訪問看護師のまおつんです。
学生の頃に一生懸命勉強していても、いざ入職して現場に入ると忘れてしまうものなんですよね。
国家試験のために徹夜して勉強したのに、試験が終わった途端に全部忘れる現象って何なんでしょうか。笑
そんな人のために、今回は訪問看護の現場で使える「フィジカルアセスメント」について実例を交えながらじっくり解説していきます。
フィジカルアセスメントと関連の深い「バイタルサイン」については、関連記事で解説しているので参考にしてください。
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フィジカルアセスメントとは
「フィジカルアセスメント」は英語で「Physical Assesment」といい、直訳すると「身体評価」となります。
患者さんの「苦しい」「痛い」など直接的な訴えから主観的に判断した情報と、バイタルチェックなどの結果から得られた客観的データからの情報を総合し、患者さんがどのような状態にあるかを評価したものです。
・主観的な情報:患者さんの訴えなどの情報
・客観的な情報:バイタルチェックなどから得られたデータ情報
フィジカルアセスメントは、主観的・客観的の両方からの視点を考えて総合的に患者さんの状態を把握する事が目的です。
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フィジカルアセスメントの基本は、患者さんの「いつもと違う」を感じること
フィジカルアセスメントにおいて重要な事は、患者さんの「いつもと違う」「なにか変だ」を敏感に感じ取る事です。 訪問看護では頻繁に患者さんの元へ通ってケアをするので、担当する看護師が一番患者さんの事を把握しています。
日々、患者さんと接するなかで「今日はいつもと違う」と感じた場合は、フィジカルアセスメントの基本に立ち返ることを常に意識しておきましょう。
フィジカルアセスメントは患者さんの負担が少ない順番から
2、視診:体の状態を目視で確認する
3、触診:体に触れて確認する
4、打診:体の一部を軽く叩いて確認する
5、聴診:体の内部の状態を音で確認する
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フィジカルアセスメントの実例
フィジカルアセスメントは主観的・客観的に判断するという解説をしてきましたが、実際の現場ではどのように活かすのか、例を挙げて解説していきます。 ちなみにここに登場する患者さんは、私が同僚などから聞いたりした事例をもとに、多少内容を編集しています。
その都度、正しいフィジカルアセスメントと処置をして、少しでも不安を感じたら先輩か上司に相談しましょう。
フィジカルアセスメントの実例1
フィジカルアセスメントの実例1では、以下の患者さんについて【看護師が考える事】と【看護師が行った事】を見ていきます。
年齢:80代の女性
住居:ひとり暮らし
現在:慢性心不全
既往症:敗血症
状態:尿道カテーテル挿入中、食欲は問題なし
・ベッドに座っている状態
・普段から口数が少ないAさんが「来て欲しい」というのは、実は具合が良くないのかも知れない。
・視診:顔が赤くなっていて、呼吸が苦しそう
・問診:「苦しい?」と尋ねたが「苦しくない」との返答
・「苦しくない」と言うのは、我慢しているからなのか、感覚が鈍っているのか分からない。
・横になると余計に苦しいから座っているのか。
・呼吸器官か循環器官に問題がありそう。
・脈拍の測定:脈がかなり速く、120回/分前後ある
・脈に不整はないので、循環動態は保たれている。
・過去に敗血症にかかっており、顔面紅潮と発汗を見ると*ウォームショックの可能性がある。
・血圧が急激に下がると意識を失う危険がある。
・SpO2の測定:89%
・呼吸の測定:30回/分
・呼吸が早いので酸素を取り込もうとしているが、十分に取り込めておらず、心臓に負担が掛かっている。
・尿の量の確認:800mL/10時間
・尿の性状:色が濃く、混濁している
・慢性心不全のため利尿薬を服用しているが、今日は尿の量が少ない。
・尿の濁り具合から尿路感染を起こしているかも知れない。
・呼吸音の聴診:副雑音はない
・呼吸器感染の可能性は低いと考えられる。
・尿路感染の可能性が高くなってきた。
・背中と腰の触診・打診:痛みはない様子
・腎臓にまで至っていないと思われる。
・血圧と体温の測定:血圧110/60mmHg、体温は37.6℃
・血圧は若干低めだが、循環動態は保たれている。
・熱はそこまで高くないが、尿路感染であればさらに上がると考えていい。
・この場で抗菌薬の点滴が出来るが、ひとり暮らしなので見守る人がいないのが不安。
・心臓への負担も考えて、救急車で病院に行くようにしてもらおう。
フィジカルアセスメントの実例2
フィジカルアセスメント実例1と同じように、以下の患者さんについて【看護師が考える事】と【看護師が行った事】を見ていきます。
年齢:80代の男性
住居:奥さんとの2人暮らし
現在:喘息、高血圧、アルツハイマー型認知症
状態:近所にはひとりで出かける事が出来る
・苦しそうにしている様子は全くなく、あちこち動き回っている。
・顔色は問題なく、いつものBさんといった様子。
・娘さんのいうように、喉からぜーぜーと音はしている。
・呼吸器の症状は出ているが、動いている様子を見ると酸素は十分に供給されている。
・SpO2の測定:95%
・呼吸の測定:15回/分
・SpO2の結果から今のところ酸素量は問題ない。
・体温の測定:35.6℃(正常)
・脈拍の測定:100回/分(正常)
・血圧の測定:血圧125/77mmHg(多少高いが、いつもと変わらない)
・痰が絡むことや呼吸の変化はたびたび起こるが、全身への影響は無いと考えられる。
・この症状が引き起こしているのは肺のどの部分だろうか。
・呼吸音の聴取:左上葉に低調性連続性副雑音がある事を確認
・左上葉に分泌物が溜まっているが、低調性なので気道を塞ぐ可能性は低いと考えられる。
・処方中である気管支拡張薬を飲んでもらい様子を見ても大丈夫だろう。
・娘さんには、いつもよりも注意深くBさんを観察してもらうようにお願いをする。
フィジカルアセスメントのまとめ
今回紹介した2つの実例のように、フィジカルアセスメントは「主観的な情報」と「客観的な情報」の両方から患者さんお状態を把握することが重要です。
また、患者さんのご家族からの情報も非常に貴重な情報源となるため、訪問看護で訪問する時は患者さんだけではなく、ご家族の話もよく聞いておく事も大切です。
このブログでは訪問看護のリアルな仕事について情報を発信しています。もし興味があれば関連記事もご覧ください。