訪問看護の基本的な褥瘡ケアとアセスメントを知っていますか?

訪問看護師のまおつんです。

相談者
褥瘡ケアと基本的なアセスメントのやり方を教えて下さい。

訪問看護の褥瘡ケアにはそれなりのコツが必要で、アセスメントをするには基礎的な知識が要求されます。

今回は褥瘡ケアの重要なポイントや褥瘡アセスメントシートについて解説していきます。

 

訪問看護で役に立つ「超」アセスメントシートについては関連記事で詳しく解説してあるので、合わせて読んでみてくださいね。

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褥瘡のアセスメントシートをすぐに使いたい方は、日本語と英語で書かれたデータを下記のリンクから無料でダウンロードすることができます。

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まおつん
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褥瘡ケアで必ずおさえてほしいポイント

そもそも『褥瘡』とは体の一部に長期間にわたって力が加わることで、骨と皮膚表層の間の軟部組織が不可逆的な阻血性障害になっている状態のことをいいます。

褥瘡のケアの基本は、『リスクを早期発見』して『早急に取り除く』ことです。

 

褥瘡ケアにおいて必ずおさえてほしいポイントは以下の通りです。

【褥瘡ケアで必ずおさえてほしいポイント】
1、少なくとも年に1度は褥瘡のアセスメントを行う
2、褥瘡発生の有無にかかわらず、発生を未然に防ぐ
3、褥瘡だけに注視せず総合的なケアを行う
これらのポイントについて一つずつ解説します。
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1、少なくとも年に1度は褥瘡のアセスメントを行う

褥瘡のアセスメントは基本的に1年に1回行うようにしましょう。

初回の訪問時はもちろん、『褥瘡対策に関する看護計画書』や、後で紹介する『褥瘡アセスメントシート』を使い、褥瘡発生のリスクを評価するのが理想です。

もちろん必要に応じてケアマネージャーとも相談しながらケアの内容を見直すことも重要です。

 

2、褥瘡発生の有無にかかわらず、発生を未然に防ぐ

現在、褥瘡の発生がみられない患者さんであっても、発生リスクが考えられる場合は未然に防ぐ予防計画を立てて必要なケアを行います。

ADL/IADLが低い患者さんは、寝たきりになる時間も多く褥瘡のリスクがぐっと高まります。

病気の発生の有無にかかわらず、事前に予防することも看護師としての務めです。

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3、褥瘡だけに注視せず総合的なケアを行う

褥瘡については、予防ケアまたは、発生後のケアであっても、局所だけに注目せず、ベッドや椅子に座るときの除圧、基本的なスキンケア、食事・栄養の管理、リハビリなど総合的なケアを行うようにしましょう。

褥瘡は総合的なケアによって予防もできるので、全体的に俯瞰して患者さんの状態をアセスメントするようにしてください。

まおつん
『褥瘡ケア』と『アセスメント』の両方が重要です。

 

褥瘡ケアのコツ

ここからは、褥瘡ケアのもっと具体的なコツについて解説していきます。

ポイントは以下の8項目です。

【褥瘡ケアのコツ】
1、マットレスを正しく選択する
2、時々、体位変換を行う
3、ポジショニングで安楽な姿勢を保つ
4、仙骨座りを防ぐ
5、洗浄するときは『ぬるま湯』を使う
6、筋萎縮や関節拘縮を防ぐためリハビリを行う
7、低栄養状態に注意する
8、アセスメントシートを活用する
どれも実際の訪問看護の現場では必要な知識ですので、しっかり覚えておきましょう。

 

1、マットレスを正しく選択する

患者さんの状態に合わせてマットレスを正しく選択しましょう。

上の図はマットレスを選択する時に参考にしてほしいフローチャートです。

『自力で体位変換が出来るか』『骨の突出があるか』『ギャッチアップが45°以上あるか』などの項目に当てはめてマットレスの種類を決めていきます。

 

なお、エアマットレス重さの選択に悩んだ時は軽いほうを選ぶのがポイントです。

また、できれば体圧測定器を使って体圧を測定をするのが理想的ですが、測定器がない場合は手を当てて局所圧迫がないかを確認します。

測定器を使用する場合のカットオフ値は50mmHg、褥瘡部分は40mmHgを目安にしてください。

 

2、時々、体位変換を行う

適切な体圧分散用具を使用している場合でも4時間ごとに体位変換を行うのが良いでしょう。

患者さんの状態や皮膚のアセスメントを行ったうえでタイミングや方法を決定します。

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自力で姿勢変換ができる患者さんであれば、15分ごとに姿勢を変えるようにアドバイスするようにしてください。

体感前屈、側屈、伸展によって座骨にかかる体圧を分散させることができます。

 

3、ポジショニングで安楽な姿勢を保つ

ポジショニングの目的は体圧の分散やずれ、摩擦の軽減を図ることです。

クッションや枕を使用して局所だけを浮かせるのではなく、出来るだけ広い接触面積で姿勢を保持できるようにからだ全体の安定性を意識します。

体圧分散さえできていれば、クッションなどは専用品でなくても構いません。

 

クッションは患者さんの状態に合わせて以下のような種類から選ぶのが一般的です。

タカノ製クッションから引用



ここで紹介しているタカノ製のクッションは医療用のクッションとして高い評価を得ているので訪問看護の患者さんにもぜひ勧めたい製品です。

まおつん
患者さんの状態に合わせてクッションを検討してみてください。

 

4、仙骨座りを防ぐ

高齢の患者さんに多いのが仙骨座りですが、この姿勢のままだと尾骨部に褥瘡が発生しやすくなります。

仙骨座りではハムストリングスが短縮している場合があるため、フットレストを内側に入れてハムストリングスをゆるめるようにします。

【ハムストリングスとは?】
大腿後面を形成する筋肉の総称で、大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋からなり、大腿前面を形成している大腿四頭筋と対になる筋群のことです。

『看護Roo!』から引用

ハムストリングスの短縮をゆるめることによって、骨盤が高傾位から中間位になるので尾骨部の負担を減らすことができます。

 

5、洗浄するときは『ぬるま湯』を使う

褥瘡の周りの皮膚からは滲出液や細菌、汗や皮脂などで汚染されているため洗浄剤を使ってしっかり洗うようにしましょう。

表面に付着している細菌を除去するためには、十分な量のぬるま湯で圧力を掛けて洗う必要があります。

お湯の量としては500mlのペットボトル1本分くらいを使って洗浄するのが目安です。

 

6、筋萎縮や関節拘縮を防ぐためリハビリを行う

筋萎縮や関節拘縮があるとポジショニングや座位確保ができなくなり、褥瘡の発生リスクがもっと高くなります。

そのため早期にリハビリを行い、事前に予防するようにしましょう。

 

冒頭にも解説したように、褥瘡ケアにおいて最も重要なことは、事前にできる限り予防することです。

 

7、低栄養状態に注意する

低栄養の状態だと褥瘡のリスクがぐっと高まります。

具体的な低栄養状態とは、血清アルブミン3.5g/dL以下、体重減少率がひと月に5%以上、または6カ月に10%以上、食事の摂取量が通常の半分以下を継続した場合を一般的に低栄養といいます。

 

やむを得ない場合で十分な食事を摂ることができない場合には、間食のときに高カロリーのゼリーなどで栄養摂取しましょう。

褥瘡の予防や治癒に必要な1日のエネルギー量については以下の表のとおりです。

褥瘡発生時には「たんぱく質」「亜鉛」「アルギニン」「ビタミンC」が必要になるため、意識して摂るようにしましょう。

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8、アセスメントシートを活用する

褥瘡ケアにおいて非常に重要なのが継続的なアセスメントです。

他職種の方と同じ情報を共有するためにも同じ書式のアセスメントシートを使うのが望ましいです。

アセスメントシートのフォーマットについては次の項で紹介します。

 

褥瘡アセスメントシートの無料ダウンロード

『日本褥瘡学会』が発行しているアセスメントシートを参考にして私が改良して作ったフォーマットを紹介します。

アセスメントシートの無料ダウンロードはここから

褥瘡経過評価記録

 

褥瘡経過評価記録(書き方例)

この書式をダウンロードしたい場合は、下記のリンクから無料でダウンロードすることができます。

アセスメントシートの無料ダウンロードはここから

まおつん
日本語に加えて英語バージョンも作ったのでかなりお役に立てると思います。

 

褥瘡ケアの『こんな時どうする?』

褥瘡ケアを行う時に「こんな時はどうしたら良い?」と悩むことがあります。
いくつかのケースを紹介し、その対処法につても解説します。
【褥瘡ケアの『こんな時どうする?』】
1、急性期褥瘡が発生した場合
2、患者さん本人やご家族に褥瘡への関心が薄い場合
3、褥瘡が排泄物で汚染荒れる場合
4、医師やご家族に伝えてほしい場合

1、急性期褥瘡が発生した場合

発生してから1~3週間の『急性期の褥瘡』は、どのくらいの深さまで褥瘡が浸透しているか判別が難しく、最適な治療の判断ができないケースが多いです。

このような患者さんの場合は、通常よりも意識して湿潤環境を保ちながら創面の保護をしましょう。

褥瘡のアセスメントにおいても回数を増やすなどして対処するよう検討します。

 

外用薬を使用してケアする場合は、アズノール、白色ワセリンなどを使用し、感染が疑わしい場合はゲーベンを使用するケースが多いです。

ドレッシング剤の場合は、洗浄後の清潔な状態でポリウレタンフィルムを使用して保護し、1週間に1度以上のペースで交換しましょう。

 

2、患者さん本人やご家族に褥瘡への関心が薄い場合

褥瘡は治癒までのケアが大変ですが、ご家族のみならず患者さんご本人ですらも関心が薄い方が意外にも多いです。

この説明には看護師が苦慮する場合も多く、アセスメントに使う写真などを見せながらこのまま放っておくとどうなるか説明に工夫します。

ご家族に協力してもらうことは、からだ全体の除圧や食事から摂れる栄養補給などを意識づけてもらうことです。

褥瘡の改善ができた場合には、改めて写真を見ながら一緒に取り組んでいる様子を共有しましょう。

 

3、褥瘡が排泄物で汚染荒れる場合

仙骨部や尾骨部は特に排泄物で汚染されやすい箇所です。

このような場合、褥瘡のガーゼ全体をフィルムで覆うと汚染は防げますが、そうすると壊死組織や炎症徴候には悪影響が出るので全体を覆うのは避けるようにしましょう。

 

ではどうすれば良いかというと、下側だけをフィルムテープで固定し、上側は開放しながら別の医療用テープで固定します。(図の右側)

 

また、褥瘡部分に尿取りパッドを横向きに当てて、排泄物を吸収するパッドの内側に入れておくことで、排泄物の侵入を防ぐ事ができます。

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4、医師やご家族に伝えてほしい場合

新たに褥瘡を発見した場合はまずお医者さんに報告し、薬剤の処方や投薬が必要かの相談をします。

また使用した薬剤によってどのように変化したかは、継続的なアセスメントを行い随時報告します。

 

また、普段から患者さんと接しているご家族には、褥瘡を発見した時にはすぐに看護師に報告してもらうように伝えておきましょう。

褥瘡に対しての関心が薄い場合もあるので、日頃から何でも相談してもらえるような関係づくりが重要です。

 

まとめ

今回は訪問看護の基本的な褥瘡ケアの方法とアセスメントについて解説しました。

かなり長い内容になりましたが、褥瘡ケアにおいて重要なポイントを絞って解説してあるので、お仕事に活かしていただければ幸いです。

 

アセスメントシートのフォーマットは、日本語と英語の両方を無料でダウンロードできるように工夫していますので、こちらもぜひ活用してください。

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