訪問看護師のまおつんです。
訪問看護で患者さんの状態を把握するための基礎的な仕事として、問診・視診・聴診・触診・打診があります。
今回は「聴診」について、現役の訪問看護師である私が詳しく解説していきます。
フィジカルアセスメントを行う上でも聴診は重要な位置づけとなるので、この回で正しいやり方やコツを学びましょう。
訪問看護師のまおつんです。 新人看護師フィジカルアセスメント…って学生の時に聞いた事があるような。 でも詳しくは覚えていません。焦 学生の頃に一生懸命勉強していても、いざ入職して現場に入[…]
聴診を行う時のポイント
聴診は患者さんの様子や変化に気付く重要な仕事です。
聴診は画像検査などがすぐにできない訪問看護では、聴診が患者さんの体の中の状態を知るための重要な手段です。
聴診を行う時に押さえておくべきポイントは以下の通りです。
2、可能な限り素肌で聴く
3、外部の音を遮断してクリアな音を聴く
4、チェストピースは必ず消毒する
聴診器の種類などを把握しておく
聴診器の各部の名称を簡単におさらいしておきましょう。
聴診器の種類は用途などによって種類が豊富にあり、チェストピースの種類で分類すると「オープンベル型」「ダイヤフラム型(膜型)」の2種類があり、チェストピースが片面と両面にあるかの違いで「シングルサイド型」「ダブルサイド型」に分けられます。
さらに耳管とチューブの部分にあるばねの位置によって「内ばね式」「外ばね式」と分かれます。
また、非常に高価ではありますが、「電子聴診器」という高性能な聴診器も存在しています。
訪問看護の私がズバリおすすめしている聴診器は「リットマンのクラシックⅢ」です。
過去のクラシックⅡと比較してダイヤフラムが一体成型されたことや、チューブの径などが改善されて、さらに使いやすく高音質な聴取が可能となっています。
メーカーや用途で選ぶのも良いですが、最近はデザインや色の種類も豊富に揃っているので選ぶのも楽しいですよ。
呼吸音は可能な限り素肌で
聴診器を当てて患者さんの呼吸音を聴く時は、可能な限り素肌で聴くことををおすすめします。
多くの聴診器は薄い服ならば着衣のままでも聴取が出来るようになっていますが、プロであればやはり素肌の上から正確な音を聴きたいものです。
もちろん、患者さんが素肌を出すことに抵抗を示した時には無理強いは出来ませんが、少しでも怪しい音が聞こえた時は事情を理解してもらって聴取するようにしましょう。
外部の音を遮断してクリアな音を聴く
聴診器を使う時には周りの雑音を遮断する必要があるので、テレビを消したり、窓を閉めてもらうようにしましょう。
特に寝たきりの患者さんはテレビを付けっぱなしにしているケースも多く、テレビの音で正しく聴診器の音が聴こえない時があります。
最悪の場合は誤診断にもつながりかねませんので、外部の音は遮断してクリアな音を聴くようにしましょう。
チェストピースは必ず消毒する
聴診器を使用する前と使用した後は、アルコール綿などで必ず消毒しましょう。
聴診器のチェストピースは便器よりも雑菌が多いという話を聞いた事もあります。
看護師であれば基礎的な衛生面で気を付けるべき点は押さえているとは思いますが、最近は特に新型コロナウイルスの影響で注意を払う場面が多くなっています。
患者さんによっては外部の人を家に入れる訪問看護のサービスそのものを敬遠している人もいるので、特に消毒などの基本的な対策は完璧にしておかなければなりません。
訪問看護師のまおつんです。相談者訪問看護師のなかで「この人は仕事がデキる!」と言われる人はどんな事に意識して仕事していますか?このブログを見ている方は少なくとも訪問看護について興味がある方だと思います。訪[…]
異常な呼吸音と特徴
聴診器で患者さんの呼吸音を聴いた時、その音が正常かどうかを判断する必要があります。
異常な音の特徴、その種類、考えられる原因を以下にまとめました。
高調性連続性副雑音(笛声音)
高調性連続性副雑音は、「ピーピー」や「ヒューヒュー」など笛が吹くような音と似ているため「笛声音(てきせいおん)」と呼ばれます。
気管支喘息や肺気腫などを患っているため、気管支の内腔が狭窄している事でこのような音が発生します。
低調性連続性副雑音(いびき音)
低調性連続性副雑音は、「グーグー」などいびきに似た音のことをいいます。
慢性気管支炎などによって気管の狭窄が起こりこのような音が発生します。
細かい断続性副雑音(捻髪音)
細かい断続性副雑音は、「パチパチ」というような髪を捻る時に似ている音から「捻髪音(ねんぱつおん)」と呼ばれます。
肺線維症などによって線維化した肺胞が膨らむことでこのような音が発生します。
粗い断続性副雑音(気泡音)
粗い断続性副雑音は、「ブクブク」「ぼこぼこ」のような水が沸騰している音に似ているため、「気泡音」とも呼ばれます。
肺炎や慢性気管支炎などによって気道内の分泌物の中で気泡が破裂する時にこの音が発生します。
以上のように、これらの4つの異常な呼吸音が確認できた場合、すぐにお医者さんに報告する必要があります。
特にこの異常音が低音から高音に変化した場合は、分泌物などによる気管支の狭窄が強くなっている事が予想されるのですぐに連絡をしましょう。
また、異常な呼吸音が大きく変化し、さらに血圧が極端に低いときは、心拍出量が減少していることが考えられるので、この場合もすぐにお医者さんへ報告しましょう。
さらに、ご家族に対しても、患者さんの普段の呼吸音が「ヒューヒュー」や「ゴロゴロ」と音がしている事に気付いた時は、すぐにステーションに連絡をしてもらうように普段から伝えておくことも重要です。
聴診のコツ
聴診器を使用して呼吸音を聴く時のコツについて解説していきます。
患者さんの負担を減らしたり効果的な聴診を行うために必要な知識なので、現場で実践出来るようにしておいてください。
1、チェストピースを手で温める
2、骨の中心にチェストピースが当たらないようにする
3、腸蠕動音(ちょうぜんどうおん)は一か所で聴取できる
4、声が出てしまう患者さんには…
チェストピースを手で温める
チェストピースは患者さんの体に当てる前に手の平などで温めておきましょう。
また、チェストピースはユニフォームの胸ポケットに常に入れておいて温度が極端に下がらないようにしておくこともおすすめの方法です。
患者さんの負担を出来るだけ軽減させるのが看護師の役目なので、細かな気遣いを忘れないようにしましょう。
肋骨にチェストピースの中心が当たらないようにする
ちなみに先ほど紹介した「リットマン クラシックⅢ」は小児用のダイヤフラムも装着されているので、これ一つあれば訪問看護のほとんどの場面に対応できるので非常に便利です。
腸蠕動音(ちょうぜんどうおん)は一か所で聴取できる
腸蠕動音は、腸が収縮する時に聞こえる「ゴロゴロ」や「ポコポコ」といった音ですが、一か所に聴診器をあてるだけで聴取ができます。
この理由は、お腹は肺と違い大きな袋状の構造になっているため、腸蠕動音が伝播するという特徴があるためです。
また、腸蠕動音は偶発的に発生する音なので、呼吸音や心音にように規則的に聴こえる音ではありません。
そのため、たまたま聴診器を当てた場所の音は大きかった、また、別の場所に聴診器を当てたら小さかったなどから音の出ている個所の特定は出来ません。
どこから音がしているのだろうと気になって音源を特定したくもなりますが、腸蠕動音の聴取が一か所を聴取するだけで大丈夫です。
喘鳴(ぜんめい)で声が出てしまう患者さんには…
患者さんに喘鳴(ぜんめい)の症状がある時は、呼吸している時に声が出てしまい聴診器でうまく呼吸音を聴取できない事があります。
この場合は患者さんに口を半開きにして呼吸をしてもらう事で、ある程度の音は消すことができます。
まとめ
今回は聴診について解説しました。
訪問看護では病院のように整った環境でない場合が多いので、使用する聴診器や環境を自分で整えなければいけません。
もちろん、聴診器の使い方の基礎を理解していないと正しい聴診をすることは出来ないので、訪問看護への入職を考えている現役の看護師であれば基礎をしっかり理解し実践できるようにしておきましょう。
看護学生さんであれば学校の実習で聴診を学ぶことはもちろん、聴こえる異常音の種類や特徴などはしっかり学んでおきましょう。
また、聴診器も様々な種類があるので、自分専用のお気に入りの聴診器を買ってみるのもおすすめです。
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