訪問看護師のまおつんです。
私は仕事柄、いろんな医療系YouTuber方の動画を拝見して情報を集める事も多いです。
そんななか、今回は『医療者×患者 2つの視点から MiTuiちゃんねる』さんが投稿されていた「訪問看護経営者の本音」という動画の内容がとても面白かったので、その内容を紹介しながら私なりの補足をしていきたいと思います。
この動画は、MiTuiちゃんねるの運営者が訪問看護ステーション「エール」の平田社長へインタビューをする形で進行しています。
このインタビューの内容は訪問看護師全員に知っておいてほしい内容だったので、今回取り上げようと思いました。
このブログでは訪問看護のリアルな仕事について情報を発信しています。もし興味があれば関連記事もご覧ください。
訪問看護師のまおつんです。相談者わたしは看護学生ですが、訪問看護は新卒で入職して働くことは出来ますか?ネットでは最初は病棟勤務で慣れておいた方が良いという意見もありました。わたしはこのブログで訪問看護の魅力を[…]
訪問看護ステーション『エール』の平田社長へのインタビュー
動画運営者の三井さんが、訪問看護ステーション「エール」の社長へインタビューした内容を一つずつ紹介していきます。
看護師はプロ意識を持って!
平田社長は「ロジカルに考えられる看護師さんが現場でもっと必要だ」という話をしていました。
この時点で「エビデンス」と「ロジカル」という2つの横文字が出てきましたが、それぞれの言葉には以下の意味があります。
ロジカル…理論的に、合理的にという意味。
平田社長がここで言いたいのは、看護師は専門職なので患者さんを観察したり声を聴いたりしながら、医学的な側面から物事を正確に判断する事が求められるという事です。
さらにその考えに至った裏付けとしてのエビデンスを持つという事が重要だと言っています。
看護師は医療のプロとしてエビデンスの重要性をもっと自覚して欲しいという事ですね。
これが出来ないのであれば、ボランティアやアルバイトで十分という厳しい事も言っておられました。
訪問看護を行う上で意識していること
平田社長が訪問看護を目指した時から今でも意識している事は「地域で一番身近な医療従事者」という事だそうです。
訪問看護師が果たすべきミッションは、患者さんが自分の家で快適に暮らすための生活を支える事だと言っています。
訪問看護ステーション「エール」は、0歳から100歳までの幅広い年齢層の方に利用してもらっているそうです。
このような環境下で平田社長が大事にしている事は、病院と同じように「患者さんの命を守る」という看護師として当たり前の事もそうですが、その上で毎日を健康的に何事も無く過ごして欲しいという想いです。
また、患者さんにとっての在宅ケアは歯磨きと一緒という話をされています。
これは、利用者さんにとっての在宅ケアは、私たちの朝の歯磨きと一緒で、出来る事が当たり前になっている事を目指さなければならないという強いメッセージを残しておられました。
患者さん一人ひとりに合わせた提案を
患者さんやご家族にに求める知識レベルについて
訪問看護ステーション「エール」においては、先ほど解説したように幼児や小児の場合もあるので、患者さんや利用者さんに合わせてケアをしていくという方針を取っています。
例えば患者さんによっては「37.5℃の熱が出たらすぐに電話してください」という対応をしている場合もあれば、別の患者さんへは「37.5℃の熱が出たらこの薬を服用してください。それでも熱が下がらなければ電話してください」という対応をする事もあるようで、患者さん一人ひとりに合わせた対応をしているとの事です。
患者さんの知識レベルに合わせた対応や提案をする事が重要だということです。
在宅移行支援は、病院と在宅の「ズレ」を無くす
在宅移行支援では、病院を退院して在宅医療に切り替える患者さんに対しては、病院でやっている事と訪問看護でやる事の「ズレ」を無くすことを心がけているようです。
病院ではこう教えてもらったけど、訪問看護に切り替えてからは違う方法を教えてもらったという事がないように気を付けているという事です。
病院の言う事と訪問看護師が言う事に違いがあると、患者さんが混乱してしまって信用されなくなる可能性があると言っています。
患者さんにしてみれば特に病院にいる時が一番大変な時なので、早く退院したい思いで看護師やお医者さんに色々と質問したりして知識をつけますが、そこで知った事が絶対だと思っている方が多いようです。
この状況で訪問看護を利用して、その看護師から「それは違いますよ」と言われたら不審に思うのが普通なので、この点について十分注意しているとの事でした。
このため、病院の看護師が患者さんへどのようなアドバイスをしたのかを把握して事が重要です。
「出来ません」を「○○なら出来ます」に変えていきたい
現在、病院で入院している患者さんは出来れば家に帰って在宅で医療を受けたいと思っている人は多いはずと平田社長は言っています。
私もこの事は日頃から思っている事で、実際に患者さんからも病院よりも住み慣れた家が良いと言っていただく人は多いし、在宅で医療が提供できるのが訪問看護の強みだと思っています。
平田社長はこの事についてもインタビュー内で言及しており、患者さんが本当は家に帰りたいと思っていても、看護師やお医者さんが「この人は○○だから無理でしょ」などと決めつけてしまうという例があるようです。
医療者がこのように決めつけてしまう事で、患者さんやご家族の意向が尊重されないという現状が嫌だと言っておられます。
確かに在宅に移行することによる課題は多く「誰が介護をするのか」「透析の送り迎えはどうするのか」などの現実を見ると、在宅に移行するのが難しい患者さんも多いのは事実です。
しかし、「無理です」と頭ごなしに出来ない理由を言うのではなく、「これだったら出来ます」「こういう方法はどうですか」のような提案をしていきたいと述べておられました。
私もいち医療従事者として、どうやったら出来るかを患者さんやご家族と一緒に考えていければ良いなと思いました。
簡単そうで難しいですが、看護師には必要な視点ですよね。
考える事をあきらめないで
脊髄損傷の患者さんは年間で5,000人くらい発生しているとされていますが、看護師の中には一度も脊髄損傷の患者さんを受け持たずに看護師人生を終える人もいます。
そんな時に「私は知らないから…」「私は経験がないから…」と言って諦めてしまうのではなく、一緒に考える事を諦めないで欲しいと動画運営者の三井さんは言っています。
看護師であれば誰しも苦手な分野や知識の及ばない点がありますが、このような問題に直面したときに看護師と一緒に考えていきたいというお話をされていました。
3人の看護師で誰を評価するべきか
平田社長が訪問看護ステーション「エール」を立ち上げた時の想いについても語られていました。
立ち上げ当初は「自分のしたい看護を!」という意思で始めたそうですが、経営をしていくうちに少しずつ考え方が変わり、現在では事業をより拡大していく事で1人でも多くの利用者さんにサービスを届けたいという想いを持っているようです。
立ち上げた当初はいち看護師としてがむしゃらに働いていたのが、今では経営者として別の角度から看護を見つめるようになり、違う人格になっているという事を言っておられました。
また、経営者だからそこ見える視点としては、少しでも患者さんに手厚いケアをしてありがとうと言われる事を目指すだけでは事業を続けていく事は難しいとの事です。
これには誤解を生むような表現があるかもしれませんが、患者さんから感謝される事がダメと言っているわけでは決してありません。
平田社長はこのことについて、3人の看護師を例に挙げて語っていました。
1、他の看護師がやってくれない、いつもプラスアルファをやってくれる看護師
2、決められた事をきっちりやってくれる看護師
3、手際は良いけど、抜けるところがある看護師
この3人の看護師の中で、患者さんから一番良い評判をもらえるのは1人目の看護師です。
実際に私が患者さんならば1人目のような看護師さんに診てもらいたいと思います。
しかし、経営者という立場で見ると、決められた事をきっちりやってくれる2人目の看護師を一番評価しなければならないという思いがあるようです。
たしかに1人目の看護師のようにプラスアルファのケアをして患者さんから評価されるのは良い事なのですが、地域社会の中でひとりでも多くの患者さんに喜んでもらうには、ある程度サービスのレベルを線引きして、その人に最低限必要な事を必要な分だけ提供することが大事という話をしていました。
非常にシビアな視点ではあるものの、経営者としてはこういった考え方も重要なんだと気付かされました。
じゃあプラスアルファは全くやらなくても良いのかというと、平田社長は当然そうは考えていなくて、必要なタイミングを見定める事や訪問看護で本当にそれが必要なのかという事をよく考えるべきとおっしゃっていました。
医療サービスの基本は「自立支援」
平田社長は「医療サービスの基本は自立支援です」と言っておられました。
私たち看護師は、病気を抱えている方や障害を持っている方を見ると、ついついサポートをしてあげたくなるものですが、その気持ちからくるサービスが過介助や過保護になっている場合があるようです。
患者さん本人が本当は出来る事に対しても、看護師が代わりにやってしまう事で「出来るのに出来ない」という状況を作ってはならないと言っています。
利用者さんによっては「看護師がやれる事は全部やって欲しい」という要望を言ってくる患者さんが一定数いるようですが、「やり過ぎない」という視点を大事にしているとのことでした。
この視点を持つことによって、患者さんの自立支援や尊厳の維持に繋がるという事です。
私たちは社会資源の一部
平田社長は訪問看護ステーションの経営者として「私たちは社会資源の一部なんだ」という話をされていました。
訪問看護ステーション「エール」は岡山県岡山市にあるステーションですが、あくまでも私たちは資源の一部として地域で生活している人に公平に使えるようにしたいという想いを語っていました。
病院ではある患者さんの緊急時にはその患者さんのために多くの看護師がケアにあたる事もあれば、またある時には別の患者さんの緊急時に多くの看護師がケアをする事もあります。
地域密着型の訪問看護においてもその視点は重要で、誰かが困った時にはその困ったところに駆けつける事で誰もが公平にサービスを受けられるようにして、その考えも利用者さんに誠意をもって伝えていきたいと平田社長は言っていました。
また、これこそが平田社長の考える「地域共生社会」や「地域包括ケアシステム」だと最後に締めくくっていました。
まとめ
今回は、「【本音】看護師必見!!在宅医療の本音を訪問看護経営者に聞いてみた!」という動画の中で訪問看護ステーション「エール」の平田社長のインタビューの内容を解説していきました。
私は「MiTuiちゃんねる」の視聴者として、動画を通じて平田社長のインタビューを聞いただけですが、現場で働く訪問看護師はもちろん、看護師を目指している学生にとっても勉強になるお話でしたし、訪問看護ステーションの経営者の話を聞ける機会は大変貴重です。
この動画が気になる方は以下のリンクを覗いてみてください。
【本音】看護師必見!!在宅医療の本音を訪問看護経営者に聞いてみた!
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訪問看護師のまおつんです。相談者現在、病棟で勤務している看護師です。訪問看護に入職したいのですが、おススメのサイトはどこですか?今回は訪問看護に転職したい人に向けて、おススメの転職サイトを10社について徹底比[…]