環境が違うため一味違う工夫が必要です。
今回はエンゼルケアの基礎をおさえつつ、訪問看護の場合における注意点やコツについて解説していきます。
このブログでは訪問看護のリアルな仕事について情報を発信しています。もし興味があれば関連記事もご覧ください。
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エンゼルケアで最初におさえておいて欲しいポイント
訪問看護でのエンゼルケアは患者さんやご家族の要望により行います。
ご家族にとっては親しい人とのお別れになり悲しみに暮れているので、言葉づかいや行動には注意しなければいけません。
エンゼルケアを行う時に必ずおさえておいて欲しいポイントは以下のとおりです。
2、エンゼルケアは保険対象外になる事を説明しておく
3、亡くなった後、からだの変化を予想し対処する
4、エンゼルケアはお別れの時をサポートするのが基本
5、死亡診断がすぐにできない時は『死の3兆候』を確認する
6、エンゼルケアはご家族を巻き込んで
これらのポイントについて一つずつ解説していきます。
1、献体登録の有無を確認しておく
患者さんが献体登録をしているかどうかはできれば生前に確認をしておきましょう。
患者さんがお住まいの都道府県にある医科大学(大学医学部)か歯科大学(大学歯学部)、もしくは献体の会に問い合わせれば献体登録の有無を確認することが出来ます。
またはご家族がすでに確認している場合もあるので、ご家族に聞いておくようにしましょう。
2、エンゼルケアは公的保険対象外になる事を説明しておく
看護師が行うエンゼルケアは保険対象外となるので、出来れば生前に掛かる費用などを説明しておく事が望ましいです。
患者さんが亡くなられると、ご家族は悲しみに暮れる時間も無いくらいバタバタと忙しくなります。
エンゼルケアが全て自費だと知らなないまま処置が終わり、後でトラブルになるという事だけは避けたいものです。
3、亡くなった後、からだの変化を予想し対処する
エンゼルケアをしている時間は患者さんとご家族のお別れを惜しむ貴重な時間ですが、ご遺体の状態は刻々と変化していくため素早い対応が必要です。
体温が高いままだと腐敗の進行が早まるため、服を着替えたり体をキレイにしたりする時間も限られる事を覚えておきましょう。
また死後はご遺体の乾燥が進むため、後で解説しますが適切な処置を素早く行うようにしましょう。
4、エンゼルケアはお別れの時をサポートするのが基本
エンゼルケアの経験が少ないと何をしていいのか、ご家族にどんな言葉をかけるべきか迷います。
しかし時間はどんどん過ぎていくので処置はすぐにやらなければいけません。
ご家族にとっては様々な感情が交差する時間ですので、訪問看護師は決して焦らずに寄り添うようにサポートしてあげましょう。
5、死亡診断がすぐにできない時は『死の3兆候』を確認する
2、呼吸停止
3、瞳孔散大(対光反射停止)
6、エンゼルケアはご家族を巻き込んで
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エンゼルケアの基本的な進めかた
具体的なエンゼルケアの方法については、8つのポイントに絞って解説していきます。
2、乾燥の予防
3、口腔ケア
4、下顎の固定
5、清拭・創処置
6、着付け
7、洗髪・整髪
8、メイク
どれも基本的な処置ですので必ずおさえておきましょう。
1、腐敗の予防
死後の体内で細菌が発生しやすい温度は25~40℃ですので、体を冷却するクーリングは深部体温を20℃以下にし、部屋の温度も20℃以下になるようにしましょう。
特に胸部と腹部は腐敗が進みやすい箇所なので、死後直後は出来るだけ早めにクーリングを開始し葬儀屋さんが到着するまでこれを続けます。
患者さんが亡くなってからすぐに看護師が訪問できない場合は、電話などで処置のやり方を説明することも出来ますが、可能であれば事前に説明をしておくことが望ましいです。
クーリングはアイスノンなどを直接胸部と腹部に当てて体を冷却するのが一般的ですが、ご家族にやってもらうには「冷たくてかわいそう」などと抵抗もあるので、そういう場合には背中にアイスノンを敷く方法も有効です。
2、乾燥の予防
ご遺体の乾燥を防ぐためにもエアコンの風が直接体に当たらないようにしましょう。
室温が上がらないようにエアコンや扇風機は有効ですが、必要以上に使いすぎると体が乾燥してしまうため、出来るだけ肌の露出がないように注意します。
意外と見落としがちなのが足元の乾燥ですので、足には靴下をはかせておくと良いです。
手や顔については、ワセリンやハンドクリームなどで十分に保湿しますが、特に唇はかなり乾燥しやすいので多めに塗りましょう。
多少塗り過ぎるくらいであっても、皮膚がクリームを吸収して次第に乾燥してくるので問題はありません。
3、口腔ケア
エンゼルケアにおいて、口腔内の清掃は特に行わないという意見もあります。
この理由は次で解説しますが、死後はすぐに顎の硬直が始まり、下顎の固定は出来るだけ早く行う必要があるためです。
入れ歯については、はめたくなる気持ちがありますが、無理にはめられなくても特に問題はないので、そのまま葬儀屋さんにお任せしましょう。
4、下顎の固定
死後は口が開きやすくなるので、出来だけ早めに下顎の固定は済ませておきましょう。
やり方は、タオルなどで枕を少し高くして、顎の下にもタオルを入れて保持するようにしましょう。
下顎の項直は死後1~3時間後から始まるので、できれば死後1時間以内にこれをやっておく事が望ましいです。
5、清拭・創処置
清拭は体をキレイに拭き上げる処置ですが、この時はぬるま湯を使って行うようにしましょう。
熱すぎるお湯で行うとかえって体を乾燥させてしまいます。
また、皮膚にある傷については、すぐに浮腫が始まるためガーゼなどで保護するようにしましましょう。
6、着付け
着付けについては患者さんが生前好きだった服や着物などを着せるようにしましょう。
ご家族に手伝ってもらいながら行うことで、患者さんとご家族の大事な時間を過ごすことへのサポートが出来ると思います。
着付けについてはご家族の希望に沿って主体的にやってもらい、訪問看護師はお手伝いをするとうまくいく場合が多いです。
7、洗髪・整髪
洗髪は結構大変な作業ですので、ご家族の希望などを聞きながら時間があれば行うようにしましょう。
髪を洗った後はドライヤーで乾燥させる必要がありますが、顔の周りを乾燥されることはできるだけ避けたいため最低限に行うようにします。
髪を洗わずに整髪だけを行う場合もあります。
8、メイク
血色が良く見えるようにチークや口紅などで簡単にメイクを行うようにしましょう。
これもご家族の希望を聞きながら行いますが、メイクは性別を問わずに基本的に行った方が見栄えも良くなるので提案するほうが良いです。
チークや口紅は上記の図の箇所に塗ると血色が良く顔がきれいに見えます。
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エンゼルケアでこんな時はどうする
エンゼルケアを行っていると以下のような場面で悩むことがあります。
2、臭いが気になる場合
3、髭が伸びている場合
4、目を完全に閉じておきたい場合
5、体にテープが残っている場合
6、チューブを使用している場合
これらの場合においての適切な方法についても解説していきます。
1、直腸に便が残っている場合
亡くなる直前まで何かを食べていた場合、直腸に便がある可能性があるので、こういう場合には腹部や胃を圧迫して便を排出します。
尿は自然に出てくる事が多いですが、排出後にはおむつ履かせるか、尿取りパッドを当てるだけの方法が一般的です。
2、臭いが気になる場合
臭いが気になる場合は、ハイターなど次亜塩素酸ナトリウムが含まれているものを水で薄めて口腔内や褥瘡部分などを拭きあげます。
ご家族の前でハイターを使って口腔内を拭かれると動揺される可能性があるので、事前に別の容器に液を準備しておいて持参する気遣いがあれば良いと思います。
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3、髭が伸びている場合
髭を剃ることは皮膚が後に腫れることがあるので出来るだけ避けたほうが良いです。
どうしても剃りたい場合には、除毛クリームを使うか、カミソリで軽く剃った後にファンデーションなどで隠すのがおすすめです。
処理をした後は、できるだけ顔の乾燥はさせたくはないので、しっかりと保湿をするようにしましょう。
4、目を完全に閉じておきたい場合
瞼を閉じておきたい場合は、顔のクレンジングマッサージを行う事で自然に閉じる場合があります。
それでもダメなら、眼球に目薬などを数滴垂らしてから、額から下に向かって何回か手をなでおろすようにすると閉じるようになります。
5、体にテープが残っている場合
体に残ったテープはすぐにはがさずに、ワセリンなどで浮かしてからはがしましょう。
角質層を剝がしてしまうと修復が難しいので、テープなどは剥がしてしまわないようにご家族にも注意するように伝えておきましょう。
6、チューブを使用している場合
鼻カニューレやドレンなどのチューブが直接皮膚に触れていると、圧迫されて色素沈着が進むため早めに圧迫を解除してあげましょう。
カテーテルや点滴針を抜くとその部分から体液が漏れてくるので、抜かないままにしておく場合がほとんどですが、ご家族の要望によりどうしても抜きたい時にはガーゼやフィルムテープでふさぐようにしましょう。
エンゼルケアを行った後にやること
これまではエンゼルケアの方法について解説してきましたが、処置が終わってからご遺体を葬儀屋さんに引き渡してからも実はまだまだやる事はあります。
エンゼルケアの後に行うことを以下にまとめました。
2、関わってくれた他職種の人を労う
3、(後日、機会があれば)お礼を言いご焼香をあげる
4、代金の支払い方法を確認する
これらの項目について、ひとつずつ解説していきます。
ちなみに、ショックや悲しみの渦中にいるご遺族に対しては『グリーフケア』を行う必要があります。
詳細については下記の関連記事にて詳しく解説しているので、合わせてご確認ください。
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1、ご家族を労ってから退室する
エンゼルケアが終わって退室する時には、ご家族にはいつもより丁寧にあいさつしてから退室しましょう。
また、エンゼルケアを手伝ってくれた事にも感謝の言葉を述べるようにしましょう。
ご家族は悲しみの中で大変な作業をしてくれた事、また、エンゼルケアを看護師として携わらせてくれたことにも感謝をします。
2、関わってくれた他職種の人を労う
エンゼルケアを行って退室した後は事務所に戻りますが、出来るだけ早い段階でこれまで患者さんに関わってくれたケアマネジャーやヘルパーにも感謝の意を伝えて、エンゼルケアが無事に終わったことを報告しましょう。
他職種の方の中には「生前にもっとこうしていれば…」などと後悔の念に駆られる人もいるようですが、患者さんと最期の時を過ごした看護師から労をねぎらってもらえる事で安心する人も多いようです。
関わってくれた他職種の人に対しては、ご家族を代表して感謝を言うようにしましょう。
3、(後日、機会があれば)お礼を言いご焼香をあげる
エンゼルケアが終われば、もう患者さんの家に訪問する事はなくなりますが、事務手続きや支払いなどで担当した看護師が改めて訪問する場合があります。
この場合にはご家族の承諾のもと、ご焼香をあげさせてもらい、再度お礼をいうようにしましょう。
4、代金の支払い方法を確認する
冒頭に解説したようにエンゼルケアは公的保険の対象外なので、基本的にはご家族に実費を請求することになります。
しばらくはご家族もバタバタしているので、支払い方法の確認は少し間が空いた2~3週間後を目途に行うのが適切です。
管理者が代わりにやってくれる場合もありますが、担当した訪問看護師が訪問して集金を行う場合もあります。
まとめ
今回はエンゼルケアのポイントを基礎から解説しました。
長く訪問看護を利用していた患者さんであれば、感情移入することで動揺してしまってエンゼルケアに集中できない事もあります。
ただ、この状況でご家族はもっと動揺しているはずなので、看護師はプロとしてやることはしっかりとこなす必要があります。
訪問看護においてのエンゼルケアの難しいところは、これとこれが看護師が担当で、これとこれがご家族の担当という風にはっきりと役割があるわけではありません。
基本的には看護師が全ての処置を行い、必要に応じてご家族の手を借りるというようになりますが、ご家族としてはエンゼルケアを手伝ったという事が肉親と過ごす貴重な時間でもあるので、役割分担するときは臨機応変に対応しましょう。
エンゼルケアは訪問看護師は精神的にも非常に気をつかう仕事なので、はじめは先輩と同行して実践で経験を積みながら少しずつ覚えていくようにしましょう。
ご家族が患者さんとの最期の時間を有意義に過ごせるようにサポートしてあげる気持ちが何よりも大切です。
このブログでは訪問看護に関しての情報を発信しているので、訪問看護の仕事が気になる方は関連記事もご確認ください。