訪問看護とDX「デジタル・トランスフォーメーション」のふか~い関係

 

訪問看護師のまおつんです。

相談者
最近、DX「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉を良く聞きます。これって何ですか?

DXとは「デジタル・トランスフォーメーション」の略語ですが、これだけ聞いても何のことかよくわかりません。

 

看護師はそもそも横文字が苦手ですし、正直新しいモノについて勉強する機会もほとんどありません。

今回はそんなDXについて私が分かりやすく解説し、私たちの仕事にどのように影響するのかを考えていきます。

DX「デジタル・トランスフォーメーション」とは

DXは「Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)」の略語です。

なぜ、Transformationが「X」なのかというと、Transという言葉を英語では「X」と略して呼ぶことが多いためです。

まおつん
「デジタル・トランスフォーメーション」って文字が長いので、今回は「DX」と略して説明しますね。

 

DXの歴史は意外にも古く、2004年にスウェーデンの大学教授が提唱した事からはじまっています。

デジタル技術を人々の生活に浸透させて、今よりも便利な世の中に変革していくという意味があります。

 

相談者
?????
まだよくイメージが湧きません。具体的にどういう事なんですか?

これを聞いても「DXとか難しい言葉は分からない!」というのが正直なところだと思います。

私もその気持ちはよーく分かります。

 

実はDXはだんだんと私たちの生活の中で身近になってきており、話しかけて自動でAIが返答してくれるスマートスピーカーなどの技術にも徐々に取り入れられています。

最近ではこのように全ての物にデジタルを導入する考え方が浸透してきており、医療業界にも取り組みが進められています。

とはいってもまだまだイメージが湧かないので、今回は具体例を挙げてさらにDXを見てみましょう。

 

DXの成功事例

DXのもっと具体的な内容を知りたいと思いますので、各企業が取り組んでいるDX活動について分かりやすく紹介します。

Amazon(アマゾン)の無人コンビニ「Amazon Go」
Amazon公式サイトから引用

皆さんがネットショッピングで買い物する時は、Amazonか楽天市場などを良く利用すると思います。

AmazonはDXの先駆けとして語られる事も多く、現在はDXを活用したビジネスを展開しています。

最近話題になった「Amazon Go」という無人コンビニ(スーパー)がDXの取り組みとして有名です。

店舗でお買い物する時には、欲しい物を手に取ってレジに行かずにそのまま持ち帰れるという驚きのお店です。

Amazon Goを利用するには、事前にスマートフォンに専用アプリをインストールしてログインしておく必要があり、アカウントに紐づいたクレジットカードなどで自動精算してくれます。

どの人がどんな商品を手に取ったかをカメラや自動読み取り機などで自動判別するようになっており、店舗の外に出るとそのまま自動精算することができます。

これはお客さんの利便性だけではなく、Amazon側にとってもメリットが大きく、常駐する従業員を削減できることなどの大きなアドバンテージがあります。

さらに、どんな客層の人がどんな時間帯にどんな商品を買ったかなどがアカウント情報や行動から分析する事ができて、必要な商品の陳列なども改善にも役立っています。

Uber(ウーバー)の「Uber配車サービス」

日本ではUberと聞くと「Uber Eats(ウーバーイーツ)」のイメージが強いですが、もともとはアメリカで始まったタクシーの配車サービスを展開している会社です。

タクシーといっても運転手は個人という事が通常のタクシーと大きな違いです。

利用者は専用アプリをインストールして登録をすると、どこにタクシーを呼ぶか、どこに行くかを指定する事ができて、タクシーが到着する時間までも分かります。

一方で運転手はというと、同じく専用アプリを登録し、近くにタクシーを利用したい人からの要望があれば、その場所へ自分の車で行き、利用者を目的地まで乗せるだけです。

支払もアプリを通して行われるので、金銭トラブルもありませんし、利用者が運転手を後で評価するシステムになっているので、評価の低い運転手を排除できる仕組みになっています。

 

日本でのUber Eatsも基本的には同じ仕組みを利用しており、食事を配達して欲しい人と配達してお金を稼ぎたい人をマッチングさせることで、サービスの利便性を図っています。

メルカリのフリマアプリ経由の個人間売買

メルカリは東京都港区に本社を置き、フリマアプリを「メルカリ」を運営する会社です。

インターネットで買い物をする人であれば、メルカリを人は知っていると思いますし、私もかなり利用しています。

私も楽天市場やAmazonでも買い物はしますが、ちょっと高いなと思った時にはまずメルカリで中古品や備品を検索して気に入れば購入しています。

匿名同士の人がアプリを通じて不用品などを売買することで「売る人」「買う人」の両方にとって利便性の高いサービスです。

似たようなサービスとして過去から「ヤフオク(Yahooオークション)」がありますが、メルカリはフリーマーケット型に着手しDXを取り入れて改善をしたことでで、誰でも気軽に使いやすく初心者でも参加しやすいサービスに進化しています。

 

NECの空港ターミナルの「顔認証と電子申告ゲート」

羽田空港国際線ではNECの顔認証の技術を応用した電子申告ゲートが採用されており、歩きながらスムーズにゲートを通過する事ができるなどDX化が進んでいます。

国際便では入国する時も出国する時も、税関や入国審査でパスポートや申告書類を提出したりしなければならずバタバタと忙しいものです。

顔認証技術を応用することで、これらの手間を大幅に減少して空港の混雑を避ける事や、人との接触を極力避ける事で新型コロナウイルス蔓延防止にも役立っています。

最近のスマホでも顔認証技術が発達しているため、マスクをしながらロックが解除出来るようになっていますが、この顔認証技術においてはNECは世界でもトップレベルといわれています。

 

このようにDX化は私たちの生活の様々な部分にまで浸透してきており、今後ももっともっと身近になってくる未来が待っています。

まおつん
DX「デジタル・トランスフォーメーション」について少し理解できたでしょうか?

 

医療業界のDX事例

DXについて何となく分かったところで、医療業界ではどのようにDXが進んでいるのかいくつか例を紹介したいと思います。

大塚製薬の「デジタル・メディスン」で服薬管理

大塚製薬がアメリカのプロテウス社と開発した錠剤「エビリファイ・マイサイト」には、患者さんが飲む錠剤の中に砂粒ほどのセンサーが組み込まれていて、それが胃の中に入ると反応して信号を発信します。

その信号を患者さんの体に貼り付けたパッチで検出して服薬の日や時間を自動で記録できるという仕組みです。

お医者さんや看護師はその服薬記録を専用のアプリケーションなどで読み込むことができ、さらに病院ないで共有することが可能となっています。

患者さんの体内に取り込まれたセンサーは消化されずに、体外に排出されるようになっているので人体にも影響もなく、この取り組みは世界で初めて米国食品医薬品局(FDA)から承認も受けています。

 

まおつん
お薬の中にセンサーが入っているなんて驚きですね!

 

メドレーの「電子カルテ」

医療業界では患者さんを中心に色々な人が関わります。

訪問看護ひとつとっても、お医者さん、看護師、介護士、薬剤師、ケアマネージャーなど、多くの医療業界のプロが関わり患者さんを救うことになっています。

しかし、医療業界ではいまだに紙でカルテやお薬手帳が管理されており、さらにそれが各医療機関の間で共有がされていない現状があります。

 

そのためのアプローチとして、メドレー社では電子カルテをはじめとした医療業界のIT化に取り組んでいます。

例えば、予約管理システムのオンライン化が進めば、患者さんが空いている病院を検索し好きな時間に予約をする事ができ、これにより医療機関にかかる負担も軽減できます。

また、患者さんに処方されたお薬がオンライン上で記録・管理されていれば、関係する医療機関がいつでもその情報を共有出来たり、お薬手帳も自動で作られるなどのメリットもあります。

つまり、今までは各医療機関が独自に保存・管理していた患者さんの様々なデータを共有する事で、業務を効率化をしたり出来る事が期待されています。

 

訪問看護の利用している患者さんでも掛かりつけの病院がある人も多いですが、病院でどんな治療をしているのかなどは私たちは知ることが出来ません。

今後はもっと情報の共有化が進むことで、もっと患者さんに適したサービスが提供できるかも知れません。

まおつん
各医療機関の連携がもっと強まる事で、より患者さんのためになると良いですね。

 

日本ホスピスホールディングス社の「ホスピス住宅」

ホスピス住宅というのは、末期がんや難病を持っている患者さん達が集まって暮らす集合住宅で、日本ホスピスホールディングス社が提供しているサービスの名前です。

ヨーロッパでも同様のサービスすでに存在しており、街の中にある大きな家で患者さん達がそこで暮らしており、少数の看護師などで運営されているようです。

 

これは日本でいうところの老人ホームに近い存在ですが、ホスピス住宅にはDXの取り組みとして、各部屋にカメラが設置されています。

患者さんの多くは重篤な病気を持っている方がほとんどなので、患者さん本人やご家族の同意のもとで、部屋の様子を24時間カメラが映像と音声をモニタリングするようになっています。

看護師は部屋までいかなくても患者さんの様子を確認が出来るので、少人数での運営が可能になっています。

また、館内にはWi-Fiが設置されていて、患者さんがナースコールを押すとWi-Fiを経由してスタッフのスマートフォンに連絡がいくようになっています。

このナースコールはスタッフ全員で共有され、手の空いているスタッフがすぐに駆けつける事ができるなど、患者さんのためのDXの取り組みとして進化を続けています。

まおつん
医療業界は人手不足なので、少人数で運営できるのはDXのおかげですね。

 

「DXは私に関係ない」は通用しなくなってきた

今回紹介したようにDXでは私たちの生活や仕事に浸透し、大きな変化をもたらし始めています。

「訪問看護師の私には関係ないでしょ」と思うかも知れませんが、実は医療業界こそDXの取り組みによってもっと業務を効率化し、結果として患者さんのためになる可能性を秘めていると私は感じています。

 

とはいってもDXは難しい言葉だけが先行し、具体的にどのように生活や仕事に影響があるのかが上手く表現できないのはまだまだ課題だと思います。

また、近年は医療技術の発展が凄まじい一方で、私たち看護師は生身の人間が相手なので、いかに技術が進歩しようとも人間の本質的な部分に寄り添う事には変わりません。

 

まおつん
私には関係ないと思わずに、積極的に勉強をしてみてくださいね。

 

このブログでは訪問看護のリアルな仕事について情報を発信しています。もし興味があれば関連記事もご覧ください。