訪問看護師のまおつんです。
訪問看護では病棟勤務と同じように、患者さんの状態を把握するための基礎的な作業として、問診・視診・聴診・触診・打診があります。
今回はこの中でも重要な「視診」について、現役の訪問看護師である私が詳しく解説していきます。
視診はフィジカルアセスメントの中でも重要な位置づけとなっているので、スキルをしっかり習得して現場で活かしてくださいね。
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視診を行う時のポイント
視診は患者さんの様子や変化に気付く重要な仕事です。
訪問看護においての視診は、患者さんの状況だけではなく、患者さんの自宅の様子などからも新しい気付きがあるため、病棟勤務とは一味違った方法が必要になります。
訪問看護の視診の時に絶対に押さえておくべきポイントは以下の通りです。
2、十分な明かりを確保する
3、患者さんの羞恥に配慮する
4、関係者に正しく報告・共有する
これらのポイントについて、ひとつずつ解説していきます。
目的意識を持って観察する
視診は重要な仕事という話は冒頭にしたとおりですが、患者さんをただ漠然と観察するのではなく、患者さんの訴えや症状に応じて目的意識を持って観察するようにしましょう。
例えば、患者さんから「息が苦しい」という訴えがあった時、その患者さんを観察し「ぜーぜーと息をしている」「顔が赤い」などの情報を読み取り、症状と関連付けて視診を行います。
とにかく患者さんのことを見ようとがむしゃらに観察したくなる気持ちは分かりますが、患者さんの「痛い」「苦しい」などの訴えから診るべきポイントを絞って視診を行うようにしましょう。
十分な明かりを確保する
訪問看護は患者さんの家でケアを行うのが基本なので、意外と重要になるのが明かりです。
日中の家の中では視診に十分な明かりが確保されていない場合が多いので、ペンライトや懐中電灯などの照明器具があると非常に助かります。
病棟勤務ではこれらの機器が備わっているのであまり困る事はないので、訪問看護ならではのポイントといえます。
訪問看護で役に立つ便利グッズは関連記事でも紹介しているので、合わせてご確認くださいね。
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患者さんの羞恥に配慮する
患者さんは誰しも自分の体をじっくり観察されることに対して羞恥心があります。
そのため患者さんの羞恥心には十分配慮した視診が必要で、視診したい患部以外の部分に関してはタオルなどで隠したりする気遣いをしましょう。
看護師は多くの患者さんと対面しているので患者さんの体を観察する事には慣れていますが、患者さんからしてみれば、あなたはたった一人の看護師である事を意識するようにしましょう。
関係者に正しく報告・共有する
患者さんの指針によって、皮膚疾患や発疹などが発見される場合があります。
この時には患部がどのような状態であるのか、正しい情報をお医者さんなどへ報告・共有する必要があります。
特に皮膚疾患や発疹の以外の症状にも、患者さんの顔色や口唇色が急激に悪くなった場合や、急に力が入らなくなるなどの脱力症状が見られた時にはただちにお医者さんへ報告し指示を仰ぐようにしましょう。
視診でみられる異常や疾患など
適切な視診を行う事で患者さんの様々な状態を知ることが出来ますが、主に見られる疾患や異常は次のようなものがあります。
在宅の患者さんに多い皮膚の異常
・褥瘡(じょくそう)
・帯状疱疹(ほうしん)
・体部白癬(はくしん)
・皮膚裂傷
見逃しやすい皮膚疾患
・摩擦や熱による水疱
・丹毒(たんどく)と蜂窩織炎(ほうかしきえん)
・初期の褥瘡と体部白癬
表情や体の動きの異常
・瞼が閉じない
・口角が下がる
・食事が飲み込めない
・力が入らない
・歩く時に足を引きずる
・動く時に痛そう
これら気付いた場合は、患者さんへ追加で問診などを行い適切な処置をしたり、場合によってはお医者さんへ報告するようにしましょう。
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具体的な視診のコツ
ここからは実際に視診を行う時のコツについて解説していきます。
具体的な視診のコツは以下の通りです。
1、顔色を見て表情の変化を確認する
2、姿勢や動きを確認する
3、自宅の様子を確認する
この3つの点をおさえて視診を行うようにしましょう。一つずつ解説します。
顔色を見て表情の変化を確認する
患者さんの顔色を伺うのは非常に有効な手段です。
顔をよく観察し、目の焦点がしっかり定まっているかなどをまずは確認します。
患者さんは体調が悪かったり不安な様子があると、何かしらの表情となって顔に出ます。
また、いつもと違う点があれば注意しながら観察します。
患者さんの顔をよく観察する事が視診の第一歩です。
姿勢や動きを確認する
訪問看護では、患者さんの普段の様子を観察しておく事が重要ですが、いつもと違う様子にも素早く気付く事もまた重要です。
例えばいつもは横になっている事が多いのに、その日だけは椅子に座っている状態であったり、座っていても座り方がいつもの違っているなど細かい観察にによって視診を行います。
必要に応じて患者さんにその理由を聞いてみて、体調や具合の悪さなどを判断しましょう。
患者さんに見られる症状と考えられる疾患を以下の表にまとめました。
上の表はあくまでも症状から見て取れる考えられる疾患ですが、緊急性が高いと思った場合にはすぐに救急車を呼んで病院へ行ってもらうなどの提案をしましょう。
自宅の様子を確認する
訪問看護特有の視診ですが、患者さん家の様子も良く見ておきましょう。
家の状態を見ることで患者さんの様子を知ることもできできます。
ここでのポイントは、「○○だから△△かもしれない」と疑ってみることです。
例えば、「いつもの湯呑がない」ということに対して「もしかしたら体が動かないのかも…」や「水分を取る時になにか問題があるのでは…」などと関連付けて観察します。
もちろん「たまたまだよ。」と患者さんから言われる事もありますが、その時の返答のしかたや言葉遣いなどからも患者さんの様子を伺う事もできます。
視診の時の「こんなときはどうする?」
視診をする時に確認することができた患者さんの様子について、そのケーススタディと対処方法について解説します。
チアノーゼがある
患者さんお口唇や爪が白っぽくなっている、または紫色になってチアノーゼが見られる場合、貧血や低酸素状態が疑われるので、バイタルサイン、出血、眩暈などの有無を確認しましょう。
緊急性が高いと判断した場合、すぐにお医者さんへ報告するか、救急車を呼ぶなどの対応も必要です。
もともとヘモグロビンが少ない人はチアノーゼにならないので、「チアノーゼが出ていないから酸素量は問題ない」と早計に判断することのないように注意しましょう。
ばち状指、扁平爪、スプーン爪がある
患者さんの指や爪がばち状指、扁平爪、スプーン爪になっていることが確認出来た場合は、低酸素状態や貧血が疑われるので、医師に相談のもと在宅酸素処置を行うか投薬をするか判断を仰ぎましょう。
爪や指先から様々な病気のサインを見る事が出来るので、日頃から色や形、状態を良く観察するようにしておくことが大切です。
また、爪が長期間切られていない場合や、汚れている場合は、生活習慣が乱れている可能性もあるので、これを是正するために訪問看護の日程を変更したりする対応も考える必要があります。
この時に訪問看護ステーションのお医者さんや管理者へ事情を説明し提案してみるのも良いと思います。
皮膚の外傷や皮下出血がある
患者さんの皮膚に外傷があったり、皮下出血がある場合は転倒したりどこかにぶつかって怪我をした可能性があります。
患者さんが過ごす自宅は患者さんにとっては居心地がいい空間であっても、私たちから見ると物が多すぎて意外にもスペースが限られている場合も多くあります。
時には看護師が座る場所がなくて、やむを得なく患者さんのベッドに座らせてもらう場合もあるので、作業環境は病棟のようにはいきません。
患者さんに外傷などがある場合は、その理由を尋ねて必要に応じて周辺を整理整頓をするようにしましょう。
時にはご家族の協力を得て、家具の位置を変更するなどの提案もすると良いと思います。
もちろん、その場合は患者さんに許可をもらってから撮影しましょう。
まとめ
視診によって患者さんの状態を把握する方法やコツなどを解説してきました。
実際の訪問看護の現場では教科書の通りにいかないことや、時には失敗を経験する事もあります。
訪問看護師のまおつんです。今回は私が過去に訪問看護でやらかしてしまった失敗について赤裸々に語ります。今でも時々恥ずかしい失敗をするので、今回はそんな失敗談も紹介していきます。まおつん皆さんはわたしの失[…]
そんな訪問看護ですが、わたし個人的には病棟勤務よりも患者さん一人ひとりと向き合う訪問看護のほうがやりがいがあると思っています。
今回の記事で視診のやり方をしっかり学習し、ぜひ現場で役に立ててみてください。