訪問看護師のまおつんです。
内服薬管理とは、患者さんが処方された薬を正しい用法用量で飲んでいるかを看護師が管理することです。
訪問看護の現場では、内服薬の管理は基本中の基本でし依頼をされる頻度も非常に多いです。
今回は内服薬管理についてしっかり理解して実践できる方法について解説します。
このブログでは訪問看護のリアルな仕事について情報を発信しています。もし興味があれば関連記事もご覧ください。
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内服薬の管理で必ずおさえて欲しいポイント
内服薬管理は比較的な簡単な仕事だと思われがちですが、しっかり管理しないと誤った用法用量によって重大なミスにもつながりかねません。
そのため、服薬管理を実施する訪問看護師は必ずおさえておいて欲しいポイントがあります。
1、薬を飲む目的や理由をしっかり理解してもらう
2、内服薬管理は看護師ではなく『患者さんのため』と心得る
3、多職種との情報共有は確実に行う
薬を飲む目的や理由をしっかり理解してもらう
内服薬管理において重要なことは「確実に薬を飲む」という事です。
病院から処方された薬には、それぞれの目的や効果があります。
服薬管理の基本は、薬を飲む目的を正しく理解してもらった上で飲むということです。
薬を飲んでもらうためには、この目的と効果については医療従事者である看護師(場合によっては医者や薬剤師)が患者さんにしっかり説明して理解してもらう必要があります。
上の図では、薬の効果について説明しています。
悪い例:「このお薬は尿をたくさん出すお薬です。」
良い例:「このお薬は尿がたくさん出て、むくみも減って心臓の負担が減るお薬です。」
悪い例では、尿をたくさん出す薬であることは説明していますが、これだけだと少し物足りません。
なぜなら、患者さんは「尿がたくさん出る」ことは大事なことだと理解はしていても、体にどのような効果をもたらすかまでは具体的に説明されていないためです。
その一方で、良い例では患者さんの体にとってどんなメリットがある薬なのかを具体的に説明しています。
ポイントは、患者さんが感じている体調不良や症状がどのように改善するのかを分かりやすく説明してあげることです。
ただし、ここで注意点して欲しいことは、薬の効果については過大に言い過ぎないようにする必要があります。
×「絶対に効きますよ」
×「病気が治りますよ」
これらの言葉は『薬機法』の違反になる可能性があるので使わないようにしましょう。
看護師はあくまでも薬の効果を説明するだけにしておくほうが無難です。
内服薬管理は看護師ではなく『患者さんのため』と心得る
薬を飲むことは、なりよりも『患者さんのため』ということを理解しなければなりません。
「正しく服薬管理をして患者さんに薬を飲んでもらうことが看護師の仕事だ」
と言う人もいると思いますが、それは看護師の都合であって患者さんを想ってのことでありません。
「この薬には○○という成分が入っています。」
と患者さんに伝えたところで、その薬を飲むことのメリットを患者さんが理解できていなければ意味がありません。
まずはしっかりと薬の効果を説明したり、薬を飲めるような環境を整えていく事が大切になります。
訪問看護師は患者さんの生活を支えるのが仕事ですので、患者さんに無理を強いて過度なおせっかいにならないように細心の注意しましょう。
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多職種との情報共有は確実に行う
訪問看護を利用する患者さんの中には、かかりつけの病院が複数ある場合があります。
こんな場合は、いわゆる『多剤併用(ポリファーマシー)』になっていることがあるので、どんな薬をどれだけ飲んでいるかを多職種とも共有しておく必要があります。
ポリファーマシーは、「Poly(多数)」「Pharmacy(薬局)」を組み合わせた言葉で、多くの薬という意味があります。
多くの薬を服用することにより副作用などを起こす可能性がありますが、 必ずしもポリファーマシーが悪いことでもありません。
いろいろな病院にかかっている患者さんの場合は、お医者さんやケアマネージャーと相談しながら服薬管理していくようにします。
看護師の仕事は、処方された薬を正しく飲んでもらうために工夫をする事だと理解しましょう。
服薬管理は他職種との連携が大事
服薬管理については、担当する訪問看護師を中心にお医者さんやご家族などの協力と連携が必要不可欠です。
他職種の方とは日頃から関係性を築いておき、必要な情報をいつでも共有できるようにしましょう。
どのような場合に相談や連携が必要になるのか、いくつかのパターンに分けて解説していきます。
お医者さんに相談するパターン
お医者さんに対しては、患者さんがどのくらい薬を正しく飲めているか常に共有するようにしておきましょう。
薬が正しく飲めていない場合は、お医者さんにアドバイスを求めながら飲む回数やタイミングを調整するようにします。
また、ポリファーマシーなどによって副作用が出た場合も早めに相談するようにしましょう。
お医者さんよりも訪問看護師であるあなたの方が患者さんの状況を細かく把握していることがほとんどですので、お医者さんは薬を飲んでいることを前提として処方することがほとんどです。
情報が行き違いになると、誤った処方をしてしまう場合があるので、情報共有は正しく行いましょう。
ご家族にお願いするパターン
服薬管理においては、ご家族の理解と協力が必要なケースがかなりあります。
患者さんによっては食事をすることが困難、または、食事をしたくないということが理由で薬を飲んでいない場合もあります。
そんな時にはご家族に対して、お菓子や飲み物を飲んでからでも良いので、胃の中を空にしないようにしてから薬を飲むように伝えておきましょう。
それでも飲めない場合は、患者さんの趣向や行動パターンに合わせてご家族と相談しながら考えていくようにします。
薬を飲む時間やタイミングを少し変えるだけで飲めるようになったケースもあります。
看護師がご家族にお薬の重要性を説明し、ご家族から患者さんを説得することでうまくいったケースもあります。
他職種の方へお伝えするパターン
ヘルパーさんやケアマネージャーなどにも服薬状態について連携することが必要です。
「いつ薬を飲んだ」
「今日は何を飲んで何を飲んでいない」
「○月○日は飲んだと思ったら吐き出してしまった」
などの情報は、特にいろいろな病院にかかっている患者さんの場合には必ず共有しておく事が必要です。
薬の管理や飲んだかどうかの確認方法などはあらかじめ担当者同士で決めておき、誰が見ても同じような解釈になるようにしなければなりません。
内服薬管理を行うためのコツ
・薬は『必須』か『推奨』かをはっきりさせておく
・飲めない場合はじっくりと理由を聴く
・「ちゃんと飲んでますよ」は半信半疑で聞く
・薬のセットには患者さんと協力しながら行う
薬は『必須』か『推奨』かをはっきりさせておく
たくさんの薬を処方されている場合、
「本当に飲まなければならない薬はどれか」
「最悪、飲まなくても大丈夫な薬はどれか」
ということをしっかり確認しておくのがベターです。
処方されるからには全て必要な薬であることには違いないのですが、『必須』なのか『推奨』なのかは把握しておくようにしましょう。
必ず飲むように言われている薬については、ヘルパーやデイサービスの連絡帳に書いて伝えておくようにすると良いです。
飲めない場合はじっくりと理由を聴く
訪問看護の現場では、「薬が飲めない」とご家族から相談をされる場合があります。
このような場合に確認しなければならないのは、「飲みたくない」のか「理由があって飲めない」のか理由をはっきりさせておくことです。
『ミクスOnline』の記事によると、患者さんが薬を飲まなかった理由として一番多いのが「忘れていた」という事のようです。
この部分については、看護師がしっかりと服薬管理をすることによって改善できる箇所だといえます。
いずれにしても、「飲めない」または「飲みたくない」のどちらに該当するのかを患者さんの話をじっくり聞いてみましょう。
雑談を交えながら飲めない理由をさりげなく聞いてみると「実は○○だから飲めない」などと意外な原因が判明する場合もあります。
間違っても頭ごなしに「飲まないとダメですよ!」と叱ったりだけはしないようにしてください。
「ちゃんと飲んでますよ」は半信半疑で聞く
患者さんやご家族からの「薬はちゃんと飲めていますよ」という言葉には注意が必要です。
飲んだと言っていたとしても看護師に叱られたくないために、実は飲まずに捨てたり隠しているケースがあります。
このような場合には処方された薬の残数の確認するだけでは把握しきれません。
バレバレな嘘をついていることが分かっても指摘はせずにご家族に相談して対処法を一緒に考えましょう。
薬のセットには患者さんと協力しながら行う
服薬管理の「あるある」
処方されたお薬を患者さんが正しく飲んでくれれば何も問題はありませんが、実際の現場ではそういう患者さんばかりではありません。
服役管理の「あるある」を紹介して、その対処法についても解説していきます。
残薬が大量に出てくる
訪問看護師がはじめて患者さんのもとに訪問した時に、残薬が大量に出てくるというケースは実は珍しくありません。
処方された薬がテーブルの上に放置されていたり、ゴミ箱にそのまま捨てられているケースもあります。
これは特に複数の薬を処方されている患者さんにありがちで、この場合は訪問看護師の服薬管理の能力が問われるケースです。
まずは、服薬カレンダーを使用しているかどうかを確認して、使用していない場合はまずはカレンダーを使用して管理するようにしましょう。
服薬カレンダーを使っているのにも関わらず、薬が飲めていない場合は別の管理方法を試すようにします。
例えば、今までは1か月ごとに薬を管理していたのを、1週間ごとにしてみるなどです。
時には日付や曜日で管理するのではなく、好きなテレビ番組などの写真や絵を使って服薬カレンダーにしている場合もあります。
処方された薬を見せてくれない
患者さんは処方された薬を見せてくれない場合があります。
この理由は色々ありますが、薬を見せることで看護師に管理されることを嫌う方もいるようです。
一部でも薬を隠している様子がある場合は、無理に見せるように指摘するのではなく、
「見せてくれてありがとうございます。」
「私は○○さんの事を叱ったりしないから大丈夫ですよ。」
などと安心させてあげる気遣いも大切です。
薬を飲み込めていない
「薬はちゃんと飲めています。」と言っている患者さんでも、口に入れた後に吐き出しているケースもあります。
しっかり飲み込めているかまでを確認出来れば良いですが、薬を飲むところをじっと見られるとプレッシャーに感じる患者さんもいます
「わたしは○○をしているので、その間に飲んでください。」
などと言って別の作業をしながらスキを見せて、さりげなく飲み込めているかどうかを確認しましょう。
まとめ
今回は訪問看護の服薬管理のコツなどに関して解説しました。
看護師をやっていると正しい用量用法で薬を飲むことは意外と難しいことだと気付くと思います。
調査から分かるように多くの患者さんは薬を飲むことを単に忘れている場合が多いので、訪問看護師のウデ次第ではいかに習慣化できるかが問われます。
今回、紹介した内容を理解し、ぜひ実践してみてください。
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