訪問看護師のまおつんです。
訪問看護の利用者は、高齢者や長期間療養をしている方が多く、皮膚が弱くなっていることから皮膚損傷のリスクが高いといわれています。
その一方で患者さんへの訪問時間は限られているため、異常の早期発見や予防が重要になります。
今回は、訪問看護における起こりやすい皮膚障害やケアの方法についてポイントを解説していきます。
このブログでは訪問看護のリアルな仕事について情報を発信しています。もし興味があれば関連記事もご覧ください。
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創傷ケアで必ずおさえて欲しいポイント
創傷ケアを実践する前に必ず知っておいて欲しい基本的なポイントを紹介します。
1、寝たきりの期間が長い患者さんに対しては、訪問時に必ず全身の皮膚を観察する
2、皮膚の手入れの基本は「洗浄・保湿・保護」である
3、皮膚の状態のアセスメントは『共通用語』を使用する
4、外用薬やスキンケア用品は用法用量を守る
寝たきりの期間が長い患者さんに対しては、訪問時に必ず全身の皮膚を観察する
ベッドで寝たきりの時間が長い人や、もともと皮膚損傷のリスクが高い人に対しては、訪問時に全身の皮膚をくまなく観察しましょう。
訪問看護師が訪問して患者さんをケアできる時間は限られているので、できれば訪問のたびに全身の皮膚の状態を観察することが望ましいです。
もし、創傷や皮膚疾患が見つかった時には遠慮なく掛かりつけの医者に相談し診てもらうようにしましょう。
医師に報告して判断してもらうべき皮膚疾患は以下のようなケースです。
壊死性筋膜炎がある場合は、ただちに治療が必要になるため、医師に報告し指示に従い必要であれば緊急搬送を手配しましょう。
皮膚の手入れの基本は「洗浄・保湿・保護」である
皮膚の手入れの基本としては「洗浄・保湿・保護」を実践することが重要です。
洗浄は、皮膚からの刺激物、異物、感染源などを取り除く基本的なケアです。
皮膚にとって有害な物質を取り除く事で創傷の予防に効果を発揮します。
保湿は、皮膚にとって必要な水分を適切に保ちます。
水分を保つ事でドライスキンを防ぐ目的があります。
保護は、皮膚を洗浄したあとに刺激物、異物、感染源などを寄せ付けないようにするためのケアです。
皮膚の保護をする事で、創傷や皮膚障害を予防することができます。
皮膚の状態のアセスメントは『共通用語』を使用する
皮膚の状態をアセスメントする時には、医者や他職種と同じ認識で状態を共有できるように『共通用語』を使用しましょう。
皮膚の状態をまとめたものが以下の表です。
また、上の表を使って皮膚の状態を確認すると同時に、数や形状など以下の項目についても確認します。
・数:単発か多発発生しているかどうか
・大きさ:「○○cm」など、できるだけ数値化
・形状:円形、楕円形、不正形、線状、環状など
・隆起の状態:扁平、ドーム状、半休体、有茎状、尖圭状、疣状など
外用薬やスキンケア用品は用法用量を守る
これは当たり前の事ですが、外用薬やスキンケア用品は用法用量を守ることを徹底してください。
今はスキンケア用品などは薬局などで気軽に購入できるので、患者さん本人やご家族が購入して使用するケースも多くあります。
購入して使用している分には看護師がとやかく言う必要はありませんが、どんな薬をどれだけ使用しているかは把握しておくようにしましょう。
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創傷ケアの具体的なコツ
1、洗浄時には擦らずに汚れを浮かせるイメージで行う
2、洗浄は1日1回が限度とする
3、洗浄後10~15分以内に保湿剤を塗布する
4、皮膚の状態に合わせて保湿剤を選ぶ
5、保護剤は汚染しやすい部位に使用する
6、創傷ケアの方法を他職種と統一する
洗浄時には擦らずに汚れを浮かせるイメージで行う
洗浄剤は通常、石鹸やボディソープなど市販のものを使って行う事が一般的です。
どの洗浄剤を使うにしても、汚れを落とすには洗浄剤を泡立てて汚れを浮かせて使用するのが効果的です。
汚れを落とすためにゴシゴシと擦ってしまう気持ちは分かりますが、擦らずに泡立てるということを意識しましょう。
泡のまま使用できる便利な洗浄剤もありますが、固形石鹸や液体ソープなどしかない場合は、袋などに入れて十分に泡立ててから使用すると良いでしょう。
洗浄剤を自分の手に適量だけ取って、手で泡立ててから使用する方法も有効です。
洗浄は1日1回が限度とする
創傷ケアにおいては、洗浄が基本的なケアのひとつですが、洗浄のやりすぎには注意が必要です。
過剰に洗浄をしてしまうと、皮膚本来が持っているバリア機能を低下させるリスクがあるので、洗浄剤を使用した洗浄は1日1回までとしましょう。
洗浄後に部分的に汚れがどうしても付着してしまった場合は、アルコールティッシュなどでその箇所だけをふき取るなど方法が良いでしょう。
洗い流しが不要な洗浄剤などもあるので、これらの洗浄剤を使用するのもおすすめです。
洗浄後10~15分以内に保湿剤を塗布する
洗浄した後、10~15分以内に保湿剤で皮膚を保湿することになりますが、1日1~2回程度まで保湿剤を使用することができます。
日々のケアにはご家族の協力を得る必要があるので、使用方法や使用頻度を伝えておくようにしましょう。
保湿剤を皮膚に塗布する時のコツとしては、掌で温めてから使用し、皮溝に沿って塗布するようにします。
基本的には軟膏を使用する時と同じで大丈夫です。
軟膏などの外用薬については関連記事でも詳しく解説しています。
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皮膚の状態に合わせて保湿剤を選ぶ
保湿剤については様々なものが売られていますが、以下の2つ効果によって分類できます。
モイスチャライザー効果:保湿成分を補う効果
エモリエント効果:被膜により水分の蒸散を防ぐ効果
例えば、訪問看護で頻繁に使用するワセリンですが、エモリエント効果はあってもモイスチャライザー効果はないという保湿剤です。
このように皮膚に合った保湿剤を選ぶ必要があることを覚えておきましょう。
もちろん、処方された保湿剤を使うのがベストですが、市販されている保湿剤でも代用できます。
そのような時には皮膚に合わせたものを選ぶと良いでしょう。
保護剤は汚染しやすい部位に使用する
排泄物や体液などで汚れやすい部分には保護剤を活用することがおすすめです。
撥水効果のある保護剤を使用することで、被膜を作り敏感な皮膚を守ってくれます。
一般的なクリームタイプのもの以外に、スプレータイプやテープタイプもものも市販されています。
創傷ケアの方法を他職種と統一する
訪問看護を利用する患者さんは、訪問看護だけでなく訪問介護やデイサービスを利用している方も多くいらっしゃいます。
そのため、他職種の方とは創傷ケアの方法を統一しておく必要があります。
他職種の方にもご協力いただくためにも、依頼書や連絡ノートに記入しておくようにしましょう。
その際には、薬剤をいつどこにどのように使用すべきかを細かく分かるようにまとめておくと感謝されます。
創傷ケアでの「こんな時どうする?」
・ドライスキンになっている場合
・浸軟の予防とケアをしたい場合
・スキンテアの予防とケアをしたい場合
・MDRPUの予防とケアをしたい場合
ドライスキンになっている場合
ドライスキンの処置においても「洗浄・保湿・保護」と基本的な考え方は同じです。
注意するべき点としては、室内の湿度を適切に保つ事です。
特に、冬場は空気が乾燥することでドライスキンの回復も遅くなるので、加湿器などを使って部屋の湿度を一定に保てるようにしましょう。
また、洗浄する時に熱い湯を使わない事や、過剰に擦ったりしないようにすることもドライスキンの予防には大事です。
浸軟の予防とケアをしたい場合
浸軟とは、角質が水分を大量に吸収して白色に膨潤した状態をいいますが、からだの高温多湿な部分に発生しやすい皮膚疾患です。
特に、おむつ内の皮膚や足趾間、脇の下、陰部などが挙げられます。
この状態になると、皮膚同時の接触を出来るだけ避けた方が良いので、創傷ケアは念入りに行うのはもちろんのこと、皮膚の間に通気性の良い綿などを挟むと良いです。
逆に、浸軟の箇所にワセリンなどの保湿剤を使用すると逆効果になる場合があるので使用を控えましょう。
スキンテアの予防とケアをしたい場合
スキンテア(Skin Tear)は、真皮深層まで皮膚が裂けている損傷状態のことをいいます。
これは、皮膚の摩擦やズレによって起こるので、予防するためには保湿を中心に日ごろからのケアが重要です。
既にスキンテアがみられる場合は、止血、洗浄をしつつ、皮弁を元の位置に戻し創傷被覆材などで保護するのが一般的です。
被覆材を貼る時には、皮弁の向きを記載しておくなどの工夫をしましょう。
こうする事で、創傷被覆材を剥がす時に皮弁を一緒に剥がしてしまうことがなくなります。
MDRPUの予防とケアをしたい場合
主な皮膚障害と処置方法
主な皮膚障害と処置の方法について紹介します。
この章を書くために『医療法人財団健和会 訪問看護アイデアノート』という書籍を参考にさせていただきました。
まとめ
今回は創傷ケアの具体的なコツなどを解説しました。
創傷ケアのポイントは「洗浄・保湿・保護」という話をしました。
訪問看護は、その場の臨機応変な対応が求められる場面も多いのでなかなか大変な仕事です。
その分、ひとり一人の患者さんと向き合ってケアができる事がとても魅力的でもあります。
訪問看護に興味があれば、ぜひ関連記事もご覧ください。
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