訪問看護師は入浴介助のコツと留意点をおさえよう!

訪問看護師のまおつんです。

相談者
訪問看護においての入浴介助の方法について教えてください。

入浴介助は訪問看護の現場においてはかなり回数が多い業務のひとつです。

今回は入浴介助のコツと留意点について解説していくので、しっかり学んで現場で活かせるようにしましょう。

 

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入浴介助で必ずおさえてほしいポイント

入浴をすることで訪問看護を利用する患者さんにとって、大きな健康的な効果が期待できます。

その一方で正しい入浴をしないと、上記のようなリスクになることもあるので十分な注意が必要です。

 

訪問看護師が入浴介助を行う前に必ず押さえておいて欲しいポイントは以下のとおりです。

1、お湯は40℃前後にして、入浴時間を5~10分程度にする
2、心負荷のリスクがある時は、半身浴にする
3、食後の入浴は避ける
4、入浴前後の水分補給を忘れずに

これらのポイントについて解説します。

 

1、お湯は40℃前後にして、入浴時間を5~10分程度にする

患者さんを入浴をさせる時のお湯の温度は40℃前後が適切です。

たまに熱いお風呂が好きという方もいますが、心拍数の増加や血圧の上昇などのリスクをおさえるためにお湯の温度は適切に保つようにしましょう。

また、湯温が高すぎると入浴後の乾燥が強くなるため、ドライスキンの方であれば38℃くらいを目安に調整しましょう。

 

2、心負荷のリスクがある時は、半身浴にする

心臓に負荷をかけてはいけない患者さんの場合は、半身浴をすすめましょう。

半身浴であっても体を清潔に保つことが出来ますし、血流が良くなる効果も十分に期待が出来ます。

 

3、食後の入浴は避ける

食事後の入浴は血圧が急上昇するリスクがあるので、食事をする前に入浴をするようにしましょう。

また、入浴中は急に立ち上がらないようにしましょう。

 

4、入浴前後の水分補給を忘れずに

入浴前と入浴後は脱水になりやすいので水分補給は必ずしましょう。

症状が出ていなくても「隠れ脱水」という状況になっている可能性があるので、入浴の前後にはコップ1杯の水分を摂るようにしましょう。

 

まおつん
入浴介助で気を付けるポイントは理解出来ましたか?
次から具体的なコツについて解説します。

入浴介助を行う時のコツ

ここからは入浴介助の具体的なコツについて解説していきます。
以下のポイントをしっかり理解しましょう。
1、浴室と脱衣所の温度差は少なくする
2、浴室での転倒を予防する
3、体を洗う時には寒さを感じさせないようにする
4、入浴後のスキンケアを忘れないようにする
5、後片付けも行う
これらについても一つずつ解説していきます。
1、浴室と脱衣所の温度差は少なくする
浴室と脱衣所の温度差があり過ぎると、収縮していた血管が一気に拡張して脳貧血になるヒートショックを起こしやすくなるので注意しましょう。
入浴後に寒い思いをするのが嫌で断られるケースもあるので、温度差については十分に気を配って管理する必要があります。
少しでも寒さを感じさせない工夫としては、浴室で体をしっかり拭き上げる事も大切です。
2、浴室での転倒を予防する
浴室での転倒はかなりのリスクがあるので、床にぬめりが無いかを事前に確認するようにしましょう。
できれば滑りにくい素材の「すのこ」を使って入浴介助を行うと、同時に床と浴槽までの高さも稼ぐことが出来るので一石二鳥です。
3、体を洗う時には寒さを感じさせないようにする
体を洗う時には患者さんに寒さを感じさせないようにするためには、体を洗っている時には洗面器にお湯を張り足湯をしながら体を洗うようにしましょう。
また、背面を洗っている時は患者さんにシャワーを持ってもらい自分で寒い部分にお湯をかけながら体を洗うようにすると良いです。
とにかく患者さんに寒いと思わせないような工夫が必要です。
4、入浴後のスキンケアを忘れないようにする
入浴後は気化熱作用で体が乾燥してしまうため、入浴後はできるだけ早くクリームなどで保湿をしましょう。
乾燥を防ぐためには、浴室で体を拭いてからその場で塗っても大丈夫です。
5、後片付けも行う
浴室を使った後は片づけも行いましょう。
特にマットなどはカビが発生しやすいので、水で良く流して風通しの良いところで乾燥させるようにしましょう。
浴室については十分な換気を行いましょう。

入浴介助でこんな時はどうする

入浴介助をしている時には「こんな時はどうする?」と悩んでしまう場面に遭遇します。
いくつか具体的な例をあげて解説をしていきます。
1、浴槽をまたぐのが難しい場合
患者さんが浴槽をまたいで入浴することが難しい場合は、ご家族と相談して浴室の壁に手すりを設置することを検討しましょう。
簡易的な方法としては背もたれがあるタイプのシャワーチェアを浴槽の横に設置し、看護師が押さえてそこを掴んでもらうようにします。
2、浴槽から立ち上がるのが難しい場合
入浴後に立ち上がって浴槽から出る時に、患者さんが立ち上がる事が難しい場合は、シャワーチェアを浴槽の中に沈めて、そこから出てもらうようにしましょう。
シャワーチェアは浴槽内で動きやすいので転倒してしまわないように、しっかりと支えてあげるようにサポートします。
3、気管切開をしている場合
気管切開部にお湯が入るのを防ぎたい場合は、美容師で使っているネックシャッターがおすすめです。
首の周りに密着してくれて撥水もするので、切開部にお湯が入らないようになります。
価格も1,500円程度から購入できるので、訪問看護ステーションで購入を検討してみましょう。

4、ギブスをしている場合
ギブスを濡らさないようにするには、食用のラップで巻き付けるようにして保護します。
さらにその上からタオルやビニールで覆う事でお湯に濡れる事を防ぐ事ができます。
5、ドレーンを留置している場合
ドレンを留置している場合は、基本的に全身の入浴は避けた方が良いです。
入浴したい場合は、ドレーンが抜去されていることや手術後48時間以上経過されていることなどの確認が必要なので、まずは担当のお医者さんへ確認しましょう。
ドレーン挿入部の保護方法などのアドバイスに従って保護するようにします。

入浴が拒否されてしまう場合のケーススタディ

患者さんによっては入浴することを拒否される方もいらっしゃいます。

患者さんが嫌がっているのに無理に入浴をさせる必要はありませんが、衛生的にも入浴をすることのメリットが大きいので、できることであれば入浴してもらいたいです。

このような場合においては、患者さんは以下のようなことを感じている場合がほとんどです。

これらのケーススタディとその対応方法について一つずつ解説していきます。

1、入浴の必要性を感じていない。または、自分の衛生状態を客観的に理解できていない。
2、衣類の着脱や入浴の方法が分からない。
3、自分で入浴出来ると思っており、介助の必要性を感じていない。
4、入浴に対してネガティブなイメージを持っている。
5、その他の理由で入浴したくないと思っている。

 

1、入浴の必要性を感じていない。または、自分の衛生状態を客観的に理解できていない。

思考力や判断力が低下する事で、入浴が必要と思っていない方は結構いらっしゃいます。

そんな患者さんにはトイレに行ったついで、用事で立ち上がったしたついでに浴槽に行くように言ってみましょう。

「では次はお風呂ですね。」「薬を塗るのでいったん体をキレイにしましょう。」などと言って自然に声を掛けるようにしましょう。

本人が嫌がっているのにも関わらす、無理に入浴をさせるのは避けたいので、あくまでも自然な流れで浴槽に行ってもらうようにするのがコツです。

 

2、衣類の着脱や入浴の方法が分からない。

この場合の患者さんは、次は何をどうするのかを具体的に伝えるようにしましょう。

服を脱ぐ動作については「まずは右の靴下から脱ぎましょう。」「右腕の袖を脱ぎますね。」などと明確に行動を示してあげます。

入浴にサポートが必要な患者さんの場合は「次はこれをこうします。」などとやっている事を声掛けしながら行います。

看護師が優しくサポートしてあげることでお風呂に入るのが楽しみになってくれる患者さんもいます。

 

3、自分で入浴出来ると思っており、介助の必要性を感じていない。

入浴に関しては他人に助けてもらう事を嫌っている患者さんもいます。

そういう時には無理に入浴介助をしようとはせず、タオルやシャンプーなどを揃えたり、マットやシャワーチェアーなど入浴に必要なモノなど準備をします。

「なにか困った事があったら言ってくださいね」と声を掛けて待機するくらいの気持ちで大丈夫です。

 

4、入浴に対してネガティブなイメージを持っている。

入浴に対してネガティブな印象を持たれている場合は、入浴させることが難しいケースもあります。

「寒い思いをするのが嫌だ」「シャワーの水圧が痛い」など、ほんの些細な事でお風呂を嫌う方もいるので、そういう場合は浴室の温度やシャワーの水圧に十分注意するほか、「これからシャワー掛けますね」などと声を掛けながら行うと良いです。

脱衣所の温度を気にしたり、積極的に声掛けをする事で入浴にポジティブな印象を持ってもらう事ができます。

 

5、その他の理由で入浴したくないと思っている。

体に痛みを訴えている場合は、「温めたら良くなるかも知れないのでお風呂に入ってみましょう。」と提案をしてみると良いです。

「お風呂が面倒くさい」などと言われた場合には、「体をキレイにして外に行くと気持ち良いですよ。」などと言って入浴をすすめると上手くいく場合もあります。

入浴については患者さんと看護師の信頼関係が出来ていないと断られるケースもありますが、爪を切ったり清拭をするなどのステップを踏みながら少しずつ信頼関係を築く事で入浴もできるようになる事もあります。

まおつん
決して無理強いはせず、まずは患者さんとの信頼関係を築くことから始めましょう。

 

まとめ

今回は入浴介助の方法について解説しました。

体をキレイにする事で心が前向きになり、患者さんにとってもいい事ばかりですが、信頼関係がないと介助をするのが難しい作業でもあります。

浴室の温度や入浴後のスキンケアなど、気を遣う部分は非常に多いですが、それでも入浴後には「気持ちよかった」と言ってもらえる事も多いです。

ぜひ入浴介助をマスターして信頼される訪問看護師になってください。

 

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