訪問看護師のまおつんです。
また、活動と休息のアセスメントについて教えてください。
今回は訪問看護の現場で使う「ADL」や「IADL」を基礎から解説し、活動・休息のアセスメントについて解説します。
患者さんが日常生活をどのくらい行えているか、休息がきちんととれているかを確認することが「活動・休息のアセスメント」です。
訪問看護においては、最低限知っておかなければいけない知識ですので、基礎をしっかり覚えておきましょう。
合わせて学習してほしいフィジカルアセスメントについては、関連記事で詳しく解説しています。
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「ADL」と「IADL」の区別
「ADL」と「IADL」は、それぞれ「Activities of Daily Living(日常生活動作)」と「Instrumental Activities of Daily Living(手段的日常生活動作)」の頭文字を取った言葉です。
どちらも日常的な生活で必要となる動作ができるかどうかを表すものですが、ADLとIADLではできる活動に違いがあります。
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ADL:Activities of Daily Living(日常生活動作)
ADLは、移動・食事・排泄・入浴など、日常で活きていくための最低限の動作のことをいいます。
この言葉は、看護師以外にヘルパーやケアマネジャーなど医療現場でも非常に良く使われる言葉です。
IADL:Instrumental Activities of Daily Living(手段的日常生活動作)
IADLは、買い物・洗濯・料理・電話などのように、日常的に行う動作の中でもより複雑な行動を共にする動作のことをいいます。
IADLは介護業界ではかなり良く使われる言葉で、これを維持することが豊かな生活を送るために必要です。
体の衰えや病気になることで、段々とIADLが維持できなり、さらに状態が悪化することでADLまでもが維持できなくなります。
このように、人間らしい生活を送るために必要な動作を、その動作のレベルによってADLとIADLと区別しています。
活動と休息のアセスメントとは
冒頭に紹介したように「活動と休息のアセスメント」は、患者さんが適切に日常生活を過ごし、休息を取れているかをアセスメント(評価)するものです。
アセスメントと言うからには、根拠のある考察などが必要で、主観的な判断の情報は出来るだけ排除して評価するなどのコツが必要です。
専門学校や大学ではアセスメントについて相当勉強しているとは思いますが、改めて知っておいてもらいたいのでいくつか例を紹介していきます。
根拠となる情報を書く
アセスメントを書く時には、根拠となる情報が必ず必要です。
良い例○:患者さんは「最近よく眠れない。」と話しており、先日オンコールがあって訪問してみると覚醒していた様子だったので、不安な状態であると考えられる。
悪い例×:患者さんは「最近よく眠れない。」と話しているため、不安な状態であると考えられる。
このように「○○な状態である」と書くからには、「なぜそう考えたか」「どういう事実があるから」などの根拠を正しく書く必要があります。
つまり事実に対しての裏付けが出来ていると、誰が見ても「なるほど」と思うアセスメントが出来ていることになります。
複数の情報を書く
主観的な情報だけではなく。ひとつの事実に対して複数の情報を記載するようにしましょう。
良い例○:服薬管理の説明をしたところ、「分かりました」と言ったあと、自分でも忘れないようにメモを書いていたため、内容は理解できていると考えられる。
悪い例×:服薬管理の説明をしたところ、「分かりました」と言っていたので、内容は理解できていると考えられる。
このパターンは、患者さんが「分かりました」と言っていた事に対して、本当に理解していたかどうかの確認までしています。
患者さんによっては、よく分かっていない状況でも「分かりました」と返答をする人も多いので、アセスメントに限ったことではなく、自分の話が相手に正しく伝わっているかどうかの確認が必要です。
状態の変化の様子を書く
アセスメントを行うときには、現在と過去の比較の情報を書く事も必要です。
良い例○:訪問看護を始めてからは、朝・昼・夕の食事をしっかり摂っているため食習慣は適切だと考えられる。
悪い例×:以前は昼・夕の2回の食事しか摂っていなかったが、訪問看護を始めてからは朝・昼・夕の3食を摂れているため、以前と比較しても食生活は適切になったと考えられる。
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活動と休息のアセスメントで必ず押さえるポイント
活動・休息アセスメントにおいて必ず押さえておいて欲しい内容について解説します。
ポイントは以下の3つです。
2、活動状況と活動能力はイコールではない
3、患者さんの「眠れない」に注意する
これらについて一つずつ解説していきます。
1、日常生活自立度を確認する
訪問看護師は「訪問看護指示書」に従って業務をします。
この時に必ず確認してほしい事は「障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)」と「認知症高齢者の日常生活自立度」です。
※厚生労働省の資料から作成
はじめて訪問する患者さんの場合などは、必ず事前に確認して必要なケアなどの準備が出来るようにしましょう。
2、活動状況と活動能力はイコールではない
患者さんには家の中では活動的に動き回っている人も多くいますが、その患者さんを見て「活動能力が高い」と判断しないようにしましょう。
家族内での役割や自宅の環境なども考慮し、総合的にアセスメントを行う必要があります。
活動状況と活動能力は必ずしもイコールではありません。
3、患者さんの「眠れない」に注意する
休息のアセスメントにおいて、患者さんが「眠れない」と訴えているケースは多くあります。
実際は横になっている時間は長くても、眠れていない場合は睡眠の質に問題がある可能性が高いので、患者さんの活動状況や疲労感などから睡眠の質を下げるような行動が無いかなどを観察しましょう。
活動の量が急に低下しているような場合には、アセスメントをしたうえでお医者さんへ相談する必要があります。
活動と休息のアセスメントのコツ
ここでは活動と休息のアセスメントを行う時の具体的なコツを解説します。
コツは以下のようになります。
1、ADLとIADLをセットで把握する
2、自宅以外での様子を伺う
3、睡眠の質を注意深くアセスメントする
1、ADLとIADLをセットで把握する
患者さんは日常生活の中で様々な活動を行いますが、冒頭に解説したADLとIADLについてどの程度出来ているかを把握しましょう。
例えば食事は自分で出来るけど、洗濯は出来ないという場合にはIADLが低下しているなどとアセスメントを行うヒントになります。
普段から患者さんを見ながら「この行動はADLの○○だ」などと、意識して観察すると良いアセスメントが出来るようになります。
2、自宅以外での様子を伺う
訪問看護師は自宅以外での様子についてヘルパーやケアマネジャーなどから聞いておく事も重要です。
看護指示書などに書いてある情報だけが全てではないため、自宅以外の様子を観察するなどの視点を持ってアセスメントを行うようにしましょう。
多職種の人とも密にコミュニケーションをしておく事で、本人は「ひとりでは出かけられない」と言っていても、実は最寄りのコンビニエンスストアに買い物は行っているなどの情報が得られることもあります。
3、睡眠の質を注意深くアセスメントする
こんなときはどうしたら良い?
活動と休息のアセスメントにおいて、「こんな時はどうしたら良い?」と迷う時があります。
以下のように、いくつかケースを紹介しながら詳しく解説していきます。
1、「眠れない」のアセスメントをしたいとき
2、「眠れない」の原因の推定をしたいとき
3、日中の活動が少なく、お昼寝が多いとき
1、「眠れない」のアセスメントをしたいとき
ひとことに「眠れない」といっても、確認するべきことはたくさんあります。
睡眠の質を確認するときには、「何時から何時まで寝ているか」「規則正しく寝ているか」「昼寝はしてないか」「眠りは浅くないか」などをひとつずつ確認していくのが良い方法です。
2、「眠れない」の原因の推定をしたいとき
眠れなくなっている原因を推定したいときは、患者さんの睡眠パターンを把握するようにしましょう。
日中の活動量が少なかったり、睡眠前に利尿作用がある緑茶やコーヒーを飲んでたり、無呼吸症候群になっているなど考えられる原因があります。
また周囲の騒音や照明によっても睡眠の質を低下させている原因になります。
3、日中の活動が少なく、お昼寝が多いとき
日中の活動量が少ない場合や、お昼寝する事が多い場合には、日中の活動量を増やすために運動することを提案するようにしましょう。
また、規則正しく生活するのが夜眠れるかどうかに重要ですので、起きてから日光を浴びるなどの提案をする事もお勧めです。
もちろん患者さんによって出来る事が限られている場合もあるので、デイサービスの利用なども検討してもらうと良いと思います。
まとめ
今回はADLとIADLや、活動と休息のアセスメントについて解説しました。
訪問看護の現場では、アセスメントという観点と看護師としてケアをする仕事の両方の視点から患者さんと向き合っていくので、「あれ、こういう場合はどうしたら良いの?」と悩むことも多いと思います。
ただし、基礎をおさえて患者さんを注意深く観察する事で、患者さんにとって本当に必要なケアであったりアセスメントが出来るようになります。
活動と休息のアセスメントについては、患者さの日常生活に深く関わってくる課題なので実践できるようになっておきましょう。