訪問看護師が終末期ケア(ターミナルケア)で気を付けるべき点は?

訪問看護師のまおつんです。

今回は患者さんが終末期に差し掛かっている時に訪問看護師が気を付けるべき点やケアの方法について解説していきます。

 

終末期ははっきりとした定義はなく、患者さんに一番近い現場の看護師がそれを感じて適切なケアを行うものです。

「こういう状況だから終末期」だと一概に判断できないところが難しいところでもあります。

そのため、患者さんのご家族と相談しながらケアを変えていく必要があり、回復を目指すためのケアとは違った工夫が求められることをはじめに理解しておきましょう。

まおつん
終末期のケアを「ターミナルケア」とも呼びます。
「Terminal」は終わりという意味があります。
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終末期のケアで気を付けるべきポイント

終末期のケアで必ず押さえておかなければいけないことは、患者さんの行動範囲を看護師が決めるのではなく、患者さん本人の判断にゆだねるという点です。

終末期にはADLの低下が著しいケースがほとんどなので、患者さんに無理をさせないようにしたいと考えるがゆえに、

「もうトイレに自分で行くのは無理ですね」

「外に出るのは無理ですよ」

「家でゆっくりしましょうよ」

などと患者さんの行動を制限しがちです。

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しかし、終末期の患者さんは自分の体の状態を自分自身で良く知っているため、頭ごなしに「ダメ」と言うのではなく、「こういう方法はどうですか」などと違う視点で提案するようにします。

人生の最期の過ごし方を看護師が勝手に決めないようにしましょう。

 

また、「終末期」という言葉は患者さんとご家族の前では使わないようにしましょう。

最初にも言ったように、終末期の定義はしっかりと決まっていません。

患者さんやご家族の立場に立った時、相手がどう感じるかを意識して言葉を選ぶようにするのが訪問看護師として必要な気遣いです。

 

こんな時はお医者さんに相談して

患者さんの行動範囲を看護師が勝手に決めないようにという話をしましたが、患者さんの希望が明らかに本人にとって良くないことについてはお医者さんに相談してください。

具体的な例としては、尿道カテーテルが入っている患者さんが「最期くらいは管の無い状態で過ごしたい」希望をいってきた場合です。

こういう場合にはまずお医者さんと相談して、ご家族が頻繁におむつを交換するなどの条件やリスクについてご家族ともよく話をしながら決める事があります。

最終的にはお医者さんの判断に頼ることになりますが、ご家族とのやり取りは訪問看護師がメインになるので、分かりやすく説明したうえで納得してもらうようにしましょう。

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こんな時はご家族に相談して

終末期の患者さんは状態の変化が日に日に違います。

そのため、その日あった事や状態の変化についてはその日のうちにご家族に伝える事が大切です。

患者さん本人から聞いた要望を家族に伝える事はもちろんですが、ケアマネージャーやヘルパーさんにも伝えておくようにしましょう。

おすすめな方法は、患者さんの家に共有ノートをひとつ作っておき、他のの訪問看護師やケアマネージャーなどと情報を共有する方法です。

共有ノートは以下のような事を記入します。

・ケアを行った日(訪問した日)
・患者さんの状態
・ケアの内容
・患者さんの希望
・次回のスケジュール
・ご家族からの連絡事項 など

最近はこれらの情報がタブレット等で簡単に共有できえうようになっていますが、ご家族が連絡事項や申し送りをしたい場合には彼らの心理的負担が大きいため、そういう時にはノートが活躍します。

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終末期の日常生活をサポートするためのポイント

患者さんの終末期に注意するべきポイントは以下の通りです。

1、食事は食べたい時に食べられるものを
2、口腔内の乾燥に気を配る
3、水分補給のサポートは工夫する
4、清潔管理は本人の希望に従う
5、歩行器やポータブルトイレは無理強いをしない

これらについてひとつずつ解説していきます。

 

1、食事は食べたい時に食べられるものを

終末期の患者さんへは、栄養にこだわるよりも、患者さん本人が食べたいといっているものを食べさせてください。

果物やアイスなどを準備しておくと出してすぐに食べられるためおススメです。

あまり多くの量は食べられないので提供する時の量にも注意しましょう。

 

2、口腔内の乾燥に気を配る

終末期の患者さんは、食事や水分を飲み込むのが負担になる場合があります。

唾液の分泌が少なくなる事で口の中が乾燥し、汚れもたまりやすくなるので、何かを食べる時は口腔ケアを積極的に行うようにしましょう。

口腔ジェルで汚れを浮かせてから、固く絞ったスポンジなどでふき取るようにすることがコツです。

 

3、水分補給のサポートは工夫する

水分補給のために以下のような工夫をしましょう。

・お椀など口の広い容器を使用することで、上を向かずに飲むことができる
・看護師がサポートする時は、口に流し込まないように患者さんのペースに合わせる
・弱い力でも飲めるようにストローを短く切る

患者さんの状態によってさらに工夫は必要ですが、上記のような工夫をすることによってサポートが少なくても患者さん自身で好きな物を飲むことができます。

 

4、清潔管理は本人の希望に従う

入浴や洗髪などについては患者さんにとって負体力的な担になることが大きいです。

そのため患者さんが望まない事を無理してやってあげる必要はありません。

患者さん本人の意思を尊重して「やらない」という選択肢も考慮しておきましょう。

 

5、歩行器やポータブルトイレは無理強いをしない

終末期は日によって状態の変化が躊躇です。

そのため急に歩行器が使えなくなったりする場合もあるため、安易に勧めるようなことはしないようにしましょう。

また、ポータブルトイレは患者さんにとっても負担が少なく便利ですが、患者さんによってはポータブルトイレを毛嫌いする場合や、むしろおむつをするよりもこっちが良いという人など様々です。

本人の希望を聞いてそれに合った提案が必要なことは言うまでもありません。

 

排泄介助については関連記事にまとめてあるので参考にしてみてください。

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こんな時はどうしたらいい?

終末期のケアは通常の患者さんよりも特別な工夫が必要という話をしてきました。

そんな中でも「こんな時はどうしたらいい?」という場面があります。

これらのポイントや対処法についていくつか事例を解説していきます。

 

1、本人がどうしても歩きたいと言った場合

「歩きたい」という患者さんの意思は尊重してあげたいものです。

そのため看護師にできることとしては、患者さんお杖や歩行器になったつもりで患者さんをサポートしてあげることです。

この時ばかりは「それだと体に無理がかかりますよ」などとアドバイスをしなくても大丈夫です。

あくまでも患者さんが歩きたいように歩かせてあげる事が重要です。

 

2、ベッドで動く力がなくなった場合

終末期の患者さんへは褥瘡予防のためのポジショニングをしたくなりますが、この体勢では患者さん本人が動きたい時に動けなくなるのが難点です。

そのため患者さんの状態を考慮したうえでマットレスを使う事も検討しましょう。

多少、褥瘡のリスクはあっても患者さんが過ごしやすい環境を作ってあげるのが訪問看護師の役割です。

 

3、車椅子を使いたいと言われた場合

「車椅子を使いたい」という要望は終末期の患者さんから時々聞かされます。

もちろん、車椅子を使うのが難しい場合であったとしても、無理だと思って勝手に返却してしまったり片付ける事は患者さんの心理的にも良くないので止めておきましょう。

車椅子があることが患者さんにとって精神的な希望を与える場合がありますが、勝手に片付けてしまうと患者さんやご家族がショックを受ける場合があるので勝手な判断は禁物です。

 

4、飲み込む力がないが、何か食べたいと言われた場合

終末期には飲み込むことが難しい患者さんが多いです。

そのため、患者さんが食べ物を口にしてもすぐに吐き出してしまう事もありますが、「なにか食べたい」と言った時には、吐き出すことを承知の上で食べさせてあげましょう。

すぐに吐いたとしても、患者さんは味は感じる事が出来ますし、本人の意思を尊重したことになります。

 

5、その他

患者さんはひとつの病院との付き合いが長い場合が多く、馴染みのお医者さんがいるケースもあります。

既往症の治療がすでに終わってもう病院に通う必要がない時であっても、患者さんとしてはその病院に関わり続けることが希望になっている場合もあります。

お医者さんに見放されたと思わせないようにするためにも、必要に応じて馴染みのお医者さんの訪問診療を提案したりしましょう。

このような提案はご家族には普通は出来ませんので、病院と患者さんをつなぐことも訪問看護師の大事な役割だと理解しておくと良いでしょう。

 

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終末期の患者さんやご家族との付き合い方

ここでは、終末期の患者さんやご家族との向き合い方について、重要なポイントや心がけるべき点について5つ紹介します。

【終末期ケアで心がけるポイント】
1、コミュニケーションに時間を使う
2、疼痛管理に注意する
3、ご家族へのサポートも
4、宗教や文化的な背景を尊ぶ
5、自分のメンタルケアも忘れずに

 

1、コミュニケーションに時間を使う

終末期の患者さんやご家族と接するときには、コミュニケーションに時間を割くようにしましょう。

患者さんやご家族のに寄り添いながら、会話を通じて患者さんの望む最期を聞き出し、それに沿ったケアを提供することが目的です。

また、終末期の患者さんやご家族は、不安や恐怖、悲しみなどのとても複雑な感情を抱えています。

適切なタイミングで傾聴することが必要です。

 

2、疼痛管理に注意する

終末期の患者さんは、慢性的な疼痛や身体的な不快感を感じることがあります。

看護師は、患者さんの痛みや不快感を詳しく聞き出し、適切な薬物療法や緩和ケアを行うことが必要です。

また、痛みや不快感の程度やタイミングに合わせて、薬剤の投与量や投与頻度を調整することも大切です。

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3、ご家族へのサポートも

終末期の患者さんが家族と共に過ごす時間は、家族にとっても非常に貴重なものです。

看護師は、患者さんの望む最期を支えるために、家族にも真剣に寄り添いサポートすることが必要です。

また、家族がケアをサポートするときには、看護師がご家族に対して適切なアドバイスをすることも大切です。

患者さんの状態に合わせた適切な介護方法や、患者さんの痛みや不快感を軽減する方法が含まれます。

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4、宗教や文化的な背景を尊ぶ

患者さんや家族の宗教や文化的な背景によって、最期のケアに対する考え方や望みが異なることがあります。

看護師は、患者さんや家族の宗教や文化的な背景をよく考え、それに合わせたケアを提供することが大切です。

また、宗教的な儀式や祈りについても、患者さんや家族が望む場合には、できる限り対応するように心がけましょう。

 

5、自分のメンタルケアも忘れずに

終末期の患者さんや家族と接することは、看護師にとっても心理的な負担が大きくなります。

患者さんや家族との関係を良好に保ち、適切な最期のケアを提供するためにはセルフケアが欠かせません。

適切な休養や食事、ストレスを解消する時間を確保し、心身ともに健康であることが大切です。

また、同僚や上司と話し合い、情報共有や励まし合いを行うことも、自己ケアの一環として重要です。

 

 

まとめ

今回は終末期ケア(ターミナルケア)のポイントについて解説しました。

冒頭でも解説したように、終末期の定義は曖昧なのでケアにはより一層の注意が必要です。

患者さんの人生の最期を全力でサポートできる看護師が一人でも多くいてくれるようになれば良いという願いでこの記事を書きました。

まおつん
患者さんの気持ちになって終末期ケアができるようになってくださいね。

このブログでは訪問看護に関する役に立つ情報などを解説しているので、気になる方は他の記事もご確認ください。